7節・讃岐戦で移籍後初ゴール。杉本にエンジンがかかってきた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 試合を追うごとに、背番号25の価値と存在感が高まってきている。
 
 4節・水戸戦で初のベンチ入りを果たした杉本竜士は、5節の松本戦で後半から途中出場。小雪舞うアルウィンでもトレードマークの半袖を貫き、こだわりのドリブルと蛮勇にも見える荒々しいプレーで、チームの新たなオプションとなる可能性を見せた。
 
 6節・熊本戦でついにスタメン出場を果たすも、後半開始早々に自らのドリブル失敗にイラついて警告をもらって途中交代。3歩進んで、進み過ぎてちょっと暴走して、2歩立ち止まるようなそのプレースタイルで、停滞感を叩き壊すアクセント役をこなせるようになってきた。
 
 もともとが「自分のスタイル的に、スタメンでも途中交代でもいい」と語る突貫小僧キャラだ。7節・讃岐戦ではスタメンを杉森考起に譲り、ベンチに待機していたが、讃岐のロングボール戦術に押し込まれる仲間たちを見て「何でビビってプレーしてんだろ」と舌なめずりをしていた。
 
 迎えたハーフタイムの練習中にコーチに呼ばれ、熱いハイタッチをかわして後半から出場。長いボールを蹴られても、そこから正確な止める、蹴るの繰り返しで押し返していくのがチーム本来のやり方だが、前半はハイプレスにやや逃げる傾向が見られ、なかなか名古屋らしさを表現することができなかった。杉本がそこで心掛けたのは、「とにかく、“見えないところ”に僕が行く」ということだ。
 
「みんな自分が見えるところでしかプレーしていなかった。だから、“ここに行ったらいけないのか、ここに行くと取られてしまうのか”となっていた。そこを自分がこじ開けてチームが勢いに乗れたらと思っていた。
 
 例えば僕が縦に仕掛けて、ドリブルして思いっきり取られました。でも、みんなが『それやっていいんだ』と思えば、じゃあアイツみたいに仕掛けようとするかもしれない。そういう風にチームが見えてなかったところを見られるようにしていければと思って。それが押し込める形につながったと思うし、そこは意識して入りましたね」
 試合は58分、玉田圭司のFKで名古屋が先制するも、69分に宮原和也がパス回しの最中に濡れたピッチで足を滑らせ、そこで奪われてショートカウンターからまさかの失点。同点に追いついた讃岐は勝点1を念頭に置いた試合運びで名古屋の猛攻に対峙し、1-1のまま膠着の展開に持ちこんだ。焦れる名古屋と、耐える讃岐。その状況を打ち崩したのが、杉本だ。
 
「あと10分くらいあると思ってましたよ」と無我夢中のままに辿り着いた88分、公私ともにかわいがられている田口泰士のスルーパスを受け、左サイドに飛び出した杉本は、そのままカットインをスタートする。
 
 ひとりをかわし、シュートモーションに入ったところで、後半開始早々にあった同じような場面を思い出し、「ひとつ待とう」とマーカーのタックルをかわしてから右足を一閃。強烈なミドルシュートは絶妙なインスイングの軌道を描き、ゴール右上に突き刺さった。
 
 ゴール前を固めていたDFも、名手GK清水健太も呆然と見送った移籍後初ゴールは、チームに4年ぶりの4連勝をもたらす殊勲の一撃になった。
 
 試合後、多くの報道陣に囲まれた杉本は「試合の前半というのは難しいし、後半からチームはスムーズになった。俺が何をしたというわけではないですよ」と殊勝に語ったが、「同点にされた時はマジかよ、と思いました。ここから2〜3点叩き込もうと思ってたのに」とヤンチャな一面ものぞかせた。
 
 起死回生のゴールには宮原も「竜士くんには感謝です」と胸をなでおろし、先輩の玉田は「竜士に全部持ってかれた感がある」と嫉妬。レジェンドも認めるインパクトを残したサイドアタッカーは、指揮官の評価をまたひとつ確かなものとしたに違いない。
 
 殊勲ですねと問うと、「殊勲って何ですか?」と答えた天然素材は、ヒーローですよと言われて「全然です」と照れ笑い。名古屋に現われた特異なキャラクターから、今後も目が離せない。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)

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