スペースX「再利用ロケット成功」で見えた宇宙開発の巨大な進化

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スペースXは3月30日、再利用したロケットを打ち上げ、通信衛星を軌道に投入することに民間企業として初めて成功した。今回使用した「ファルコン9」ロケットの1段目ロケットは、昨年4月に打ち上げて回収したものだ。ロケットは、通信衛星「SES-10」を軌道に乗せた後、スペースXのドローン船「Of Course I Still Love You(もちろんまだ君を愛してる)」に無事帰還した。

スペースXのCEO、イーロン・マスクは記者会見で、次のように述べている。「創業以来、15年に渡ってファルコン9の1段目ロケットを再利用することに取り組んできたが、ようやく実現することに成功した」

マスクがロケットの再利用にこだわる最大の理由は、莫大なロケット打ち上げコストの削減だ。1段目ロケットの費用は約3000万ドルで、打ち上げコストの中で最も大きな割合を占める。「私はスペースXのチームに対して、大量の札束が大気中を落下してきたら、燃える前に何とかしようと思うだろう? と常々言っている」とマスクは昨年6月に開催されたCode Conferenceで述べている。

Forecast Internationalのアナリスト、Bill Ostroveは、今回の成功によって、スペースXのコスト競争力がさらに強まったと指摘する。

「大方の予測では、ファルコン9を使ったペイロードの打ち上げ費用は30%削減される見通しだ。マスクが目指す火星でのコロニー建設を実現する上で、今回の成功は重要な進歩だ」

マスクは、打ち上げ後の記者会見で「再利用ロケットを使った打ち上げ費用は現状の6200万ドルよりも大幅に安くなる見込みだが、具体的な金額についてはまだ検討中だ。ただし、スペースXは開発費用を回収する必要があるため、打ち上げコストの削減額が全て価格に反映される訳ではない」と述べている。

宇宙フロンティア財団でVenture Strategy & Research部門のディレクターを務めるJeff Matthewsによると、今回の成功はロケット開発サイクルの大幅な短縮化につながるため、宇宙産業全体にとっても画期的な出来事だという。

次の目標は「24時間以内の再飛行」

「スペースXは、わずか15か月間で1段目ロケットの回収から、再利用ロケットの商業打ち上げまでを成し遂げた。これは、従来の開発サイクルに比べて格段に短く、素晴らしい成果だ」とMatthewsは話す。Matthewsはまた、急成長する人工衛星市場において、スペースXの成果は重要な意味を持つと指摘する。

「宇宙フロンティア財団が過去1年間で150社の人工衛星スタートアップを調査した結果、大半の企業が打ち上げスケジュールと打ち上げコストを最大のリスク要因に挙げていることがわかった。スペースXの成功により、参入障壁や成長リスクが大幅に低減され、業界全体の活性化につながるだろう」

スペースX以外にも、複数の企業がロケットの打ち上げコスト削減に取り組んでいる。ジェフ・ベゾス率いる「ブルーオリジン (Blue Origin)」は、再利用ロケットを使った準軌道飛行テストに成功しており、数か月後には商業打ち上げを開始する予定だ。他にも、再利用ロケットによる小型衛星の打ち上げに取り組んでいる企業もある。また、再利用以外の方法でロケットの打ち上げコスト削減に取り組む企業も存在する。

「Rocket Labなどの企業は、規模の経済によるコスト効率化に取り組んでいる。彼らは、使い捨てロケットを大量生産することで再利用以上のコスト削減効果が得られると主張している」とOstroveは言う。

宇宙産業はまだ黎明期にあるが、今回の成功が新たな時代の幕開けを告げる快挙であることは間違いない。「宇宙ビジネスは、今後はさらに早いスピードで成長を遂げるだろう」とMatthewsは話す。

イーロン・マスクの目は、既に次の目標に向いている。彼はツイッターで、「偉業を達成したスペースXのチームをとても誇りに思う。次のゴールは、24時間以内にロケットを再飛行させることだ」と述べている。