火中の栗拾い失敗する新社長と成功する新社長の違いは?

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 かつらメーカー最大手のアデランスは、創業者の根本信男社長兼会長(76)が経営の指揮を執ってきたが、業績悪化を理由に社長を退任し、1982年入社の津村佳宏副社長(53)が社長に昇格する。

 アデランスは2004年以降、大株主だった米投資ファンド、スティール・パートナーズと経営権を巡って対立。加えて、低価格な女性用かつら(ウィッグ)を展開する新規参入組に市場を奪われ、2016年3〜11月期の連結決算で11億円の赤字を計上していた。

 そこで、根本会長は今年2月に上場を廃止し、投資ファンド・インテグラルの支援で再建を目指している。

 過去にも、創業社長やカリスマ経営者の跡を継いで難局に向き合った例はあるが、うまくいかないケースが目立つ。まさに「火中の栗を拾う」状況だ。

 例えば、ダイエーの創業者、中内功氏の側近だった高木邦夫氏は、業績悪化を受けて2001年に中内氏を継いで社長に就任し、自主再建を目指した。

 中内氏が福岡ダイエーホークス所有にこだわっていたため、球団売却を回避しながら再建を目指したが、力及ばず、金融機関の説得で産業再生法の適用を決断した。

 経営不振に陥っていた三洋電機では、創業家の井植敏会長がテレビキャスターの野中ともよ氏を後任に据えるという奇手に出たが、2年目の2007年度決算で500億円の赤字を計上して野中氏は辞任。

 その後は総務人事本部長の佐野精一郎氏が社長としてトップに立ったが、再建できずにパナソニックに買収され、会社は消滅した。

 一方で、業績不振の企業を、新社長が立て直したケースもある。この6月から東京電力会長に就任する川村隆氏(77/現・日立製作所名誉会長)は、日立がリーマンショックで過去最悪の7873億円の最終赤字を出した直後の2009年に社長に就任し、再建を果たした実績が買われた。

 川村氏は日立マクセルから呼び戻されて社長に就任。不採算部門のテレビ事業や携帯電話事業から撤退を決定するなど合理化を断行し、2011年には黒字に転換させた。さらにその3年後には過去最高の営業利益5328億円を達成し、日立をV字回復に導いた。

 2001年に、800億円もの赤字を出していたコマツの新社長に就いた坂根正弘氏は、徹底した構造改革を断行して、2003年3月期には330億円の営業黒字を達成している。その後、2009年3月期には売上高2兆円を達成。世界第2位の建設機械メーカーにまで成長させている。

 では、火中の栗を拾って失敗する新社長と成功する新社長の違いは、どこにあるのか。『経済界』編集局長の関慎夫氏がいう。

「スーパードライを大ヒットさせてアサヒビールの経営再建を果たした樋口廣太郎氏は、『会社は風船みたいなもので、そもそも浮かび上がりたいもの。それを阻害している古い社風やしがらみを取り除けば社員の士気が上がり、自ずと浮かび上がる』といいました。

 火中の栗を拾って成功できる社長には、ムダを速やかに削り、旧経営陣の影響力やしがらみ、悪しき社内文化を排除し、社員の士気を高められる資質があるのだと思います」

 出世競争のゴールテープを切ったその先には、今まで以上の酷な役割が待ち受ける。それがサラリーマン社長の宿命なのだ。

※週刊ポスト2017年4月14日号