ホームレスが大勢いる「日雇い労働者の街」というイメージが前面に出ている大阪市西成区、通称「あいりん地区」。実は、格安のB級グルメの聖地としての、もう1つの顔を持つ。今回、西成で特に人気の有名店を中心に、西成グルメの現状をレポートする。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)

安くて美味いB級グルメの聖地
西成の「もう1つの顔」

 大阪市西成区・あいりん地区――ともすれば「日雇い労働者の街」としての一面だけが取り上げられるここは、今、安くて美味いモノを求める「グルメ」たちが集う場所でもある。そんな「B級グルメ街」でもある“西成”を取材した。

「こらっ、こらっ〜。写真撮るなら店だけやで!人の顔は絶対に写すなよ!うちら指名手配かかっとるさかいな!!」

 西成では「誰もが知っている有名店」(地元住民)、ホルモンうどん・そば店の「きらく」の外観を記者が撮影していた時のことだった。その隣にある露店の焼き鳥屋で呑んでいる客と店の大将から声掛けされた。

 その口調は正直、ちょっと怖かった。でも、どこか温かい。今、世代を問わず西成に「魅せられる」人が多いという。それはこの西成に住む人たちの剥き出しの「人情」に触れられるからかもしれない。

 店の外観を撮影しているだけだと伝えて非礼を詫びると、店の大将と3人の客は一転して優しい口調になり、「何の取材や?」と興味津々といった様子で聞いてきた。

「いや、西成で安くて美味しいところ……、できたら、ほら、ネットで全国区になってる目立つところやのうて、地元の人しか知らんようなところを紹介させてもらいたい思いまして。どっかないですか?」

 すると、露店の客たちは、「そしたらここや!」という。早速、話を聞こうと記者がメモを取り出すと、その中のひとりで70歳代と思しき客が、ゆっくりと静かに諭すような口調で言った。

「あのな、西成のええところはな『人と触れ合い』や。呑んで、食って、話して。そら喧嘩になることもあるよ。もちろん売られた喧嘩は男なら買わなあかん。せやけど喧嘩しても、次、会ったら、仲良く話せる。マスコミに取り上げてもろうて大勢の客が来たら、俺ら、折角の仲間が来られへんようになるやんか……」

 そして、こう付け加えた。「でも、大勢のお客さん来てくれたら嬉しいけどな」。

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