山田教授(写真右)と富田准教授(同左)。共に三重大学教育学部で教鞭をとる/(C)KADOKAWA / photo by 山下恭平

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1949(昭和24)年に建学した、三重県津市にある三重大学。人文学部、教育学部、医学部、工学部、生物資源学部に地域イノベーション学研究科を加えた5つの学部、6つの研究科、そのほか多くの学内共同教育研究施設を擁する国公立大学です。そんな三重大学の教育学部・山田康彦教授と富田昌平准教授、2人の専門家に、幼児教育の大切さと取り組み方を聞いてきました。幼少期の経験がその後の人生に与える影響、実はすごく大きいんです!

【写真を見る】大学の広報的な役割も担うという山田教授。鈴鹿サーキットとのプロジェクトでは、全体を統括した/(C)KADOKAWA / photo by 山下恭平

■ “遊び上手”は“切り替え上手”!

ちょっとした失敗でくよくよしたり、友達とケンカしてしまって落ち込んだり…。これって大人も子どもも同じですよね。そんなときはすぐに気持ちを切り替えるのが一番です!この切り替え上手な性格は、幼児教育を通して育むことができるんです。ちなみに、切り替え上手かどうかを見分ける方法もあるとか。2児のパパでもある富田准教授が、実体験を通して教えてくれました!

「見知らぬ大人を見て、パンチやキックをしてじゃれ合ってくる子どもって多いですよね。最初はやられ役になって遊んであげますが、ある瞬間を境に今度は大人が抱え込むなど反撃する側に回ります。すると子どもはどういう反応を示すでしょう?」(富田)

実際に試してみると、今度はやられ役に転じて楽しむ子どもと、それでもパンチやキックを続けたがる子ども、この2タイプに分かれることがわかります。この場合、やられ役を楽しめる子どもが、切り替え上手である傾向が多いと富田准教授は説明します。

「やられ役を楽しめる子どもは、『自分にはこんな役割もあるんだ』と理解できている証拠です。切り替え上手だと感じますし、ゆくゆくは環境への順応力や適応力につながっていくと思います。こうした一面は幼少期に行う“ごっこ遊び”を通じて、感覚として身に付けることができるんです」(富田)

■ 思い切って子どもに“遊びを保証”してあげましょう!

幼児教育では、「子どもたちに『遊びを保証してあげること』が大切だと考えています」と山田教授は話します。

「体を使った遊びは、思考力や身体能力だけでなく、ものに働きかけていく力、人と関わるコミュニケーション能力、身体のバランスの調整力など、総合的にさまざまな力を育んでくれます」(山田)

そこで大切なのが「遊びを保証してあげる」ということ。つまりは子どもが安心してのびのびと遊べるような環境です。転んでも大丈夫、散らかしても大丈夫。イタズラしても怒りません。そんな環境です。

「こんな行動をしたらこんな結果になる。そうした関係性を頭で理解するのは、一般的に4歳以降と言われています。例えば、飲み物が入った容器を傾けたらこぼれるとか、大人は頭で理解できますよね。でも、幼児は実際に体を動かして、見て、触って、確かめて…。そうした実体験を通して物事を直感で理解していきます」(富田)

安心してのびのび遊べる環境を用意することで、幼児は自分で考えて行動するようになります。それは、なるべく大人に干渉されない環境がベスト!

「幼児教育では、自主性や能動性を大切に考えています。つまり、自主性や能動性を安心して発揮できる環境を用意してあげることですね」(富田)

ちなみに、自主性や能動性を発揮することは行動意欲の向上につながるそうです。自分で考えて確かめようとする習慣が身に付けば、受験勉強の時期が来ても苦労しないかも!?

■ 体をタッチ!それって案外、大切!

冒頭の“ごっこ遊び”について、富田准教授は「いろいろな役割を演じることで『こうした立場もあるんだ』と知ることができます」と説明します。なるほど、それが切り替え上手につながるというわけ!

「幼児期の子どもが意欲的に何かを学ぶうえで、“ごっこ”的な要素は不可欠だと言ってもいいですし、意欲的に学ぼうとした時、子どもはとても創造的な存在にもなります」(富田)

また、誰かと遊んだり、体を使ってコミュニケーションを取ったりすることも幼児教育では大切とのこと。

「友達や両親、公園などで出会った知らない子どもでも構いません。誰かと一緒に遊ぶことは、子どもが協調性を育むうえで欠かせない時間です。『誰かと関わって楽しかった』という記憶が体験として残りますから。パパやママが近くにいてあげて、安心感を与えることも大切ですね」(山田)

体を使ったコミュニケーションについては、先ほど富田准教授が説明した「実体験を通して物事を直感で理解していく」につながってきます。大人は会話でコミュニケーションを図りますが、小さな子どもは触ったりくすぐりあったりして「楽しい」と感じることがほとんどです。だから「言葉よりも体で触れ合って楽しさを感じてもらうことが大切。これはお家でパパやママにもできることですね」と山田教授は話します。ちなみに美術への造詣の深い山田教授は「お絵描きも想像力を磨くのに役立つんですよ」と教えてくれました!

そんな山田康彦教授と富田昌平准教授の幼児教育に関するアイデアが盛り込まれた「ぶんぶんばちひろば」というキッズ向けの施設が、この春、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットに誕生しました。遊びながら幼児教育ができる、そんな同施設に注目してみては?先生方、貴重なお話をありがとうございました!【東海ウォーカー】