サラ・トーマスさんがNFL(全米フットボール連盟)における初の女性レフェリーになったのは2015年。現在も女性が1人という事実は変わらないものの、今では彼女の指導の下、何人かの女性がNFLのレフェリー養成プログラムに参加しているのだとか。そんな男社会におけるパイオニアの1人であるトーマスさんの仕事術を、コスモポリタン アメリカ版が聞きました。

1.自分は例外だと悟る 

「高校レベルの試合のレフェリーから始めたとき、審判に携わる女性は1人もいませんでした」と、トーマスさん。「衝撃でした。次に大学へ行ってみると、そこでも私が初の女性レフェリーだったのです」。

「話し合いがあって集まると、そこには男性しかいませんでした。それでおじけづいたわけではまったくありませんけどね。ただ、『なるほど、ここでは私は例外ってわけね?』と思いました。私は女性で、フットボールのファンで、今は審判をしている。なぜもっと多くの女性がこれをしなかったのかしら?と思います」

2.差別はつきものと覚悟する

トーマスさんは、自分が女性だから男社会で差別されたとは思いたくないそう。でも、過去にはこんな経験が。最初に高校フットボールの審判会議で集まったときに、「ある男性が、部屋の前で話していました。私が近づくとピタリと話を止めて、私を見つめました。私も彼を見つめてこう聞きました。『フットボールの審判が集まるのはこの部屋ですよね?』。すると、彼は大変失礼な言葉を私にぶつけました。私は思いました。『私、何かまずいことに首を突っ込んでる?』ってね。でも、私はとても負けず嫌いなので、『いいわ、やってみましょう』ということになったんです」。

さらにトーマスさんは、観客から彼女が女性だとわからないように、帽子の中に髪の毛を入れ、メイクもしないよう求められたことも。トーマスさん曰く、それは"ものの見方の問題"で、他のレフェリーたちは観客に「あれは女の子じゃないか、フットボールのことなんか何も知らないのに、どうしてあそこにいるんだ?」と言われたくなかっただけ。だから、髪の毛を帽子に入れることには同意したけれど、メイクは続けたんだとか。

男社会のNFLで生き抜くために…私が実践していること10

後に、高校フットボールから短大に活動の場を移したとき、かつて一緒に働いたことのある人から主審にならないかと誘われたことも。「彼は私に短大の主審を務めて欲しかったのですが、当時彼の秘書だった男性が、絶対に女性は雇わないと主張したのです」とトーマスさん。「だから、やりませんでした。私は別に男社会を壊すためにレフェリーをやっているわけではないのです。私の価値を認めないなら、私もやりたくありません。でも、結局ディビジョン1(大学フットボールの1部リーグ)に採用されたので、短大をスキップすることができたのは、よかったと思います」。

3.差別に動じない 

「差別があったかどうか、正直言って、よく覚えてもいないのです。というのも、自分にとって好ましいエネルギーが感じられない場所には、そもそも入っていかないようにしているから」とトーマスさん。「私が今の仕事をしているのは、他のレフェリーたちと同じ理由で、それがわかると、あとは相手が自分を受け入れるか、受け入れないかという個人的な問題になります。でも、私は現にここにいて、仕事をしている。一緒に仕事をしているレフェリーの男性たちや、仕事自体に関しては、とてもプロフェッショナルだと言えます。今後差別されることもあるでしょうが、真面目に受け取るつもりはありません。絶対にね」

4.経験者でない分、努力する 

「私はゼロから始めなくてはならず、それは大変な挑戦でした」とトーマスさん。「フィールドにいる選手の数を数えたこともなかったし、ユニフォームにつけられた数字が何を意味しているかさえ知りませんでした。最低ラインから学ばなければならず、基本的なことを覚えるのにかなりの時間がかかりました。もし私にプレーの経験があれば、そんなことはなかったはずです」

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5.周りからどう見えるかを大切にする 

良い審判の重要な条件の1つが、フィールド上での態度だというトーマスさん。それは「自分自身をよくコントロールできていること、元気でたくましく、よく動くことです」。それができなければ、試合には出られないのだとか。「彼らの一員に見えないなら、私がそこにいる理由もなくなるわけです」。

6.ポジショニングを重視する 

的確なコールをするためには、しかるべきときにしかるべき場所にいることが必要。12月にトーマスさんは手首を負傷したそうで、それは選手のそばで動きを見ていて、ぶつかってしまったからなんだとか。「自分もクウォーターバックの心構えでいる必要がありますね」とトーマスさん。「ボールがスナップ(プレー開始時のパス)される前に、オフェンスがどこに走っていくかを察知していなくてはなりません。本当に優秀なレフェリーというのは、そういうものです」。

7.勉強し続ける 

トーマスさんはルールに精通するため、常に複雑な場面での規則の適用法を勉強しているそう。「ルールを読み、映像を見て、それをライブで経験するんです」とトーマスさん。「私がいつも正しいと言っているわけじゃありません。もちろん、間違える時もあります。でも、あらかじめあらゆる場面を想定しておけばおくほど、実際の場でルールを適用しやすくなるのです」。

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8.他にも仕事を持つ 

トーマスさんは医薬品会社 のフルタイムの営業職(休暇はすべてフットボールのために使用)であり、3人の子どもの母。子どもの世話をしてもらう人を雇う他に、家庭でのやるべきこともしっかり頭に入れているそう。「出かける前に、すばやく把握するんです」とトーマスさん。「やらなければならないことのリストから、どこかへ行くのにかかる交通費まで、すべてね」。

9.感情を抑える 

問題が起きたとき、彼女は正面から向き合い、その後は流れに任せるのだとか。「私は大げさな人間でも、感情的な人間でもないんです」。その姿勢は、フィールド上でプレッシャーを受けているときに役立つそう。

10.レフェリー同士は1つのチーム 

「コミュニケーションと信頼が不可欠です」とトーマスさん。「他のレフェリーには、私がいて欲しい時に、いて欲しい場所に行ってもらわなくてはなりません。レフェリー仲間では一緒に旅行もして、お互いやお互いの家族のことまで知っています。その信頼と尊重が仕事でも役立つんです。私たちはお互いの最大の支援者です」。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation:mayuko akimoto

COSMOPOLITAN US