町に着いたら、本屋をめざそう。Vol.014/451BOOKS(岡山県玉野市)

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知らない町に迷い込むのと、本屋さんで心を遊ばせるのは、どこか似ている気がする。そして、旅先で出会った本の一節はなぜか、いつも以上に心に残ったりもする――。全国の町の味わい深い本屋さんが、旅のお供におすすめの1冊を教えてくれる不定期連載。大阪府大阪市の「FOLK old book store」の吉村さんがご紹介くださったのは、岡山県玉野市のこちらです。









岡山駅から特急バスで30分、途中、瀬戸内海に繋がる児島湾を仕切って出来た児島湾。堤防を渡って、451ブックスへ。岡山から右が児島湾、左が児島湖になり、12月から3月くらいは、渡り鳥(主に鴨)が3万羽ほどやって来て、運がよいと頭上をV字飛行してくれるのだそう

◆いい本なら、ジャンルを問わずなんでも。
大きな本屋さんにはない品揃えが楽しい

『451BOOKS』があるのは、岡山県玉野市。夕日が美しいことで知られる児島湖に面した場所で小さなお店を営んでいる。足を踏み入れると目に飛び込む螺旋階段に、子どもも大人も思わずワクワク!
「かつては会社勤めをしたり、専門である建築について学校で教えていたこともあったのですが、もともと本が大好きで。自宅に収まりきれなくなっていた本をインターネットで販売してみたらそこそこ売れたんですね。だんだん買取や仕入れもするようになって、本格的にお店を始めました」と店主の根木慶太郎さん。
少しでも本の楽しさを伝えることができればという想いから、店内には新刊、古本、洋書、さらにリトルプレスやZINEも、根木さんがいいと思った本が所狭しと並ぶ。





ジョン・バーニンガムの絵本「なみにきをつけて、シャーリー」

◆絵本を“深読み”してみると
意外なメッセージが隠れているかも…!?

「マンガやアニメーションが子ども向けだけでないように、優れた絵本には大人こそが楽しめるものがたくさんあることを伝えたいんです」という根木さんがおすすめしてくれたのは、イギリスの作家・ジョン・バーニンガムの絵本「なみにきをつけて、シャーリー」。
「左ページに描かれる両親と、右ページに描かれるシャーリーの空想の世界の対比が楽しく、いろんなことを考えさせてくれる不思議な絵本。絵本は子どものためだけにあるのではないと気づかせてくれた一冊でもあります」

451BOOKSで開催される「おとなのための絵本講座」では、作者がどんな生涯を生き、どんな思いを込めてその絵本を作ったのかなど、絵本の中に隠された大人しか読み取れないメッセージを紹介している。
子どもの頃に読んだ本をこんな風に“深読み”すると、まったく別の感想を抱くかもしれない。それこそがきっと、読書の醍醐味であり、読者は何度でも同じ本と、新しく出会うことができるのだ。





児島湖沿いにあるカフェ。晴れた日の眺望は最高。季節の野菜を使ったカレーが人気

◆この場所で、あなたにとって
かけがえのない一冊が見つかりますように

根木さんにとって、本はどんな存在ですか?と質問を投げかけたところ、こんな答えが返ってきた。

「『速読のススメ』みたいな本が今でも人気ですが、本は文章、言葉、絵などを、時系列にそって読んでいくことで、初めて体験になり、感動を与えてくれるものです。
本を読むことは、考えること。体験であって、情報や知識を得るためだけのものではありません。文字が集まって文章になり、印刷されて、感触や重さ、大きさなどを与えられた物としての本がその役目を担うに最も適していると思っています」

本を読むという行為は、個人的な体験。一冊の本にじっくり時間をかけて読んだって、何度も同じところを読み返したっていい。
本を読むことでしか味わえない非日常を、思う存分に味わってほしい――きっとすべての本には、そんな願いが込められている。



写真は店主の根木慶太郎さん

■451BOOKS
TEL.0863-51-2920
岡山県玉野市八浜町見石1607-5
営業時間/12:00〜18:00
※通常営業は土日月祝のみ(平日は1週間前までに要予約)

「なみにきをつけて、シャーリー」
ジョン・バーニンガム作 へんみまさなお訳 ほるぷ出版刊

■grid kitchen
TEL.0863-53-9266
岡山県玉野市八浜町見石883-50
営業時間/11:00〜18:00
火、水休

WRITING/MINORI KASAI