Doctors Me(ドクターズミー)- 泡石鹸と液体石鹸はどっちが効果的?種類別の特徴を医師が徹底分析!

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インフルエンザや、食中毒の予防に手洗いは有効であるので、外から帰ってきたときには手洗いを徹底することが大切です。

手洗いの際に石鹸を使う場合、固形や泡石鹸、液体石鹸など様々な種類がありますが、どれが一番有効なのでしょうか?

今回は医師の建部先生に、海外で行われていた石鹸の研究、石鹸の種類別のメリット・デメリット、有効な手の洗い方などを解説していただきました。

泡石鹸と液体石鹸に関する研究


研究概要


アメリカ合衆国UCLA医学部のオズレム・イクイルス博士らは、市販されている2つの泡状石鹸および液体石鹸の抗菌効果について、 手洗い後の表面に残存する平均細菌集落数を調査する研究を行いました。

実験にあたり実験協力参加者を別に集め、同じ種類の泡ならびに液体石鹸を使用し、同じ手洗い方法を行って手の表面に残存する細菌集落数を確認しました。

研究結果


液体石鹸のほうが有意に手洗い後の手の表面に付着する細菌集落数が少ないという結果を示し、別の実験協力参加者たちの結果集計においても同様でした。

研究考察


■ アメリカの考察
実験結果に係る考察において、オズレム・イクイルス博士の研究チームは、「液体石鹸が手を洗うという過程で泡が作り出されていくのに比べて、泡石鹸は泡そのものがポンプから出てくるため液体石鹸よりも抗菌効果が少ないのかもしれない。」と推測しています。

また、1回あたりに吸い上げる泡に含まれる石鹸としての量が、液体石鹸における量でみられるよりもよりも著しく少ないなどの、1回使用量あたりの石鹸成分量の違いに言及しています。

■ドイツの考察
ドイツのエルンスト大学の手指衛生専門家、ギュンター・カンプ博士は、 以下のように述べています。

「研究が小規模で方法が厳格ではなかったため、結果をよりはっきりさせるためにはさらに厳密な研究が必要である。」

「家庭では、手洗いが洗浄の主な目的であるため、泡石鹸であれ液体石鹸であれどちらの使用も変わりがない。」

■ 研究の見解
オズレム・イクイルス博士の実験は疫学的実験としては規模が小さいようなので、得られるデータも信頼性が低いを言わざるを得ません。

実験結果の考察に対しても1回分の石鹸としての量の比較や、少なくとも泡石鹸における泡立ちを良くするために含まれている起泡剤や泡保持剤の影響についても検証が無ければ意味がありません。

したがって、実験からは少なくとも家庭での手の洗浄という点においては、泡石鹸使用と液体石鹸の使用に優劣を述べることは難しいでしょう。

《参照》
・ロイター

手に存在する3つの皮膚常在菌


手の皮膚にはいつも住みついている皮膚常在菌が存在しており、基本的には手の皮膚上の皮脂や汗をエサに生息しています。

主に以下の3種が皮膚常在菌として存在しています。

表皮ブドウ球菌


ブドウ球菌は、コアグラーゼ陽性である黄色ブドウ球菌と、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌とに大きく分けられます。

コアグラーゼとは黄色ブドウ球菌の菌体の外で作られる酵素の1つであり、血漿凝固作用を有するもので、十数種あるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌のうち代表的なものが表皮ブドウ球菌です。

また、表皮ブドウ球菌は皮膚に常在しており、病原性に関しては黄色ブドウ球菌より弱く毒素も作りません。

病原性があまり問題とならなかったのですが、医学の急速な進歩に伴って細菌やウイルスに感染しやすくなってしまっている易感染患者が急増しており、患者にとっては、表皮ブドウ球菌は大きな問題となります。

黄色ブドウ球菌


人体の皮膚表面や毛孔に存在し、特に鼻腔内に多く存在する常在菌です。

黄色ブドウ球菌は毒性が高く、病気を引き起こす危険性が健常者に対してもあるといった特徴があり、創傷部から体内に侵入した場合などに発症する危険性があります。

感染力は強いですが、菌が少なければ通常毒性は弱いです。

アクネ菌


ブドウ球菌と同じように一番多く皮膚に存在する皮膚常在菌です。

アクネ菌は皮脂を栄養にしていて、増殖し過ぎるとニキビの原因となってしまいますが、手には毛穴とその内部に存在する皮脂を分泌する皮脂腺自体が少ないので、手には少ない常在菌といえるでしょう。

手の菌によって懸念される疾患リスク


基本的には、手の菌によって生じる疾患は、黄色ブドウ球菌によるものと考えてよいでしょう。

主なものは以下の通りです。

表皮感染症


手における外傷部分から黄色ブドウ球菌による感染が起きると、伝染性膿痂疹(とびひ)、蜂巣炎など、表皮限局性の化膿性疾患の原因になります。

食中毒


おにぎり、寿司、お刺身などの食品に特に黄色ブドウ球菌といった菌が付着・増殖することで起こります。

増殖の過程で細菌産生毒素量が増え、生理活性により経口摂取後1〜5時間で、発熱や下痢、嘔吐などの食中毒症状をきたすことがあります。

毒素は熱に強く抗生物質が効かないので、対症療法で毒素が体外に出されるのを待つことが治療の主体になってしまいます。

肺炎や肺化膿症


黄色ブドウ球菌の増殖が進んだ結果、時に血流に入った場合に生じることがあります。

肺化膿症とは肺内部の気道の末端、肺胞というブドウの房状の末端組織に細菌が増殖し、対して生体側の白血球を主とする炎症細胞や感染防御物質が集まって炎症を起こした状態の感染症で、組織の壊死を伴うのが特徴的な病態です。

肺内に空洞が広がり、液状の壊死物質が空洞内にたまってしまう状態、簡単にいうと肺に穴が開いてしまいその穴の内部に膿が溜まった状態とも言えます。

髄膜炎


肺炎、肺化膿症と同じく血中に入った場合、黄色ブドウ球菌が定着し、脳および髄膜に炎症が生じた状態で、炎症部位によっては生命の危険がある救急疾患です。

菌血症、敗血症


本来無菌であるはずの血液中に細菌が認められる菌血症や、さらに進んで感染を原因とした全身性に炎症が起きている状態である敗血症は、全身の多臓器不全を引き起こす重篤な病状です。

毒素性ショック症候群


黄色ブドウ球菌の産生するTSST-1という毒素による症候群です。TSST-1がスーパー抗原として働き、発疹、下痢や嘔吐、血圧低下(ショック)、播種性血管内凝固、多臓器不全などを来たす致命的な疾患です。

医療用人工物への感染


人工心臓弁、人工関節、中心静脈カテーテルなどの体内に医療用人工物が存在する患者では、血流中に侵入した黄色ブドウ球菌が異物に定着して感染症を起こすことがあります。

石鹸の種類別による成分や作り方の違い


石鹸は界面活性剤の一種で、動植物のあぶら(油脂)をアルカリで煮て作られ、アルカリの種類により石鹸は2つに大きく分けられます。

・油脂を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で煮たもの:固形石鹸や粉石鹸になる。
・油脂を水酸化カリウム(苛性カリ)で煮たもの:ゼリー状の固体になる。

固形石鹸


もともと古くからあり現在も見かけるタイプで、市販の石鹸は脂肪酸のアルカリ塩(ナトリウム塩)を石鹸/界面活性剤としていることが多い。

洗浄補助剤として炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩などの無機塩類を含むものや金属封鎖剤であるキレートを含むものも存在します。

さらに、添加剤として香料や染料、グリセリン、天然油脂、ハーブ、ビタミンなどのほか保存料が加えられる石鹸のほか、逆に天然成分のみで昔ながらの手法で製造し、無添加を特徴にする石鹸も存在しています。

■ 界面活性剤
水と油は混ぜると一時的に混じりあいますが、放っておくと分離してしまい根本的に混じり合わない組み合わせです。

物質間の境目にあたる「界面」に作用してその性質を変化させる物質が界面活性剤です。

水と油の混合物に界面活性剤を加えると、水と油は分離せずに混じりあう「乳化」を起こし、洗剤はこの「乳化」の性質を利用して汚れを落としています。

泡石鹸


泡で出てくるタイプのハンドソープなどは、液体石鹸に泡立ちを良くするために含まれている起泡剤や泡保持剤などを加えたものです。

起泡剤や泡保持剤を溶解させるため、 さらに加水されていたりその他の化学成分が加えられています。

液体石鹸


界面活性剤が脂肪酸のカリウム塩を主成分としているものです。

脂肪酸のカリウム塩は常温でゼリー状・粘液状を呈するため適度に加水してあるものが製品となっています。

以前はココナツヤシを原料としたものなどが理髪店のシャンプーとしてよく使用されていました。

石鹸成分が多くなると容器内で固まってしまうために、石鹸成分は少なくなっております。

手洗いの際の石鹸の種類別メリット・デメリット


固形石鹸


■ メリット
3種の石鹸の中で最も石鹸/界面活性剤としての含有量が高く、洗浄効果が高い

■ デメリット
・学校などで不特定多数の人が同じ石鹸を使用する場合、固形石鹸では前に使っていた人の手の汚れなどが固形石鹸表面に残っていることがあり、衛生面が懸念される
・手のひらの上で水になじませつつ固形石鹸を溶かす手間がかかり、場合によってはその間、蛇口から流水したままの状態があるため節水の点で問題がある

泡石鹸


■ メリット
・3種の石鹸の中で最もすぐに手の洗浄を始めることができる
・手の上で泡立てる手間が少なくなる
・容器から直接、石鹸成分の泡で出てくることで、周囲に石鹸液が飛散しない
・手をすすぐ際に、洗浄成分がすぐに洗い流される
 
■ デメリット
・3種の石鹸の中で最も石鹸/界面活性剤としての含有量が低くそれに伴い洗浄効果が低い
・水や温水に濡れた手の上で容器より出てきた泡石鹸は速やかに消泡してゆく傾向が強く、実際に必要な量よりも少し使い過ぎになる
(石鹸を使い慣れている私たちは、手洗いの際「泡がまんべんなく手に付いているか、手をまんべんなくこすり洗いしたか」を目安にしているためと考えられる)

液体石鹸


■ メリット
・一般的に製造コストが固形石鹸より割安
・使いまわしても前に使っていた人の手の汚れなどが付着することが少ない
・手のひらで泡立てる時間が少ないので、蛇口から流水したままの状態の場合では節水になる
・ホテルなど宿泊施設では減った分だけ補充すればよい

■ デメリット
・純粋な石鹸成分(界面活性剤である脂肪酸のカリウム塩)の割合が製品全体の30%くらいと少なく、固形石鹸より洗浄力も落ちる
・周囲に石鹸液が飛散することがある

手洗いに有効な石鹸と手洗いの手順


石鹸の種類


自分だけが利用するのであれば、自分専用の固形石鹸の使用がよいと言えますが、社会生活を営む上で実際にそのような状況にいらっしゃる方は少ないと考えられます。

石鹸/界面活性剤の洗浄効果の観点から、液体石鹸を使用した手洗いが有効と考えられます。

手洗いの手順


医療従事者が実践している標準予防策(スタンダードプリコーション)に基づく手洗いを行い、手洗い後に速乾性の手指用アルコールジェル、または手指用アルコール液を擦り込むのが一番有効であろうと考えられます。

石鹸で手が荒れてしまう原因


医学的観点からは、石鹸製品に含まれるすべての成分ならびに手洗い方法が手荒れに繋がり得る、ということができます。

皮膚の乾燥


原理的に手に限らず皮膚は皮脂膜という油分に保護されているのですが、皮脂膜は石鹸製品を利用した洗浄で剝がされて皮脂膜の下にある角質の水分は乾いてしまい、皮膚が乾燥します。

油分を失って柔軟性が無くなった皮膚は、乾燥によって角質が硬くなってガサガサした荒れた状態となりこれが酷くなると痒みなども伴うのです。

石鹸製品が持つ界面活性剤の成分による皮脂膜の喪失といった要因以外にも、高い温度のお湯や勢いの強い水圧の水の使用によって皮脂膜はさらに失われますし、ハンドドライヤーを手洗い毎に使用すれば、乾燥による角質硬化傾向もさらに進んでしまいます。

化学物質の残存


石鹸製品に含まれる香料をはじめ、その他の化学物質の皮膚面上での残存が、接触性アレルギー性皮膚炎の誘因や手荒れの原因に成り得ます。

手荒れ対策


石鹸製品で手が荒れてしまう場合は、他の石鹸製品に変更したうえで手洗い方法の見直しや、ハンドクリームを使う習慣で対応してゆくのが現実的と考えられます。

正しい手洗いによる効果


医学的には正しい手洗いは接触感染の拡大を防ぐという効果が得られます。

医療現場や食品関連の現場はもとより日常の様々な場所で人の手は使われ、病原体にとっては拡大・伝播してゆくには接触感染は便利な手段になっています。

手には、表皮ブドウ球菌、アクネ菌、黄色ブドウ球菌の皮膚常在菌のほかにもノロウイルス、腸管出血性大腸菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、緑膿菌が付着していることがあります。

正しい手洗いは病原体が引き起こす様々な疾患を予防する最も有効な予防対策となるのです。

最後に建部先生から一言


石鹸の種類別メリット・デメリット等についてお話させていただきました。 手を石鹸製品できちんと洗って清潔を維持し感染を防ぐということは大切なことです。

しかし、その選択や方法を間違うと慢性的な手荒れの原因にもなってしまいます。 ひどい手荒れの場合は、お近く皮膚科を受診することをおすすめします。

また、石鹸製品に関して最近の企業の研究・商品開発の進化は著しく、概念を覆す石鹸製品、欠点をほぼ完全にカバーし得る石鹸製品も次々と登場してきているということを付け加えておきます。

(監修:医師 建部雄氏)

【監修:医師 建部 雄氏】
プロフィール)
京都市生まれ。社会人を経て医師を志す。2001年、昭和大学医学部医学科卒業。
卒後、東京都内の大規模総合病院にて救急科の経験を積む。

その後、阪神淡路大震災において内科医が避難所等で切実に必要とされていた事実を知り、より多くより幅広く患者さんに対応できる医師を目指して総合内科へ転向を決意。
急性期病院・クリニックの勤務を経て、最も身近な医師としての研鑽を積んでいる。
現在は、横浜市内の総合病院に勤務中。週末を中心に休日夜間の非常勤先病院 救急外来勤務をほぼ趣味としており、失敗も成功も含めて経験は豊富。