昨季限りで現役を引退した元日本女子代表FW永里亜紗乃(中央)【写真:Getty Images】

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昨年現役を引退した永里亜紗乃が語るなでしこリーグの現状

 2015年末、日本女子サッカーの象徴的な存在である澤穂希が現役を引退した。INAC神戸レオネッサの一員として臨んだ最後の試合となった皇后杯決勝のアルビレックス新潟レディース戦では、終盤に値千金の決勝ゴール。自らの一撃で有終の美を飾り、万雷の拍手のなかでスパイクを脱いだ。

 1991年のトップリーグデビューから長年にわたって日本女子サッカー界をけん引したレジェンドがピッチを去り、迎えた昨季のなでしこリーグでは日テレ・ベレーザが2連覇を達成。盤石の強さを示した優勝となったが、世代交代の真っ只中にあるなでしこリーグの現状とは、どのようなものなのだろうか。

「昨シーズンの試合を少し観ました。率直な感想は『遅い』というところかなと思っています」と語ったのは、昨季限りで現役を引退した元日本女子代表FW永里亜紗乃だ。

 なでしこジャパンのFW永里優季(フランクフルト)の妹としても知られ、澤ともベレーザや代表でプレー。2012年にはベレーザの一員としてリーグカップ制覇の立役者となりMVPも受賞、同年のリーグ戦ではキャリア最多19ゴールを挙げてベストイレブンに選ばれた。そうした国内トップクラスの実績を引っ提げて、13年にブンデスリーガのトゥルビネ・ポツダムに移籍。海外で3シーズン半にわたってプレーしたからこそ、なでしこリーグの課題が見えるという。

「単純な走るスピード、球のスピードもですが、他にもカウンターがカウンターにならない、判断が遅い、寄せるのが遅いなどがあります。ただ、自分もなでしこリーグでプレーしていた時は『遅い』と感じたことがなかったです。なぜかと言うと速い必要がなかったからで、速くしなくてもやれてしまうところにあると思っています。

 世界のトップの国々の試合とリーグの試合を観て、確かに日本人には違う良さもありますが、世界との差を考えると足りないもの、苦手、弱点を改善していかなければいけないと思います」

 世界と渡り合う上で、永里亜紗乃はなでしこリーグそのものを強化する必要性を訴えた。そして先月25日に今季のリーグ戦が開幕したが、「近年のなでしこリーグは昔に比べて移籍が多くなってきたと思うので、選手の入れ替えによってどのような変化がもたらされるのかは見どころだと思います」と語った上で、最大の焦点は10代の若手選手の台頭との見解を示した。

永里亜紗乃が指名した次世代の才能

「アンダーのワールドカップ優勝世代がどんどんチームの主力となってきていて、その世代以降の技術力の高さは他の国々にも負けていないと思うので、単純にボールを扱う技術は上がっていると思います」

“リトルなでしこ”の愛称で呼ばれるU-17日本女子代表は、2014年にコスタリカで開催されたU-17ワールドカップ(W杯)で初優勝。すでにMF長谷川唯(ベレーザ)ら数選手が、高倉麻子監督が率いるなでしこジャパン入りを果たした期待の世代だが、永里亜紗乃はそのメンバーのなかから気になっている選手として、「北川ひかる選手と宮川麻都選手」の二人の名前を挙げた。

「もっともっと成長してほしい選手でもありますが、磨き方次第で間違いなく代表の中心選手になれると思うので、注目して成長を見ていきたいです」

 ともに現在19歳で、DF北川は浦和レッズレディースで、DF宮川はベレーザでプレー。北川は3月のアルガルベ杯に招集され、なでしこジャパンデビューを果たしたが、永里亜紗乃が「遅い」と課題を指摘したなでしこリーグ強化や日本女子代表の復権に向けて、彼女たちのような若きタレントのさらなる飛躍は欠かせない。今年は多くの選手が20歳となる節目のシーズン。“2014リトルなでしこ世代”が、各所属チームで放つ輝きに注目したい。