新幹線開業1周年を祝う函館駅からは函館山も臨める

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 北海道新幹線の開通で話題になった函館。2016年3月26日の新青森─新函館北斗間の開業から1年が経った。

 JR北海道の発表によると、開業から2017年2月までの利用実績は平均乗車率33%で、1日の平均乗車人数は6500人。33%という数字はかなり低調なイメージだが、当初予想は26%、平均乗車人数は在来線だった前年に比べて7割近く増加し、函館観光への影響も大きいという。

 ホテルも然り。北海道新幹線による経済効果として道南全体での宿泊者数は39万人増加。宿泊者数からの推計によると、北海道新幹線による経済効果は200億円近くになるという(道銀地域総合研究所調べ)。

 また、2017年2月にはLCC(格安航空会社)のバニラエアが成田─函館線の運航を開始し話題に。成田・函館発ともに昼間帯で乗り継ぎにも便利なダイヤで各地から函館への誘客が期待される。

 港に面するエキゾチックな異国情緒が人気の函館観光。香港、ナポリと並び函館山からの夜景は世界三大夜景のひとつといわれるが、その魅力は函館湾と津軽海峡に挟まれた地形あってのものだろう。函館観光でもやはりベイエリアには人気が集中。ホテルシーンでも函館駅から人気の朝市を過ぎ、金森赤レンガ倉庫、元町周辺に人気ホテルが集中する。

 このエリアのホテルトピックとしては、2016年9月の「フォーポイントバイシェラトン函館」の開業だろう。

 函館市内初となる国際的なホテルチェーンとして誕生した。函館駅前の堂々とした佇まいで知られるホテルだが、1988年の開業以降長年にわたり函館市民に親しまれた「函館ハーバービューホテル」がその起源。2008年にロワジールホテル函館に改称、そして今回のリブランドとなった。

 ドーミーインと同一の運営会社による「ラビスタ函館ベイ」もベイエリアだ。ドーミーインといえば温浴施設をイメージするが、ラビスタ函館ベイも最上階に充実した温浴施設を擁する。

 同ホテルの知名度を一躍全国区にしたのが北海道一ともいわれる朝食。イクラや烏賊をはじめ、ブッフェスタイルで海鮮たっぷり盛りの丼も楽しめる。函館の人気ラーメン店や回転寿司店も隣接しており、函館グルメが満喫できるホテルといえるだろう。

 ラビスタ函館ベイと並ぶ人気朝食ホテルとして赤丸急上昇なのが「函館国際ホテル」。海鮮コーナーを見てもラビスタ函館ベイと比べ遜色ない。人気インテリアデザイナーの手による質感の高いスペースで、シェフにより朝からステーキの実演までされている。料飲部門も充実しているシティホテルならではの内容。函館では貴重なフルサービス型シティホテルとして滞在のクオリティを追求する。

 筆者は函館エリアのホテルについて、新幹線開業前に「サービス拡充」「周辺余波」というキーワードで分析したが、函館のリゾートである大沼公園エリアのホテルも注目を集めている。

 2016年8月に開業した「大沼鶴雅オーベルジュ エプイ」の人気は上々だ。JR大沼公園駅徒歩3分の立地でクオリティ高い食とステイを提供する。運営は北海道で人気のホテルや旅館を運営する鶴雅リゾート。新幹線開業が進出のきっかけだったという。

 一方、長年この地で親しまれてきた「函館大沼プリンスホテル」も堅固な人気を誇る。駒ヶ岳を望むロケーションを生かした温泉も人気のリゾートホテルだ。東京シティエリアでリニューアルが続くプリンスホテルだが、プリンスリゾーツも“質”の進化が注目されている。

「繁閑差が大きいリゾートホテルにおいてはコンセプトを極めることが重要」と2年前に着任した春山支配人は語る。国際線の就航や新幹線効果、LCC就航など函館観光を取り巻く環境の変化はゲストの多様化をもたらす。

 様々な文化が行き交う中にあって、食のクオリティはリゾートホテルの要。函館大沼プリンスホテルの料理は以前に比べクオリティが格段にアップしたと好評だが、2015年(4月〜9月)比で稼働率が20ポイントアップ、ADR(平均客室単価)は15%アップした。
自然や温泉はもちろんだが、料理を楽しみたいというゲストの増加が顕著だという。

 また4月末にはゴルフ場のクラブハウス新設も予定されており、ゴルフのゲストはもちろん、ホテルの環境や規模を生かしMICE(ビジネスイベンツ)の誘致にも力を入れていきたいとのこと。

 新幹線特需的な集客効果が持続困難なことは想定されていたが、函館エリア人気ホテルのADRは微増ながらも上昇傾向が続いているという。

 函館観光が注目されることはホテルサービスの拡充に繋がる。安直なブームは一時的な高稼働をもたらすが従前の顧客を逃す危惧もある。一方で、新たなゲストが訪れた時に提供できるホテルクオリティは、リピーターを獲得する試金石ともいえるだろう。

 北海道新幹線の開業、さらなる札幌延伸、東京オリンピックなどを契機に、大規模改修や投資が行われている函館エリアのホテル。閑散期の集客など課題も残っているが、注目されることを好機と捉える運営会社の努力が、クオリティに見合った料金設定に繋がる。“実を伴った”好循環に期待したい。

取材・文■瀧澤信秋(ホテル評論家)※写真提供も