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日々更新される「ニュル記録」に対する、ふたつの見方

ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォマンテはニュルブルリンク北コース(20.7km)で、量産車最速ラップ・レコードとなる6分52秒を記録したという、ランボルギーニが発表したニュースは世界を震撼させた。

これを聞いた反応はふたつに分かれた。

公道を走るスーパーカーが、ステファン・ベロフの記録したポルシェ956の史上最速記録の41秒差まで迫ったという新しい時代の到来を祝福する集団がいる一方で、640psのランボルギーニがどうやって、886psのポルシェ918スパイダーよりも5秒も速く周回することが出来たのか懐疑的に思う集団は、メーカーが公表したオンボード映像を批判的に分析している。

好むと好まざるとにかかわらず、ニュルブルリンクの最速タイムは重要だ。パフォーマンスカー開発において指標となったリング・レコードは、リスクを負ってさえ重要であり、そのタイムはこの10年で1分も更新されている。

3.5秒以下の0-100km/h加速と320km/h以上の最高速を標榜するパフォーマンスカーの世界では、抜きでは語れない指標である。

しかし、今のところ統一の規定があるわけではないので、個々のメーカーがそれぞれの手法で計測した記録を公表しているに過ぎない。

しかも、量産型のクルマに施されたチューニングの度合いに関してはその内容が明かされることは少ない。ほとんどのレコード・セッターには、安全面の配慮からロール・ケージが設置されているが、一部のメーカーは、このロール・ケージの設置によって増加した重量を、同じだけの重量の内装を除去することで対応していたり、ほかのメーカーは、サーキット仕様のコンパウンドの高いタイヤを装着したり、最低限のオプションを装備している例もある。

こうした状況に、アメリカの自動車愛好家であるジェームス・グリッケンハウスはあらたな提案があるようだ。

グリッケンハウスの提案

「わたしからの提案は、グリッケンハウス・ロード・カップの開催です。ニュルブルリンク24時間耐久レースの予選の後に行うものです」

そして、彼はこう続けた。

「参加車は法的に公道を走れるクルマでなくてはなりません。ケルンをスタート地点として、ニュルブルリンクまで自走します」

「ここで使われるタイヤは、タイム・アタックの時に使われるのと同じタイヤで、サーキット仕様の特別仕様のものではなく、法的に認められる公道仕様のタイヤでなければなりません。こうすることで、すべての参加車は同じ条件で走って、記録を採ることができます。シンプルなルールです」

彼の提案はスリリングでもあり、また現実的でもない。実際ニュルブルリンクのオフィシャルは、今のところこの提案を受け入れていない。

しかし、彼は、これまでにニュルブルリンク24時間耐久レースの予選でファステスト・ラップを記録した競合チームに、トロフィーと賞金を授与している。

同時に彼もまた挑戦者であり、かなりの額の自己の資産を投じて、ピニンファリーナに命じてフェラーリP4/5を造らせ、それを「コンペティツィオーネ」バージョンへと昇華させている。

また、彼は、約22億円以上を費やして、SCG003を造り、レースに参加している。これは、彼の提案に秘めた動機となっており、SCG003の「ストラダーレ」バージョンは、ニュルブルリンク北コースで最速となると彼は自負しているのだ。

問題は自動車メーカーが彼の挑戦を受けるかどうかだ。グリッケンハウスは、オフィシャルからは正式に承認されないとしても、お金持ち達が自分の所有車をプロのドラーバーに託し参加してくれるだろうと願う。

競合車についても大いに語ってくれた。例えば、アストン マーティン・ヴァルキリーだ。「メーカーは4.5Gでコーナーリングをするといいますが……」と彼は切り出す。

競合メーカーに容赦なく物申す

「メーカーは4.5Gでコーナーリングをするといいますが、ロード・タイヤで2G以上でコーナリングすることはできません。彼らがなんと言おうと、これは物理の法則です」

いっぽう、ラディカルSR8 LMが記録した6分48秒は広くニュルブルリンクの最速タイムと認知されており、オフィシャルもこれを認めている。そのラディカルについてグリッケンハウスは、「わたしのルールなら、もちろん、参加して欲しい」と呼びかけた。

「わたしの言っていることは、お金持ちがLMP1レーシング・カーにナンバーを付けて走らせるということではなくて、リアルでなくてはなりません。ヘッドライト、テールライト、ワイパーにバンパー付きの」

そこで、ラディカルのスポークスマンであるウィル・ブラウンにこの話を伝えた。

「これはわれわれにとっても興味深いことです。われわれは2003年からニュルブルリンクの記録を更新してきましたからね」

「最初は、SR3ターボ、そしてSR8スーパースポーツにLM。現在は、欧州の小規模なシリーズで承認を受けたRXCターボがあり、このクルマは全うなロードカーといえるでしょう。われわれの持つコースとクルマのノウハウを考えれば、競争力のあるタイムを記録できるでしょう」

グリッケンハウスには、ボクシングの興行主に似た雰囲気がある。後に自身の利益となるであろう論争を引き起こすところなどだ。

しかし、彼はお金のためではなく、栄光のためにそれをする。もし彼の構想が日の目をみることになり、来年のニュルブルリンク24時間耐久レースの予選の後にグリッケンハウス・ロード・カップが開催されることになれば、われわれは是非とも歴史的瞬間の目撃したいものだ。