注目のエントリークラス一眼レフ、キヤノン EOS Kiss X9iとEOS 9000Dが4月7日に同時発売。この2機種は、画素数や連写性能といった基本スペックがほぼ同じのため、どちらを買ったらいいか悩んでしまうケースも多いだろう。そこで、今回は単純なスペックに表れない両者の違いについて触れつつ、実際の操作性や進化点、実写結果などについてレポートする。

↑EOS 9000D(左)とEOS Kiss X9i。どちらもボディ単体での発売のほか、EF-S18-135 IS USM レンズキットとダブルズームキットが用意されている

 

中級機に迫る隙のない基本性能

まずは2機種共通の基本スペックを確認してみよう。撮像素子は有効約2420万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーで、ライブビュー撮影時のAFが高速な「デュアルピクセルCMOS AF」に対応。ファインダー使用時のAFは、測距点が45点で画面の広い範囲でAFが可能だ。連写は約6コマ/秒と十分な速さで、動きモノ撮影にも対応しやすい。常用ISO感度は最高25600と高めだ。

 

また、スマホなどとWi-Fi接続が可能なほか、Bluetooth接続にも対応。省電力でスマホとの常時接続が可能なので、SNSなどへの画像アップもスムーズに行える。スマホとの接続作業も、NFC対応なのでスマホにNFC機能があればカメラにスマホを近づけるだけで行える。

↑EOS 9000D/EOS Kiss X9iの基本スペック。ご覧のとおり、重さがわずかに違う程度で、ほとんどの項目は同じだ。価格は9000Dのほうが約1万円高い

 

従来モデルのEOS Kiss X8iやEOS 8000Dと比較すると、撮像素子の画素数は同様だが、新たに「デュアルピクセルCMOS AF」に対応したのが大きなトピック。また、映像エンジンが「DIGIC6」から「DIGIC7」なったことなどにより、高感度性能や連写性能などがアップしている。そのほか、AF測距点数や連写性能、動画性能もそれぞれ向上し、ますます隙のない入門機に仕上がっている。

↑ユーザーインターフェースもわかりやすく進化。シーンモード選択時に作例写真が表示されるようになったほか、露出補正などを行った際に「明るく」「暗く」といった効果が表示され、初心者でもより扱いやすくなっている

 

新モデルのスペックは上位機種(中級機)のEOS 80Dに近く、常用ISO感度やBluetooth接続対応など、一部の機能に関しては80Dを凌ぐほど。そうした点を考えると、新モデルの2機種は“中級機並みに使える”実力派の入門機といえるだろう。

 

基本性能は同じ、違いは操作性にアリ!

ここからは両者の違いについてみていこう。まず、ボディ上面を見ると、Kiss X9iには右手側に撮影モードダイヤルと3つの機能ボタン、電源スイッチがあるのに対し、9000Dは撮影モードダイヤルや電源スイッチを左手側に配置。右手側には、液晶パネルと3種類の機能ボタンが配置されている。

↑EOS Kiss X9iの上面

 

↑EOS 9000Dの天面

 

背面の違いを見ると、Kiss X9iが右手側に十字キーが配置されているのに対し、9000Dでは各種機能の割り当てられたボタンの周囲に「サブ電子ダイヤル」を装備する。これらが、操作性の違いに大きく影響している。

↑EOS Kiss X9iの背面

 

↑EOS 9000Dの背面

 

同社が「かんたん撮影ゾーン」と呼ぶ、全自動やシーンモードで撮る場合は、撮影モードダイヤルをセットするだけなので操作性はそれほど変わらない。一方で、絞り優先AEといった「応用撮影ゾーン」では、絞りやシャッター速度、AF測距点、露出補正などを変えながら撮影することになるため、操作性の違いが大きく出る。

 

例えば、露出補正を行う場合、Kiss X9iでは露出補正ボタンを押して、コマンドダイヤルを操作するという2アクションなのに対して、9000Dでは、シャッターボタン半押し後はサブ電子ダイヤルを用いることで1アクションで補正が行える。全体的に各機能が撮影しながら素早く変更できるという点では、9000Dのほうが優位だ。

↑夕焼けを撮影。そのままでは、明るくなって夕焼けの色が淡くなってしまうので、露出補正で画面全体を暗めにして写している。撮影中に何度も細かく設定を調整するという人であれば9000Dの操作性のほうが相性がいいだろう

 

サブ電子ダイヤルは、再生画面で画像を切り替えたり、メニュー画面で機能を選んだりする際にも便利。総じて9000Dのほうが上位モデルに近い操作系だといえる。一方、撮影中にそこまで設定を変えないのであればKiss X9iでも不都合は感じない。価格差を踏まえ、自分の撮影スタイルに合ったほうを選択するとよいだろう。

 

画質はどうなの? 実写でチェック!

EOS Kiss X9iとEOS 9000Dの絵作りは、ほぼ共通といえる。ということで、ここから先の作例は主にEOS 9000Dを使い実写してみた。

 

まずは、全自動の「シーンインテリジェントオート」を試してみた。このモードでは、カメラが撮影シーンを自動判別してシーンに最適な設定に合わせてくれる。多くのシーンで失敗なく撮影でき、初心者には特に心強いモードだ。ただし、光量が足りないとフラッシュが自動発光するので、フラッシュ発光禁止の場所などでは注意したい。今回の実写での仕上がりは、露出の過不足もなく色再現も満足のいくものであった。

↑気軽に撮るならこの「シーンインテリジェントオート」が最適。細かい設定を行うことなく、最適な露出や色再現で撮影できる

 

続いて、今回の2機種では連写が約6コマ/秒になったということで動体撮影に挑戦。これは中級機に肩を並べるスペックで、実際にペリカンの羽ばたく様子を連写してみても大きな不満はなかった。ただ、連写し続けると連写途中で速度が低下するので、連写開始のタイミングを見計らう必要はある。とはいえ、そうした現象は中級機以上でも多かれ少なかれ発生するので、このカメラのデメリットということではない。

↑よほど高速で動く被写体でなければ、約6コマ/秒の高速連写を用いれば瞬間を捉えられる。動きモノはシャッター速度を1/500秒以上に設定しないと、連写で瞬間が捉えられても、ぶれた写真になりやすい。ISO感度を上げて、速いシャッター速度で撮影しよう

 

約6コマ/秒の連写と45点AFの組み合わせは非常に使いやすく、従来モデルに比べて動きモノが格段に撮りやすくなった。45点AFにより、画面の広い範囲でピント合わせができ、フレーミングが容易で正確なピントが得られる。下の写真では、ゾーンAFで画面右下を選択。羽をばたつかせるチョウにピントを合わせ続けながら撮影することができた。

↑シャッターボタンを半押ししている間、ピントを合わせ続けてくれる「AIサーボAF」を使用し、ゾーンAFで画面右下のエリアを選択。羽などを動かすチョウにピントを合わせ続けることができた

 

また、ライブビュー撮影時は「デュアルピクセルCMOS AF」が機能し、画面の広い範囲で素早いAFが可能。タッチ操作やタッチシャッターにも対応し、直感的に撮影することもできる。バリアングル液晶の採用で撮影アングルの自由度も高い。

↑タッチシャッター機能を使ってイチゴのタルトを撮影。ピントを合わせたい位置をタッチするだけで撮影でき、ピントも正確だ

 

↑撮影画像の再生時は、スワイプ操作による画像送りのほか、ピンチ イン/アウトによる画像の拡大・縮小も行える

 

また、常用の最高感度がISO25600までアップした点にも注目だ。ノイズリダクションが強力で、高感度でもノイズの少ない写真が撮れる。しかも、高感度でも解像感の低下などが起こりにくい。下の写真では、ISO12800で絞りをF8まで絞り、画面全体をできるだけシャープに写してみた。キットレンズ「EF-S18-135 IS USM」の手ブレ補正も強力で、手持ちでの夜景撮影が問題なく行えた。

↑ISO12800で手持ち撮影。F8まで絞ったことで、手前から奥までシャープに描写できた。それでもシャッター速度は遅めだが、キットレンズの手ブレ補正機能に助けられ、ブレのない写真が撮れた

 

性能的にはほぼ同じといえるEOS Kiss X9i/9000Dだが、操作性に違いがあるため、カメラとしての印象はやや異なる。どちらも入門機という位置付けではあるが、操作性がシンプルで価格も1万円ほど安いKiss X9iは初めて一眼カメラを手にする初級者向け、操作性が上位機に近い9000Dは初級者から中級者、あるいは上級者のサブカメラまで、幅広いユーザーに対応しうるカメラという印象だ。

 

いずれも、絵作りの面ではEOSシリーズ共通の忠実な色再現が得られ、映像エンジン「DIGIC7」による優れた高感度性能、2420万画素CMOSセンサーによる高い解像感が得られるのが魅力的。AFも高速でストレスなく撮影が楽しめ、コスパも含めて誰が使っても満足度の高いカメラといえるだろう。