デビュー戦ながら攻守に奮闘が光った石原

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[4.9 J2第7節 東京V2-3湘南 駒沢]

 湘南育ちの18歳が“夢の舞台”に立った。湘南ベルマーレのルーキーMF石原広教は9日に行われた首位・東京V戦で先発出場してJデビュー。小学3年生で湘南ジュニアに入団。幼い頃から憧れ続けてきたピッチで必死に闘った。

 湘南ベルマーレユースから今季トップ昇格した石原だが、ここまでの出場時間はゼロ。ベンチ入りもない状況だった。それでも前日8日の夜に先発は告げられた。FW山田直輝、DF杉岡大暉とチョウ・キジェ監督に呼ばれて言われたのは、山田がサイドでプレーするよりも中央でプレーするほうが効果的だということ。2列目左へ入ることになった石原へ求められたのは「そこで空いたスペースで走力を活かして、相手の弱点を突いていく」というものだった。

 「このチャンスをつかまないといけない」と思い巡らせ、部屋に戻ると先輩の高山から『LINE』が届いていた。今月1日に右膝前十字靱帯損傷で今季絶望と診断され、チームを離れているキャプテンから送られたのは「本当に頑張れよ」という内容の長文メッセージ。18歳は「薫くん以上のプレーはできないけれど、自分ができる全力のプレーを出していこう」と強く誓って眠りについた。

 そして迎えた東京V戦。試合前のアップ時から雨は強く降り続いていた。視界が晴れないなかでも、はっきりと聴こえてきたのは湘南サポーターの歌うチャント。耳に届いた瞬間を振り返った石原は「めっちゃ気持ちよかったです」と笑う。「小さい頃から聞いていた応援歌を目標にしていた舞台で聞くことができて、“まじでやってやろう”と思いました」。

 試合では3-5-2の2列目左へ入った。決定機へ絡むシーンはなかったものの、対面したWB高木大輔を自由にせず。「高木大輔選手と上下動で対決するのは絶対に負けるなと言われていた」。粘り強い守備で応戦。相手の戻りが遅れたとみるや、果敢に前へ出る姿勢も示した。チームは先制されたが、そこから3発逆転。石原は後半32分に途中交代し、デビュー戦を終えた。

 試合後、「十代の選手を3人、ピッチに立たせたのは今日がおそらく初めて。彼ら3人はこのプレッシャーのかかる試合のなかで勇敢に戦ってくれた」と選手を労ったチョウ監督。石原について「普段は褒めたことがない」と言いつつも、「プレーはまだまだお粗末ですが、今日の気持ちで今日の取り組み方で、今日の向上心でやれば、上手くなるかは分かりませんが、必ずいい選手に成長していくと思う」とエールを送った。

 石原が小学校3年生のときに入団した湘南ベルマーレジュニアは、2011年3月に活動を終了しており、石原とMF齊藤未月はジュニア育ち“最後の世代”。指揮官は「齊藤と石原は我々アカデミー最後の世代で小学生からうちにいる子たち。湘南の選手として、何をしなければいけないのかはわかっている。そういう彼の気持ちを汲みました」と起用の理由も明かした。

 石原本人が「まだまだ」とデビュー戦を振り返れば、指揮官も「お粗末」と表現。しかし一方で「薫(高山)のデビュー戦とそっくり。本当にそっくり」とチョウ監督は目尻を下げる。「薫がやってきたことを、魂を引き継いでやってくれると、それは石原だけでなく、みんなに思っている」。

 小学3年生のときから夢見た舞台にようやく立った。これまでユースからステップアップしていったMF古林将太やMF菊池大介、DF遠藤航の背中を追ってきた。「コバショーさん、大さん、航さんなどはジュニアのときに見ていたので憧れの存在でした」と言うとおりだ。

 プロになり、今後は立場も変わっていく。湘南でボールを追う少年たちに夢を与える存在へ。「まだそういう実感はないんですけど、下の子たちに石原選手みたいになりたいって思われるような選手になりたい」と少し恥ずかしそうに口にした。

「チャンスをつかめたとは感じていない。もっともっとできることはいっぱいありましたし、今日のようなプレーで満足しているような選手では上にはいけない。次の練習からまた上を目指してやっていきたい」。湘南育ちのプライドを胸に、18歳のルーキーは道を切り拓いていく。

(取材・文 片岡涼)