ハイヒール x ITで「痛みにさようなら」

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ハイヒールは痛くて当たり前──。そう信じて疑わない女性は、きっと少なくない。

松本久美が開発に力を注ぐのは、痛みを感じないハイヒールを提案するオンラインサービス。足の写真と情報を登録すると、アルゴリズムにより、フィットする靴がECサイトからピックアップされる。そんな”バーチャルシューフィッティングサービス”のリリースを目指す。松本は言う。

「ハイヒールは、痛いとわかっているのに履きたくなる。女性の欲求を満たしてくれる存在なので、本来ならもっと楽しむべきものだと思う」
 
13年間を靴業界で過ごした。でも、フィッティングに着目するようになったのは意外にも靴業界を離れてから。製造の現場では、どこまで美しさを追求できるかがすべて。幅が細ければ細いほど、靴は美しく見える。

「『あと1ミリ削って』と、私もよく口にしていました。それが誰の足に合うか考えていなかったんですね」
 
靴業界は小規模の会社が多く、倒産の憂き目にもあった。「あと2ヵ月で資金がショートする」。そう雇用主に言われ転職を余儀なくされたのは、一度や二度ではない。

「靴業界、もういいかな」。漠然とそう感じ、IT会社に転職。「ネットの知識をつけたい」と飛び込んだ業界では、「なんとなく」が通用しないことを思い知る。エンジニアはみな「数字」を求めてくる。新鮮だった。
 
スタートアップやビジネスコンテストの存在を知るようになり、改めて自分の強みを考えてみると、やっぱり靴に辿り着いた。一消費者として困るのはなにか、と考えた末の答えが「痛み」だった。
 
2015年に起業し、現在はエンジニアの友人と二人で開発に取り組む。
 
数字は嘘をつかないと思っていた。けれど、いざ足と靴の数値化を進めると、エラーが大量に出ることがわかった。アルゴリズムによれば合うはずの靴が「痛い」と言われたかと思えば、逆もしかり。汗かき体質のため合わないこともあれば、原因は足ではなく、腰にあるということだってある。

「原因は複雑に絡み合っている。人間を『計測』するのは難しい」

とにかくデータを集めなければ。プロのシューフィッターとしてオフラインでデータを集め、オンラインで出るエラーの原因を解明する。再び仮説を立て、検証していく。

フィッティングという”謎”が少しでも解けたら、次は自らモノを供給し、その後はプラットフォームとしてノウハウを開放していきたい。そこまでが一連の目標だ。

「10年かかるかもしれないけれど」道のりは長い。でも、一歩一歩。着実に前進している。

松本久美◎靴業界で縫製、デザイン、生産管理などほぼすべての職種を経験した後、IT会社に転職。2015年6月に株式会社「シンデレラ」を設立。同年、インキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」で最優秀賞。「シンデレラシューズ」という名のバーチャルシューフィッティングサービスを開発中。