本格的なお花見シーズンが到来したが、この時期に合わせて患いやすいのがアルコール依存症だ。「大の酒好きだが、手が震えたりはしないから大丈夫」と言う人もいるが、実はあなたのちょっとした態度は、すでに依存症によるものかもしれないのだ。
 都内で医療総合クリニックを営む久富医院・久富茂樹院長は言う。
 「アルコール依存症と言われる患者さんは、暮れの忘年会や3〜4月のお花見などで、お酒に関して問題を起こし、家族や上司連れで受診することが多い。厄介なのは、他人に注意されるまで自分が病気であるという自覚がない人が多いことです」

 つまり、酒好きを公言している人の多くは、“自覚なきアルコール依存症”の患者とその予備軍である可能性が高いというのだ。
 「依存症の診断方法はいくつかあります。代表的なものは、『CAGEテスト』という飲酒状態の自己診断でいくつかの設問に回答し、一つ以上当てはまると依存症の疑いがあるというものです。しかし、設問に一つも当てはまらなくても注意する必要がある。この病は“否認の病気”とも言われ、患者さんの多くは認めることができず、嘘をつくことがあるからです。『週末にしかお酒を飲まない』と言いながら、平日にお酒のにおいをプンプンさせて来院する患者さんはいくらでもいます」(同)

 では、ここでいうアルコール依存症について触れておこう。正式には「アルコール使用障害」といい、薬物依存症の一種とされる。酒などのアルコール(特にエタノール)を飲むことによって得られる精神的、肉体的な薬理作用に強くとらわれ、自らの意思では飲酒行動をコントロールできなくなり、その行為を繰り返してしまう精神障害のことを言う。
 このアルコール依存症は、放置し続けると、例えば、仕事をさぼり失業や家族崩壊を招くだけでなく、肉体的にも肝臓や膵臓の病気に陥り、寿命を縮める怖い病気となる。

 別の専門家は、アルコール依存症の実態についてこう説明する。
 「医学的に言うと『強迫的飲酒』となります。少量のアルコールの摂取によっても脳がマヒしてしまい、飲み始めたら、その後の飲酒の制御がほぼ不可能となる。また、依存症の人も、適量のアルコールで済ませておこうとか、今日は飲まずにいようかと考えていることは多い。しかし、少しでも飲み始めてしまうと、アルコールの作用の方を選んでしまう。結局は、明確な禁酒の意志を持つことができず、アルコールによる快感を選んでしまい、酩酊するまで飲んでしまう状態です」

 強迫的飲酒が進むと、常にアルコールに酔った状態、体内にアルコールがある状態を求めるという。
 「飲まないと調子が出ないと思い始め、目が覚めている間は、飲んではいけない時であっても飲酒を続ける『連続飲酒発作』がしばしば起こることがあります。そして、勤務先などでもトイレに隠れて飲酒するようになる。やがて、体がアルコールを受けつけなくなるとしばらく断酒し、回復するとまた連続飲酒を続けるパターンを繰り返す『山型飲酒サイクル』に移行する。ここまで症状が進むと、かなり重度と言えます」(同)