WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 タイガー・ウッズ(41歳/アメリカ)が、今季メジャー初戦となるマスターズ(4月6日〜9日/ジョージア州)を欠場した。

 これで、オーガスタ・ナショナルGCは2年連続でウッズ不在の”春の祭典”を迎えることになった。どれだけ優勝争いの大歓声がコース内に響いても、そこには何か足りないものがある――そんな気分になるのは、何もウッズファンに限ったことではないだろう。

 ウッズがゴルフ界に登場してから、私たちはウッズの見せてくれる神がかり的なプレーにずっと興奮し続けてきた。しかも、オーガスタで見せるその姿は一段と輝いていた。その感動と興奮がまだまだ続くと、ずっと信じてきたからだろう。


1997年、マスターズで初めて優勝したウッズ ウッズがマスターズで初めて優勝したのは、今からちょうど20年前の1997年のこと。思えば、あのマスターズ以降、ゴルフ界は大きく変わった。

 ウッズの勝利によって、それまで”オジさん”や”お金持ち”の道楽といったゴルフのイメージが一掃された。子どもたちも憧れる、格好いいスポーツへと変貌を遂げた。

 そのマスターズのおよそ8カ月前、ウッズはオレゴン州ポートランドで開催された全米アマチュア選手権(1996年8月)で大会3連覇という快挙を達成すると、世界中が注目する中、プロ転向を発表。9月のミルウォーキーオープンでプロデビューを飾った。

 年が明けて、出場3度目となるマスターズは、プロになって初めて出場するメジャー大会だった。アマチュア時代に2度出場した際には、41位タイ(1995年)、予選落ち(1996年)という結果に終わっている。その成績からすれば、決して相性がよかったわけではないだろう。

 それでも、ウッズのマスターズへの思いは、何ものにも代えられないほど大きかった。

 プロになって、すでに3勝を挙げて臨んだ大一番。ウッズは初日の前半で「40」を叩いて、大きく出遅れた。しかしこれがかえって、スター誕生というドラマの興奮をより高める呼び水となった。

 前半で「40」を叩いたあと、バックナインでは「30」と爆発。結局、初日は「70」をマークして2アンダー、4位と好発進した。その勢いのまま、2日目は「66」をマークして首位に浮上。3日目には「65」のベストスコアを出し、2位に9打差という大差をつけてトップを快走した。

 最終日は、もはや歴史的な勝利の瞬間を見逃すまいと、世界中がウッズの一打、一打を注視した。そして、ウッズはそんな重圧をものともせずに「69」でラウンド。2位に最多の12打差をつける、大会最少スコアの通算18アンダーを記録し、21歳3カ月での最年少優勝と、初のメジャー制覇を記録づくめで飾った。

 だが、ウッズが遂げた、本当の意味での”記録”はそれらの数字ではない。初めて”アフリカン・アメリカン”が頂点に立ったことだ。18番グリーン上で、父のアール・ウッズ氏と肩を抱き合って涙した姿は、今なお世界中の人々の脳裏に焼きついていることだろう。

「昨夜、父から『明日は、おまえの人生で最も大変な一日になるだろう』と言われた。そして、父は正しかった」

 優勝を決めたあと、ウッズは独走することがどれほど大変だったかを語った。そして、こんな話もした。

「時が経てば、必ずたくさんのことが変わる。僕の時代では、おそらく子どもたちが『ゴルフは”クール”なスポーツだ』と言うようになる。そしてきっと、もっとたくさんの子どもたちがプレーする時代がくる」

 ウッズが言ったことも正しかった。多くの”タイガー・キッズ”が、今のゴルフ界をリードするトッププレーヤーとなった。

 ロリー・マキロイ(27歳/北アイルランド)もそのひとりである。

「当時7歳だった僕は、ウッズがマスターズを優勝したときのビデオを、何度も何度も見ていたんだ。あの日(ウッズが)何を着ていたか、どんなショットをどこに打ったか、すべて言うことができるよ。それは、僕の友だちもみんな一緒さ」

「あのとき、僕は9歳だった」と語るのは、ジェイソン・デイ(29歳・オーストラリア)だ。

「すでにゴルフを始めていた僕は、早朝から父と一緒にテレビの衛星中継を見ていた。18番グリーンに上がってくるウッズの姿は、まさしく王者だった。あのマスターズを見て、僕はゴルフに対してシリアスに取り組むようになったんだ」

 また、当時5歳だった松山英樹は、「ウッズが着ていた赤いシャツと黒いパンツが本当に格好よかった。ゴルフの内容は覚えていないけど、それだけは鮮明に覚えている」と、6度目のマスターズを目前にしてそう話した。

 多くの子どもたちが、タイガー・ウッズに憧れてゴルフクラブを手にした。その中から、たくさんのトッププロが誕生した。彼らの活躍は、ウッズが20年前に思い描いた”未来”そのものだ。

 今年はウッズの姿がコースでは見られないが、初優勝から20年、せめてこの間にウッズが築き上げてきた近代ゴルフの礎に思いを馳せながら、今大会の優勝争いを楽しむようにしたい。近い将来、ウッズが再びこのコースに戻ってくることを信じて。

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