第2戦・中国GPを前に、フェルナンド・アロンソのマクラーレン・ホンダ離脱説が再燃した。

 これまでに噂されてきた来季のメルセデスAMGやフェラーリへの移籍に加え、上海の木曜日にパドックでささやかれたのは、今季途中にも離脱して他チームへ移るのではないかという話だ。


移籍話が再燃して報道陣に囲まれるフェルナンド・アロンソ かねてからアロンソは、今季かぎりで切れるマクラーレン・ホンダとの契約のその後について「夏休みに考える」と言い続けてきた。ここで途中離脱説が急浮上したのは、メルボルンの現場で元F1ドライバーであり、アロンソと仲のいいマーク・ウェバーが「このままではフェルナンドはシーズン末までチームにいないかもしれない」とコメントしたのが扇情(せんじょう)的な見出しとともに報じられたからだ。

 上海の木曜日に報道陣に囲まれたアロンソは、これを一笑に付した。

「それは事実じゃないよ。その話は聞いたけど、外部の人があれこれ言うのはよくあることだ。元F1ドライバーや、果ては2輪のライダーなんかが『アロンソの苦境をどう思いますか?』と聞かれて答えるんだ。そういうのを聞くと、ユウウツだよ」

 しかし、アロンソに近い地元スペインのテレビ局『モビスタープラス』でレポーターを務めるアルベルト・ファブレハはこう証言する。

「フェルナンドは我々スペインメディアに対してもホンダの文句を言い続け、ホンダにプレッシャーをかけている。彼はホンダの次のアップデートの成果を見て、今後どれだけ期待できるかを計ろうとしているんだ。その結果によって、来季のチーム残留か移籍かを決めるつもりだ」

 世間ではメルセデスAMG、もしくはフェラーリという現行のトップチームが移籍先候補になると騒いでいるが、ファブレハは「それは難しいだろう」という。メルセデスAMGは1年契約のバルテリ・ボッタスの状況次第とはいえ、ルイス・ハミルトンの実力をよく知るアロンソがメルセデスAMGに移籍する可能性は低いと見ている。

 また、ある元フェラーリのエンジニアが「フェルナンドはフェラーリで政治的に立ち回りすぎた」と語るように、2014年10月の時点でマクラーレン・ホンダが本命として交渉していたのは、レッドブルで不遇をかこっていたセバスチャン・ベッテルのほう。しかし、ベッテルがフェラーリ入りを決めたため、アロンソに白羽の矢が立った経緯がある。つまり、フェラーリはアロンソよりもベッテルを選んだのだ。

 そんな過去もあり、アロンソのフェラーリ復帰の可能性も低いだろうと、ファブレハは見る。

「フェラーリへの復帰はあり得ないと思う。メルセデスAMGの状況にもよるが、移籍先として有力なのは、むしろルノーだと思う。今はまだ中団にいるが、フェルナンドもエンストン(ルノーの本拠地)の実力はよく知っているからね」

 来季の残留か移籍について聞かれると、アロンソは言葉を濁した。

「今は何も言うことはない。もっと先にすべき質問だよ」

 しかし、移籍も含めてあらゆる可能性を排除してはいないとも語り、含みを持たせた。

「何ごともあり得ないことはないよ、人生にはね」

 ファブレハの言うとおり、アロンソの決断がホンダのアップデートにかかっているとなれば、ホンダの責任は重大だ。開幕戦の前後に起きたマクラーレンとホンダの離別騒動、メルセデスAMGへのスイッチ騒動も、これと無関係ではない。

 ホンダの長谷川祐介F1総責任者の「新技術を投入した今季型パワーユニットの開発を簡単に考えすぎていた」というコメントが報じられ、日本中のファンを落胆させたが、どうやらこのコメント自体は事実であるものの、前後の文脈などを無視して本来の意味とはやや違ったニュアンスで引用されてしまったようだ。本来は「単気筒のテストで目標値を達成できた時点で、これ以降の開発は難しくないと考えた」という意味で述べたもので、単気筒からV6にした時点で想定どおりのパワーが出ず、そのままの実戦投入になってしまったということだ。

 一方でホンダは、一連の騒動の間にマクラーレン側と3度にわたって青山(ホンダの本社所在地)とウォーキング(マクラーレンの本拠地)で会談を持ち、HRD Sakuraの体制に変更を加えることを決め、これがマクラーレン側にとっても満足のいくものとなり、両者の関係は改善に向かったという。

 長谷川体制になってからはヨーロッパを中心とした外部の人材獲得も積極的に進めてきていたが、従来の体制では大企業ゆえの意思決定の遅さやサラリーマン的体質といったF1を戦ううえでの弊害があり、開発も運営もスムーズに進まなかった部分があったという。しかし、レースをよく知る人物をHRD Sakuraと青山本社の橋渡し役としてそのトップレベルに据えることで、トップダウンで物事がスムーズに進むようになった。

 ホンダ関係者によれば、この体制変更によってホンダ内にはかなりアグレッシブでレーシングな雰囲気が強くなったといい、「マクラーレンの提携解除騒動による外部からのプレッシャーによって、こうした組織再編が行なわれたことは、結果的に我々にとってよかったのかもしれない」という。

 とにかく、これによってどれだけホンダの開発スピードアップが進むかが、アロンソ去就のカギとなる。

 ホンダは中国GPに改良型のターボとMGU-H(※)を投入し(ストフェル・バンドーン車のみ)、2台ともにコンポーネント交換を必要としない範囲でICE(内燃機関エンジン)の吸気系に新たなモディファイ(部分的修正)を加えている。これは、当初の予定よりも前倒しで投入したものだと長谷川総責任者は言う。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 ただ、ICEそのものを換える大型アップデートについては、現時点ではさまざまな選択肢を検討・テストしている段階で、まだどのコンポーネントを投入するかは決め切れていないという。投入時期に関しては、1基目のICEのローテーションが終わる第5戦・スペインGPか、パワー負荷が極めて低い第6戦・モナコをスキップして第7戦・カナダGPへの投入を計画している。しかし、「できればそれ以前に、1戦でも早く投入したい」と長谷川F1総責任者は語る。

 アロンソがマクラーレン・ホンダ残留を決めるのか、早々に離脱の意思を固めてしまうのか――。その運命は、スペインGPかカナダGPに投入されるアップデートにかかってきそうだ。

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