TOSHI-LOW × ILL-BOSSTINO(写真=石川真魚)

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 BRAHMANが、4月12日にニューシングル『不倶戴天 -フグタイテン-』をリリースする。同作品は、「ともにこの世に生きられない、また、生かしてはおけない と思うほど恨み・怒りの深いこと。また、その間柄」(「デジタル大辞泉」より)という意味の四字熟語をタイトルに冠した3曲入りの作品。その中に収録されている「ラストダンス」は、今年、結成20周年を迎えたTHA BLUE HERBのMC、ILL-BOSSTINOとの一曲。2011年3月11日に発生した、東日本大震災による原発事故から6年が経った今だからこそ発せられるべきサウンドとリリックが込められている。

 今回リアルサウンドでは、その「ラストダンス」についてBRAHMANのTOSHI-LOWとILL-BOSSTINOの対談を行なった。楽曲を制作するに至った経緯や楽曲に込められた6年目のメッセージ、そして音楽として何を表現するか……そこには、両者が辿ってきたシーンの中での存在意義、宿命としての言葉が残されていた。(編集部)

「ここで一発、正真正銘本物のメッセージってやつを叩きつけてやりたい」(ILL-BOSSTINO)

一一以前、2013年に『PRAYERS』が出たとき、取材の帰りがけBOSSから「TOSHI-LOWに早くやろうって言っといて」と伝言をもらったんですよ。

ILL-BOSSTINO(以下BOSS):はははは! やべぇ。俺、その頃からもうTOSHI-LOWと曲やりたいって言ってたんだね(笑)。

一一コラボの話は、当時からあったんですか。

BOSS:一緒に何か作ろうっていう話は、たぶん普通に、どこでも出てくる酒の席の話として昔からあったよね?

TOSHI-LOW:うん。俺らもやりたかった。ただ、具体的にやろうってなったのは3年前だよね。札幌行った時、スープカレーの店連れてってもらったのよ。その時に最初のリリックもらったんだよね。書かれてる内容は今とはだいぶ違うんだけど。

BOSS:そうだね。でもテーマは最初からこれだった。

TOSHI-LOW:ただ俺らとしては、どういうサウンドにしたらいいのか頭が全然まとまらなかった。自分たちが得意な音とBOSSの声があって、どうやったら喧嘩しないで作れるか。やっぱり作るならいいもの作りたいじゃない?

一一ハードで男臭いBRAHMANの音と、囁くように迫ってくるBOSSの声は、ただ正面から掛け合わせても面白くないのではないか、と。

TOSHI-LOW:そうそう。90年代のラウドロック✕ヒップホップのミクスチャーみたいになっちゃうのは避けたかったし。だったらむしろOAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)の静かな音のほうがいいんじゃないか、とか考えちゃって。

BOSS:「ピアノ練習する」とか言ってたよね(笑)。

TOSHI-LOW:「オーケストラのほうが合うんじゃねぇか?」とか(笑)。よくよくリリック読んだら全然そんなんじゃないんだけど(笑)。

BOSS:俺的にはTOSHI-LOWがちゃんと受け取ってくれて、真面目にどうやろうかって考えてくれてるんだなって感じてはいたよ。

一一そこからしばらく止まっていた話が、一気に動き出したのが昨年の暮れですよね。

TOSHI-LOW:うん。いきなり「あれはお前らのこと書いたわけじゃないからな?」って意味深なメールが来たの。ほら、BOSSはOLEDICKFOGGYとコラボやったじゃない? あの曲の最後に〈やらねぇなら もう待たせんな〉みたいなリリックがあって。「あれはBRAHMANのことじゃないから。違うからね」って。こっちは全然、そんなこと考えてもみなかったんだけど(笑)。

BOSS:でもいろいろ勘繰られたら嫌だからさ。この業界、一番怖いのは勘繰りなの。ほんとにそうは思ってないのに、下手に勘繰られちゃってグチャグチャになってきたこと、もう数え切れないくらいあるから。気になった状態のまま年を越したくなくて(笑)。でも、そのメールによってTOSHI-LOWがちょっとメラッときて、「やろうよ!」ってなったのは俺にとって予想外だった。

TOSHI-LOW:まず、待たせてるうえにそんなメールを送らせてしまったことが心から申し訳なかったし、その思いのまま、本気でどうやったら具体化できるか考えたの。それまでピアノがいいとかオーケストラだとか思ってたけど、でも、今やりたい、じゃあ今自分の掌にあるものを使うしかないってことをようやく考え出して。そしたら、今の自分たちが持ってるものは3年前と同じではなかったわけ。ちょうど作りかけのちょっとブルージーな曲があったから「この曲にBOSSの声が乗ったらどう思う?」っていう話をみんなにして。したら、みんな一瞬でグワッと火がついて。そこからは早かったよ。

BOSS:うん。TOSHI-LOWからトラックが送られてきて、俺も「あ、これでやろう」ってスンナリ入ってきた。

一一リリックのテーマは3年前から決まっていたそうですが、なぜ、原発事故のことをこのコラボで歌おうと?

BOSS:自分でもそういう曲を歌ってはいるし、まぁ届いていないとは思ってないんだけど。でも、やっぱTOSHI-LOWたちは『東北ライブハウス大作戦』も含めて、音楽に限らず物資も送ったり、ダイレクトに地元と繋がってるから。そういう人たちのライブや行動自体がすごくインスピレーションになったし、俺ももっと踏み込んだ言葉を発してみたいってずっと思ってた。お互いカウンターカルチャーの音楽をやってるし、同じ方向を見てることも何年も前から知っていたので。今、どんどん問題が風化していく中で、ここで一発、正真正銘本物のメッセージってやつを叩きつけてやりたい。それをやるならBRAHMANとやるのが一番エネルギーも放出されるし、このチャンスを逃したくないって、俺自身が強く思ってたから。

TOSHI-LOW:俺もそう。だってウチとBOSSでやって〈ゴハン何でしたか?〉みたいな歌詞だったら、もうアウトだと思うよ(笑)。

BOSS:それで『サザエさん』みたいな曲になってたら……それはそれで凄かったけどね(笑)。そういう振り幅、なかったねぇ。

TOSHI-LOW:ないねぇ〜(笑)。

BOSS:俺らの限界はそこだった(笑)。

一一ここで笑えてるから、大丈夫です(笑)。

TOSHI-LOW:でもさ、3年前にもらった最初のリリックは、もっとエグいというか、より明確に原発反対って書いてたの。それこそ〈全員吊るし上げろ!〉〈闘って全部ぶっ潰そうぜ!〉ぐらいに感じられるものだった。でも「ラストダンス」はそれだけじゃなくて、廻り廻って自分たちのことを見つめているし、賛成反対を超えたうえで今を生きてかなきゃいけないってことが書かれていて。だから、あれから何年か経ったことが良かったんだと思う。もちろん問題は何も変わらずそこにあるんだけど。

BOSS:それを受け止める人間の変化だよね。最初のある種のショック状態から、より複合的に見れるようになった。だからこれは6年目のメッセージだね。6年目の原発事故に対しての言葉。

「足が動く、自然と気持ちが熱くなる、その先にメッセージが入っていく」(TOSHI-LOW)

一一そこでキーワードになってくるのが〈踊れ〉という言葉です。

TOSHI-LOW:現に法律でダンス風営法とか、あとは海でお酒飲めないとか、そういう現実があるじゃない? 俺たちが子供の頃に見てた世の中とは全然違うものになってきて、これでほんとに踊れなくなったら音楽やってる人たちなんか終わりだよね。でも終わりでも、それでもきっと俺らは踊るんだろうなっていう覚悟があるの。踊って、踊り続けて、最後を迎えるんだって。

BOSS:ただ敵を吊し上げて、「奴らはどれくらい間違ってるのか」を羅列するだけの曲だとつまらないし、TOSHI-LOWたちのライブを見てて感じてた、どうせやるならあのエネルギーを沸点まで持っていくような曲にしたかった。それは2人とも最初のビジョンとしてあったし、そこで出てきたのが「ええじゃないか」っていうキーワードだったよね。要は「だってもう踊るしかないじゃん!」っていう、そういう最後の狂乱まで持っていきたい。だって今の世の中そういう状態だよね。賛成反対に分断されて、争わされて、でも6年経ってもまだ何も答えは出てなくて、危険な状態でまだそこにあって、一方では風化しかけてる。「もう踊るしかなくね? そこで踊ったら何か浮かぶかもしんなくね?」みたいな。それが最初に2人で共有してたメッセージだった。

TOSHI-LOW:そう。市民革命とかじゃなくて、農民一揆みたいな感じ。

一一それは、反原発デモでは何も変わらない現実に対する、ひとつの諦めとも言えるんでしょうか。

TOSHI-LOW:いや? 諦めではなくて。デモひとつで変わるなんて初めから思ってないけど、でもそれを認識するのにも6年かかった。世の中やっぱこういうもんなんだって思う。でも「だから仕方ない」じゃなくて、「世の中こういうものだからこそ、自分たちのやれる最後の起爆剤があるんじゃないか」って逆に思う。結局、言いたいことはいっぱいあるけど、音楽なんだから人が踊るものじゃないと伝わんないじゃん。切々と説教したいわけじゃなくて、やっぱりこれを聴いて足が動く、自然と気持ちが熱くなる、その先にメッセージが入っていく、っていうものじゃなきゃ。

BOSS:そう。すでに平成も幕末なんで、この混乱に乗じて一発カマそうぜっていうのは俺にもあった。「ここで一発、何もかも洗いざらい言っちまおうよ!」みたいな。それは諦めじゃなくて、せめて踊ってる間くらいは……っていうことだよね。諦めてないし、忘れることもできない。どのみち逃れられないんだったら、この音楽が鳴ってる間くらいは全力ではち切れようぜっていう。

一一実際に曲はどんどん高揚していきますが、だからこそ強烈に響くのが中盤の静のパートです。〈怒りを抱えて生きてくのは疲れるんだ〉というセリフがすごく効いていて。

BOSS:そこはほんと、今回一番伝えたかった言葉。「お前には一生わからねぇと思う」って吐かれた言葉を世界に伝えるのが俺の使命の一つだとずっと考えていた。きっと自分の人生において……あれほどまでの巨大な理不尽さ、あれほどまでの深い絶望っていうのは、たぶんまだ経験してないんだと思う。もちろん理解しようと常に努めてるけど、でもこれは彼らじゃないとわからないことで。それをそのまま書いた。

TOSHI-LOW:この一行のために、これまでの言葉があったと思うような曲だからね。まさかそれを俺が言うとは思ってなかったけど。

BOSS:いや、あれはTOSHI-LOWが言うから響くんだ。代弁してんだよ、絶対。俺も今年の3・11にいわき行って歌ったけど、やっぱり地元の人たちは「ちゃんと代弁して欲しい」って気持ちと「簡単に触れて欲しくない」っていう気持ちが常にあると思ってる。で、今回のリリックは俺にとってもけっこう踏み込んでるけど、やっぱりある程度の痛みが生じないと、何かを崩すことはできないの。それは自分の表現としてずっとあることで。

一一ただ、勇気はいりますよね。

BOSS:うん。こうやって書いたことも、録音したことも、これからライブでやっていくことも「自分自身それに耐えられるのか?」とは思う。まだはっきりした自信はないけれども。でもタイマーズにしても(遠藤)ミチロウ先輩にしても中川(敬)先輩にしても、みんなシステムによって意図的に隠されてきた事をはっきり言うことによって何かを壊してきた人たちで。そういう先輩を見てると避けて通れねぇよなって思うよね。このバースが気に入らねぇんだったら……こういうふうになった世の中を恨んでくれとしか言いようがない(苦笑)。

TOSHI-LOW:使命感じゃないけど、今だから言えるっていうのはあるよね。10年前にこれやれたかって、絶対やってないの。「そういうんじゃないんすよ。もっと自分の中にあるものなんすよ」とか言ってたと思う。もちろん今もそうだよ? 闘ってるのは己なんだよ。でも、今見えてる現実も実際にあるわけで、見えてんのに見えないフリはできないっていうか。

BOSS:そうね。あと、これは表現してる人間の欲求として、言っちゃダメなこと、タブーなことを、思い切り引き剥がしてみたい。それを引き剥がしたらどうなるのか、その向こうにどんな顔があるんだろうって。やっぱり近づきたいよね、真理に。

TOSHI-LOW:うん。

BOSS:そこにいろんなルールだとか欺瞞だとかモラルがあったとしても、悪いけど、あればあるほど覗いてみたくなるのがこっちのやり方で。しかもこれ、言うても普通のことだよね? この歌詞に書かれてることって新聞ではほぼ毎日書かれてることでしかなくて。だからまぁ、迷いはあったけど、同時に「普通じゃね? ビビってねえでお前も化けの皮を剥がしてみろよ」みたいな感覚はある。

「危ない橋を渡るしか道が残ってなかった」(ILL-BOSSTINO)

一一それって表現者全員に共通する感覚ではないと思います。やっぱりレベルミュージックを志す人たち特有の意見でしょう。

TOSHI-LOW:その中でも、特にヒリヒリするのが好きなのが俺たちだよね。ゾクッとさせる部分に惹かれるし。だから90年代にTHA BLUE HERBが出てきた時なんて本当にびっくりした。当時のBOSSと、今こういうふうにやれるなんて絶対思えなかったじゃない?

一一初期は本当に怖かったですね。まぁ、ピリピリして他者を寄せ付けなかったのは当時のBRAHMANも同じですけど。

TOSHI-LOW:そうだね(笑)。だから俺、BOSSのまっすぐ進んで来てないところがすごく好き。

BOSS:そういうところが、俺たちの唯一の居所だよね。いいメロディといい詞を書いて天性の声を持ってっていう、俺は音楽的才能に祝福されたいわゆるミュージシャンじゃないんだよ。そんなの何も持ってない田舎モンの俺が、なんとかしてこの世界に憧れて、近づきたいって思いながらやってきた。最初は憧れでもいいけど、途中からは「誰も言わねぇんだったら俺が言ってやるよ?」ぐらいの、ひとつのかぶき者だよね? 危ない橋をわざわざ渡りたいわけじゃないんだけど、もうそういうことをやるしか道が残ってなかった。それが自分にとっての存在意義だったというか。俺もTOSHI-LOWも、誰も口に出さないことをデカい声で言い続けることによってなんとか存在してきた奴らだっていう気がする。

一一もともと環境が似ているんですよね。パンクもヒップホップも90年代中盤からアンダーグラウンドで盛り上がり始めたけど、その潮流に乗っかることだけはしなかったし、あえて違う道を選んできた。

BOSS:ほんとだよね。俺が最初にBRAHMANっていうグループを認識したのは、パンクシーン云々とかじゃなくて、中国に行ってモノぶつけられてもステージ立ってたっていう話だったもん。誰も行ってない中国に一番最初に行って、絶対負けねぇって立ってた奴ら。ほんと格好いいって思った。そういう奴らが同世代に居たっていうこと自体が自分にとって嬉しかったし。

TOSHI-LOW:ド真ん中を歩んできたら、たぶんそんなのやる必要なかったんだよね。でもTHA BLUE HERBだってそうでしょ。出始めの頃は「ヒップホップじゃない!」って言われたこと、むちゃむちゃ多かったでしょ?

BOSS:いっぱい言われたね。

TOSHI-LOW:でも今、若いヤツらに「ヒップホップと言えば誰?」って聞けば「BOSS!」って答えがいっぱい返ってくる。そこなのよ。ほんとに本物だって認められるためには、それまでにあったものとは違うことをやらなきゃいけない。それは絶対苦労するし叩かれる道なんだけど。

BOSS:そうだね。

TOSHI-LOW:俺も、今ハードコアの先輩から「BRAHMANはハードコアパンクだ」って言われるのを素直に嬉しく受け止めてるの。それは俺らが先輩の物真似をしなかったからだし、「同じ階段を登らさせてください」なんて絶対に言わなかったから。だからこそ先輩たちも認めてくれるんだと思う。そこはBOSSにシンパシー感じるし、叩かれても何言われても自分のやり方でやってきたっていう、その強さはすごく感じる。もちろん、当時楽しかったかって言われたらそうじゃないんだけどね(苦笑)。ヒヤヒヤすることのほうが圧倒的多かった。

BOSS:でも、未だにそんな感じで歌ってるからね。たぶんそういうのが自分たちにとっての存在意義なんだよ。宿命っていう気がする。

一一そうやって90年代からサバイバルしてきた両者が、40代になった今、これだけ強烈なメッセージを残したことに大きな意味があると思います。

BOSS:だってこの国も来るとこまで来ちゃってるんだよ。どうしようもないことばっかりで。だからといって怒りだけで原発が止まるのか?って思うし、結局ただの反対と賛成に分かれちゃっていがみ合うだけ。そこに当事者誰もいねぇじゃん、みたいな状況をずっと目の当たりにしてて。ただ踊らされて、ただ争わされて、ただ戦わされてる、その間にどんどんいろんなことが決まっていっちゃう……みたいなことは歯がゆくもあった。

TOSHI-LOW:めちゃくちゃだもんね。実際、もう始まってんのかもしれないって思うことがある。ほら、第一次大戦が始まったのってオーストリアの皇位継承者が刺されたのがきっかけだって言うけど、その時には誰もこれが世界大戦だなんてわかってなかったはずで。でも歴史はそこから始まっていて。そういう意味で言ったら、もう第三次世界大戦が始まってるのかもしれないし、俺らはすでにその中にいるのかもしれない。でも、だとしても、俺たちがやれるのは無茶苦茶に踊り狂うことなんじゃないかな。

BOSS:今が結局どんな時代だったかっていうのは、後になってわかることだから。でも、とにかくこれを作って、ここに残しておいたっていう事実があるからね。この時代、この世代に、俺らみたいなヤツがいて、ばっちり脂も乗ってる時期にこういう曲を残すことができた。今となれば「あの時代にタイマーズがこんなこと歌ってたんだよね」って思うじゃん。相当早いと思うし、相当言い当ててる。でもこれから何百年、何千年続くと言われるあの厄介な代物との付き合いを思うと、この曲のメッセージは長く深く響くはずだと思う。だから、今、これを置いておく。それだけですよ。

(取材・文=石井恵梨子)