「AKB48グループは、夢を叶える場所ではない。夢の入り口だ」

秋元康氏の言葉である。しかしながら、この言葉を実践するのは非常に難しい。AKB48グループ内で活動と並立しながら、自分の目指す未来のための行動を取ることの労力は並大抵ではない。AKB48グループで活動を続けていれば選抜入り、序列、握手の人気など、頭を悩ます出来事が多々ある。しかし、挫けずその双方を全力で取り組めば道が開くことを示すメンバーが、NMB48には少なくとも2人いる。一人は吉田朱里。そしてもう一人、2期生チームNの三田麻央(愛称:まおきゅん)だ。

三田はいまやNMB48の中でも一二を争う個人仕事数を誇るメンバーとして、多くのレギュラー仕事を抱えている。

アニメ「かなかなかぞく」の神奈川りか役、テレビ東京「OHA OHA アニキ」のアシスタント、MBSラジオ「桜 稲垣早希のアニメ・アイドルスタジオ」のアシスタント(残念ながら終了…)、TBSチャンネル1「麻雀ガチバトル!りりぽんのトップ目とったんで!」の解説…と、ザッと並べてもこれだけの数。さらには、NHK大阪「ぐるっと関西 おひるまえ」には準レギュラー的立ち位置で出演中、BSスカパー!「勝手にアニメ大賞inスカパーの小部屋」の出演も。

メディアの仕事だけでなく「トップ目とったんで!」で名コンビぶりを見せるプロ雀士・鈴木たろう氏の著書「迷わず強くなる麻雀」の挿絵を担当(鈴木氏たっての要望で実現)と、着々と自らの仕事を広げ続けている。

彼女が獲得してきた仕事の多くは、自らが強く発信してきた結果のものだ。自分で「腐女子」と言いきる大のマンガ好き、アニメ好き、声優好きの三田。渡辺麻友をして「アイドルじゃなくオタク」と言わしめるその知識はどれも生半可なものではない。その自身の好きを、休むことなく発信。理解されずとも、誰に媚びることなく言い続けた結果、今の仕事へと繋がっている。「OHA OHA アニキ」への起用は、同じくアシスタントを務める木下百花と共に、プロデューサーたっての希望だったそうだ。

そして仕事の細やかさ。三田はブログにて「頂いたお仕事は、次に必ず繋がるように感謝を込めて、ひとつひとつ丁寧に、丁寧に…それだけを考えて必死に」という精神でどの現場でも臨んでいると記した。その結果、共演したお笑いコンビ・トップリードから「仕事が一緒になるとみんな大好きになる」という絶賛の声があがり、各現場でのスタッフからの評価は高いと盟友・NMB48須藤凜々花の口から語られるなどの信頼を勝ち取り続けているのだ。

そして三田には大きな夢が一つある、それは「声優・アニメソング歌手」になること。この夢は加入当初から一度もブレることなく、いまなお三田の活動の原動力になっている。

彼女は過去に「NMB48のTEPPENラジオ」でこう語ったことがある。

「アイドルって“歌う”“踊る”もそうやけど、MCだったりとか色んなことを学べると思うねん。そういうのが詰まってるのがアイドルにしかできへんこと。(中略)これから1人で(声優として)活動するってなったら今のアイドル活動が糧になると思う」

アイドル活動における全てはいずれ、自分が独り立ちした時に全て役立つという意識をそこに置きながら現在NMB48での活動を行っているという。だからか、彼女のNMB48での活動は細部まで神経が行き届いている。MCでは先輩後輩を問わず賑やかな輪を生み出すために一歩引いて各々のキャラを立たせ、時にはツッコミ時には自虐でツッコませるという、誰もが安心できる空間を生み出す。頭の回転の早さも相まって、どんなハプニングが起こっても難なく対処できる順応力も高い。大会場でもメインMCを任されるほどの話芸は、今すぐでもタレントとしても第一線で活躍できるほど卓越している。相当な発声練習を経てきたことがよくわかる甘くもよく通る声は歌えば美声、煽ればチームを鼓舞する勢いへと変える。溌剌とした笑顔、人を傷つけない姿勢と、振舞も見事だ。

今やマルチな活動が必須となった声優。その必要なエッセンスをNMB48での活動を通して体得し続けていると言える。アイドルという仕事を通じて夢へと繋げようと、三田なりの形で昇華し続けているのだ。ひいてはNMB48のステージにも還元されており、公演での三田の存在感は唯一無二とすら言える輝きを放っている。

これまで三田のNMB48での活動は決して順調な道のりではなかった。2期生公演の初日メンバーに選ばれず、チームMに昇格後も序列は決して高くはなかった。アイドルとしての理想、夢とのギャップに悩む日もあったという。約6年という在籍期間の中で、シングル選抜の経験は未だにない…と、前線で輝く機会は限られてきた。2012年にアニメ『AKB0048』で念願だったの横溝真琴役で声優デビューを果たすものの、声優の仕事が舞い込んでくることも長らくなかった。

一度は声優への道を諦めかけたと20歳の生誕祭で語ったことがある。それでも負けずに彼女は必死に自分を研ぎ澄まし続けた。その結果、「かなかなかぞく」のメインキャラの声を任された。先代のりか役を務めた人気声優・阿澄佳奈の後任というのは、大きなプレッシャーだっただろう。それでも、持ち前の溌剌としたアイドルボイスが見事マッチ。作品に新たな彩を加えた。彼女はまた一つ自らの武器を振るい、夢を手繰り寄せたのだ。

自らの夢、やりたいことのために、手段をつくす。そのどれも手を抜かず全力を注いできた、だからこその今の活躍があるのだ。

そんな彼女は「トップ目とったんで!」にて、自分の立ち位置に悩む後輩に向けてこう語った。「回り道は回り道なりの楽しみ方さがある。今は回り道を楽しんで、ちゃんと築き上げていく。私がみんなに教えてもらったから、今度は私が後輩に教えていきたい」

こんな頼もしい一言は他にないだろう。不遇の日が続き燻ったとしても、腐らずに前を向き力を注げば、わずかチャンスが舞い込んでくる。そしてその小さなチャンスを広げるために高め続ければ、大きな道が開くことを三田は身をもって示し続けているのだ。(田口俊輔) 写真(C)NMB48