真摯に役と向き合う姿勢を貫く

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 士郎正宗氏によるSF漫画「攻殻機動隊」をハリウッド実写化した「ゴースト・イン・ザ・シェル」(公開中)の主演女優スカーレット・ヨハンソンが来日し、脳とわずかな記憶を残して肉体が機械化された主人公の捜査官・少佐役の役作りについて語った。

 少佐が所属する捜査組織“公安9課”を束ねる荒巻役のビートたけしをはじめ、泉原豊、桃井かおり、福島リラ、山本花織といった日本人キャストも多く出演する本作。社会を混乱に陥れるサイバーテロ事件を捜査する少佐が、自身の過去に秘められた衝撃の事実を知る。

 1994年に「ノース ちいさな旅人」で映画デビューした10歳の少女は、今やハリウッドを背負って立つ大女優に成長した。ウッディ・アレン、ソフィア・コッポラ、クリストファー・ノーランら、さまざまな監督のもとで存在感を発揮し、「アベンジャーズ」ではアクション女優としての地位を確立。2016年には最も収益を上げた俳優に輝き、向かうところ敵なしに思えるが、3月16日に行われた本作の来日会見では「攻殻機動隊」の世界的な人気の高さから、主人公を演じるには「怖気づくところがあった」とプレッシャーを吐露した。

 少佐(原作では草薙素子)は世界中にファンを持つ人気コンテンツの主人公であり、人間離れした身体能力を持ち、脳と体が“別物”であることに苦悩し、自分の過去を探し求める複雑なキャラクターでもある。そんな難役に果敢に挑戦したのは、ひとえに“観客に楽しんでもらいたい”という純粋な思いから。「私自身は、みんなに楽しんでもらえるように作っている。そのなかで観客が自己を投影してくれたり感動してくれるのは、私にとってボーナスのようなものなのよ」とほほ笑むヨハンソンからは、少佐にも通じる凛(りん)とした強さが感じ取られる。新規ファン・原作ファン双方に向けて「原作を知らない方々は、“こうあるべきだ”という固定概念がない。新鮮な体験としてこの世界の中に逃避して、没頭して、娯楽として楽しんでもらいたいわ。一方、原作ファンの方々には、私たちがどれだけ原作に敬意を表して作ったかを見てほしい」と語った。

 では、実際に少佐を演じるに当たり、ヨハンソンはどのようなアプローチで挑んだのか。「少佐は脳と機械の体を持った人物。私はまず、3つの要素を考えたの。心理学的なものになるのだけれど、イド(動物的本能)、自我、超自我(ルールやしつけ)よ(編注:精神学者ジークムント・フロイトが提唱した人の心を形成する3要素)。それらを意識したなかで、彼女は自分が誰だと思っていたかというところと、今彼女はどうあるべきなのかという状態と、実際にどうであったかということを考えていき、そののちにさまざまな体験・経験から理解を進めていった。物語が進んでいくと、少佐は“自分は体験・経験の産物である”と理解するようになり、自分はこういうものだと受け入れていく。こういった考え方が役作りの面ですごく役立ったわ」と内面の役作りについて解説する。

 ヨハンソンは続いて、肉体的な役作りについて詳細を明かす。「脳の中に、信号を伝達する上でちょっとすき間があるんじゃないかと考えたの。思考として、頭から体に何か指示を送るときに脳神経が完全につながっていない。少佐は何か行動を起こすとき、つまり脳から指令を出すときには必ず目的や意図が明確にある人物。だから、彼女の脳はどこに行く・何をするというのを正確に伝えないといけない。でも、指示から行動に移すまでに少し空白がある。そういったことを模索しながら演じ始めて数週間がたって、自分として快感を得られ、それがなじんで彼女の個性になっていったわ」。

 ヨハンソンの話しぶりからは、理論に裏打ちされた緻密な演技プランがうかがえる。アクションシーンへの挑み方についても「いかに効率よく安全に臨むかも大切。その上で、専門的な演技をちゃんとしなくてはいけない。ほかのキャストを待たせたりしないように、ちゃんと確認してリハを重ねて、常に学んでいるわ」と生真面目な性格をのぞかせる。手錠でポールにつながれた状態で敵と戦うアクションシーンを挙げて「とても狭い空間で3人と格闘するシーンで、タイミングと振りがすべてだった。あのシーンは最初から最後まで全部私が演じているわ。それは自分にとってもすごく誇りに思っているの」と手ごたえをにじませた。