世界トップクラスの国際リーグ、スーパーラグビーに日本から挑んでいるサンウルブズは、ナショナルチームの強化を目指してつくられた。今シーズンで2季目の参戦になるが、昨季はW杯イングランド大会後に慌しく発足。開幕前は戦術確認とレギュラー同士の連帯強化のみで手一杯の感があり、わずか1勝(13敗1分)に終わった。


今シーズン、いまだ勝ち星のないサンウルブズ その教訓を生かしてか、今季は比較的、周到な準備がなされた。ヘッドコーチは前回フォワードコーチだったフィロ・ティアティアが就任し、日本代表のコーチ陣3名も入閣。また、昨年秋に日本代表のヘッドコーチに就任したジェイミー・ジョセフも軍師役としてサンウルブズを支えることになった。

 2月に行なわれた開幕前の合宿では、ストレングス&コンディショニングコーチのサイモン・ジョーンズが選手たちにタフな走り込みを課した。2シーズン続けて参戦している右プロップの浅原拓真(東芝ブレイブルーパス)はこう話す。

「何となくですが、去年よりバタバタしなくなりました。良くも悪くも、相手の強さを知っていますから。一喜一憂しないような心の持っていき方ができるようになりました」

 プレーヤー陣も充実している。追加招集を含めた全56人中34人が日本代表キャップを保持。さらにキャプテンとなったエドワード・カークをはじめ、何人かの外国人たちは将来のジャパン入りを見据えてメンバー入りしている。

 ところが、いざフタを開けてみれば、サンウルブズは開幕5連敗と苦戦を強いられている。2月25日の東京・秩父宮ラグビー場でのオープニングゲームでは、ディフェンディングチャンピオンのハリケーンズに17-83で大敗。その後もシンガポール、南アフリカで計4試合を行なったが、いずれも敗れた。

 この結果に対しての受け止め方は人によって異なる。なかには、前向きに受け止めている人もいる。その理由は、アウエーなどのタフな環境のもと、若手選手が順調にキャリアアップしていることだ。

 世界ランク上位国の代表選手がひしめくスーパーラグビーで、台頭したひとりが江見翔太(サントリー・サンゴリアス)だ。ウイング、フルバックとして全試合に出場し、タックルされながら球をつなぐ”オフロードパス”はリーグトップの11本、ボールを持ったときの走行距離を示すランメーターは2位タイとなる407メートルを記録するなど、世界の一流選手たちと堂々と張り合った。

 また、庭井祐輔(キヤノン・イーグルス)の活躍も光った。174センチ、100キロと最前列のフッカーとしては小柄な体格ながら、2メートル級の選手が揃う南アフリカ勢とのぶつかり合いで何度も相手を押し込んだ。

 江見も庭井も、日本代表(15人制)経験のない選手たちである。次世代を担う選手たちが世界の舞台で才能を発揮し、そして課題を感じたことに、サンウルブズの存在意義がある。

 さらに、ジャパンと兼務する日本人スタッフも、たしかな手腕を発揮した。日々の練習計画を練る田邉淳コーチは、日本代表と同じ攻撃陣形を用いながら、ボールの運び方など試合ごとにマイナーチェンジ。敗れはしたが、3月12日のチーターズ戦では、多彩な角度でパスを交えてトライを演出するなど、計31点を奪ってみせた。

 スクラムに関しては、ヤマハで実績を積んできた長谷川慎コーチがまとめ上げた。時折、巨漢が揃う相手に押し込まれながらも、自軍のボールでは成功率100パーセントを誇った。

 このように明るい話題もあるサンウルブズに、長年のラグビー愛好家たちは熱い声援を送り続けている。彼らは日本代表の底上げという大義を知るだけに、「今年は勝敗を度外視する」といった声も聞こえてくる。

 しかし、一方でサンウルブズはプロのクラブチームである。チケット収入が運営を左右するだけに、「勝敗を度外視」とは言っても、やすやすとそれを受け入れるわけにはいかない。

 また、現在スーパーラグビーではチーム数の削減を検討中だという。来季は南アフリカ、オーストラリアのクラブが絞られ、参加数は18から15に変わる見通しだ。サンウルブズは契約上2020年まで参加できることになっているが、そのときまで今のような状況が続けば、それ以降についての議論が上がっても不思議ではない。

 サンウルブズは第7節を秩父宮で迎える。相手は第4節で敗れたブルズだ。本拠地でのリベンジマッチに際し、フルバックの松島幸太朗(サントリー・サンゴリアス)は次のように語る。

「いい試合をしよう、ではなく、勝ちたいという気持ちをより出していきたいです。ニュージーランドのチームを相手にしても、怯むのではなく、楽しむということを形にしていきたい」
 

 タックルと運動量の光るプロップの稲垣啓太(パナソニック・ワイルドナイツ)も、「いい感じ。アジリティ(俊敏性)の部分も問題ないと思います」と応じる。
 
 サンウルブズは防御に泣いている。タックル成功率は、全18チーム中最下位の77.8%だ。

 ディフェンスコーチのベン・へリングは、体格に劣る日本にマッチしているからという理由で、国内であまり採用されていない守備システムを提唱。接点の周りに左右3人ずつタックラーが並び、そのいちばん外側の選手が鋭く接点方向へせり上がる。ぶつかり合いが生じたところへ、2番目にあたる選手が援護射撃を放つ……というわけだ。

 へリングも「グラウンド上でヒートアップしているときにコンセプトを遂行できるのかどうか」と懸念していたが、実際、飛び出したタックラーの脇の隙間をえぐられるケースが多く、まさにサンウルブズの弱点となっている。稲垣は言う。

「修正するとしたら、ディフェンスのコミュニケーション。ラックの位置から順に、1、2、3番目に立つ人がそれぞれ誰を見るのか。特に2と3の間がチグハグなんです。まずは試合に出て、感じたことを周りの人に還元できたらいいなと思います」

 いまだ未勝利だが、ティアティアヘッドコーチは選手たちの成長を認めている。次はその成果を結果として示したいところだ。今節から復帰する選手も多く、激しいポジション争いが予想される。競争を経て編成されたベストメンバーを従え、勝利をもぎ取りたい。

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