終盤にはCKから谷口にも決定的なチャンスが訪れたがゴールネットを揺らすことはできず。(C) SOCCER DIGEST

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 直近2年間で、川崎は甲府を相手に14ゴールを奪っている。言ってしまえば“お得意様”だった。しかし、そんな相手に対し、川崎が得点の匂いを漂わせることができたのは後半アディショナルタイムの7分間のみだったと言ってもいい。
 
「後半の最後、得点が入るときくらいの迫力を前半から出していかないといけないかなというのは、自分も含めて感じましたけどね」
 中村憲剛は試合後にこう嘆き、鬼木達監督は「思った以上に動きが出なかった」と、停滞したこの日の攻撃を振り返る。
 
 91分に甲府のカウンターを浴び、河本明人に痛恨の先制点を許したものの、その2分後にCKから奈良竜樹が決めて同点とし、勝点をもぎ取ったという点は評価して然るべきだ。ACLもあり、怪我人が絶えない状況を考えると、未だ公式戦で喫した黒星はひとつという事実は、これまでのチームの歴史でもなかなか見られなかった”しぶとさ”が身についている証明でもある。
 
 ただ、内容に目を向けると不安が募るのも正直なところだ。中村が言及した終盤の時間帯を迎えるまでの約90分間は、ほぼ決定的なチャンスを創出できなかった。そして、3バックの中央を担う谷口彰悟も同様の感想を持っており、攻撃の課題を口にした。
 
「怖さがないかな、と思います。ボールは持てていますけど、じりじりと相手に迫っていくような持ち方ではないし、ブロックの外で回している。もっと1人ひとりが崩しに行くべき。出しっぱなしになるシーンが多かったし、出して寄るとか裏を狙うとか、そういう動きが少なかった。後ろから見ていて迫力がなかったかなと思います」
 これは鬼木監督の言葉にも通ずる部分でもある。
 
「ハーフコートで押し込む形というのはうちのサッカーですし、そこはこだわってやっていきたいところ」と谷口が続けて語ったように、相手を敵陣に釘付けにし、じわじわと押し込んでいって生まれた穴を突くのが、川崎本来の攻撃の特長だ。高い技術と戦況を見定める“目”の統一によって成し得るものと言える。しかし、今季の川崎は、その本来の良さを出し切れているようには見えないのだ。
 
 今季、川崎は本来の長所を活かした攻撃でチャンスを作り出す回数が少ない。スピード感を持った縦への速い攻撃やサイドからの崩しなど攻撃の幅を広げていこうとトライしているなかで、やや意思統一が測りきれていないという現状があるのだ。
 
 この日の同点弾のようにうまくいかないなかでも、セットプレーで仕留められる力が付いてきているのはチームにとってポジティブな要素ではある。しかし、これまで積み重ねてきた、「敵を押し込み、仕留める力」に陰りが見えているのは不安要素だ。
「みんなの考えを共有して、どう崩すのかというところはもっと合わせないといけない」(谷口)
 
 川崎が攻撃面で抱える課題は、決して小さくない。こういった苦しい試合は続く可能性がある。ただ、上述したように“しぶとさ”が身に付いているのも確か。今は我慢をしながら勝点を積み上げていくことに集中するのみだ。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)