日本代表経験も豊富なMF細貝萌が、ドイツ・ブンデスリーガ2部のシュツットガルトから、J1の柏レイソルへ電撃移籍。7シーズンぶりにJリーグへ復帰した。

 細貝は、移籍後初戦となったJ1第5節サンフレッチェ広島戦で早くもベンチ入りすると、後半87分から途中出場。わずかな出場時間ではあったが、柏の下平隆宏監督が「完封で終えられて満足」と語った2-0の勝利に貢献した。

「かなり久しぶりのJリーグのピッチ。合流して5日目なのに、監督が使ってくれたことがうれしい」

 試合後、細貝はそう話していたが、即戦力としての期待を裏づける「移籍、即起用」だった。


国内復帰を果たし、柏レイソルに加入した細貝萌(左) 最近は、ヨーロッパへ渡る日本人選手が増える一方で、ヨーロッパからJクラブに復帰する選手も増えた。かつては「都落ち」のイメージも少なからずあったJリーグ復帰だが、試合に出なければ選手としてサビつきかねない以上、当然の選択肢だろう。

 また、海外でのプレーを経験した選手が日本に戻り、チームに大きな影響を与えるケースも少なくない。少し遡(さかのぼ)れば、名波浩に始まり、小笠原満男、中村俊輔といった選手が帰国後にひと皮むけたプレーぶりを見せ、所属クラブを牽引してきた。周囲への影響という意味でも、海外組のJリーグ復帰は悪くない選択肢だと言っていい。

 柏の場合、22歳のGK中村航輔、21歳のDF中谷進之介、20歳のDF中山雄太など、Jリーグでは異例と言っていいほど若い選手がセンターラインにそろっている。その他にも自前の育成組織から育ってきた選手が多く、先に挙げた広島戦では、先発メンバー11名の平均年齢が24歳という若さだった。

 だが、ただ若くしてデビューするだけでは意味がない。高いレベルでの実戦経験を重ねることが成長につながり、さらには自信につながってこそ、だ。今季の柏が第2節から4節まで3連敗を喫しているように、負けが続いて泥沼にハマれば自信を失い、むしろ若いチームであることが裏目に出てしまいかねない。

 だからこそ、細貝のような経験豊富な選手が価値を持つ。

 しかも、細貝のプレースタイルが、決してテクニシャンではなく、激しくボールを奪いにいけるファイターであるという点も、若い柏にとっては大きいだろう。

 例えば、J1第2節ガンバ大阪戦。柏はこの試合、ガンバのパワフルで出足の鋭いプレスの前にほとんど何もさせてもらえず、1-3と力負けした。

 柏は育成組織から一貫してテクニックを重視しており、U-18のユースチームなどを見ていても、実にうまくパスをつないで攻撃を組み立てる。トップチームに昇格してくる選手にも、技術に長(た)けた選手が多い。

 だが、優れたテクニックを持つチームは、ガンバのプレスにあっさりとねじ伏せられた。もしもそこに細貝がいたら、自ら先頭に立って1対1の局面で負けない姿勢を示し、若い選手を鼓舞し、少なからず試合の流れを変えられたのではないか。そんな試合だった。

 実際、細貝自身も移籍先を探るにあたり、オファーのあった複数のJクラブについて、すべて試合映像をチェックしたという。もちろん、そのなかにはこのガンバ戦も含まれていた。

 細貝にしても、30歳にしてJリーグ復帰を決断する以上、ゆっくりと時間をかけてチームに馴染み、それから試合に出られるようになればいいと考えていたはずはない。

 即戦力として活躍するために、自分にとって最適な移籍先はどこなのか。そう考えていた細貝がガンバ戦を見て、柏における自らの存在意義を見出したとしても不思議はない。

 もちろん、ドイツで多くの実績を残しているとはいえ、細貝にポジションが約束されているわけではない。本人も「自分の力でチームの信頼を勝ち取っていかないといけない」と、競争を覚悟している。

 それでも、細貝が「若い選手が多いので、内容も含め、結果が出るように、その助けになれるようにしたい」と話しているように、若くテクニカルなチームにあって、彼のような選手が有効なアクセントとなるのは間違いないだろう。

 年齢的にもプレースタイル的にも、細貝は柏における、いわば”異分子”だと言っていい。しかし、だからこそ、周囲とうまく化学反応を起こすことができれば、柏という若いチームが大きく変わることにつながるはずだ。

 キャプテンのMF大谷秀和は広島戦後、「危機感は持っている。上位を目指してやっているので、この順位には満足できない(第5節終了時点、12位)」としつつ、連敗を止めたことについては「勝ちで(W杯最終予選による中断明けを)スタートできたのはよかった」と笑顔を見せた。

 新たに「戦えるボランチ」というピースを加え、白星からリスタートした柏。若さと脆さが同居していたチームが今後、どんな変化を見せていくのか、注目したい。

■海外サッカー 記事一覧>>