以前、ミラノの街角で5、6人の少女に取り囲まれ、目の前で新聞を振りかざすのを必死でのけようとしている間に上着の内ポケットから財布を抜き取られたことがある。

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「上着汚す泥棒」というニュースを見て、いよいよ日本も国際的になったのだなあ、という感を強くした。この例は故意に上着に液体洗剤をかけ、さも親切そうに「汚れていますよ」と言い、上着を拭いている間にかばんを持ち去る泥棒であった。海外で事故に遭う人が多いので手口を紹介して注意を促しておきたい。

私自身も以前、ミラノの街角でジプシーの5、6人の少女に取り囲まれ、目の前で新聞を振りかざすのを必死でのけようとしている間に上着の内ポケットから財布を抜き取られた。瞬間的に気づいて目の前の少女を捕まえた途端、財布がぽとりと落ち、少女たちはクモの子を散らすように逃げていった。

海外の泥棒はクループで、演技派で、巧妙かつ大胆である。突然、横で大声を上げて大胆に抱き合っている姿をあっけにとられて見ている間に荷物がなくなり、近くにいた泥棒仲間があっちに逃げた、と反対の方向を指さす。

レストランで食事をとっている横で小銭をばらまき、親切な日本人が拾うのを手伝っている間に荷物を持ち去る。

「私が荷物を見ていてあげるからショッピングにいってらっしゃい」といった光景をよく見るが、一人で見張っていても相手が五、六人で現れたらどうしようもない。おろおろしている間に目の前で全部荷物を持ち去られたケースもある。

ホテルの部屋をノックして「Aさんですか」と違う名前を言って、少し開いたドアのかぎのところに紙を挟んで開けたままにして夜中に泥棒に入る。

空港のカウンターで手続きをしている間に持ち去られるケースもある。一流ホテルのロビーでも要注意。謀られているのか、本当に困っているのか、を瞬時に見極めなければならないのもしんどいことである。まさに心理戦争である。

日本人の親切心という美徳を逆手に取られるのも悔しい。要は自分のものは自分で守る気構えが大切である。

立石信雄(たていし・のぶお) 1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長、財務省・財政制度等審議会委員等歴任。
北京大学日本研究センター顧問、南開大学(天津)顧問教授、中山大学(広州)華南大学日本研究所顧問、上海交通大学顧問教授、復旦大学顧問教授。中国の20以上の国家重点大学で講演している。