ノルウェーにはリアス式海岸が氷河の侵食によって形成された「フィヨルド」がいくつも存在し、それぞれが観光名所にもなっています。多くの人が訪れる場所ながら、特殊な地形から橋の建設が高コストになるため、フィヨルド周辺では地元の住民も含め、ディーゼル駆動のフェリーが重要な移動の足として使われています。そんなノルウェーでディーゼル燃料を使わず排気ガスを全く排出しない世界初の「電動フェリー」が登場し、年間CO2排出量を約30万トンも削減できると試算されています。

Pining for cleaner air in the Norwegian fjords - BBC News

http://www.bbc.com/news/business-39478856

ノルウェーのフィヨルド周辺では、年間2000万台以上の自動車・トラックが行き来しており、そのほとんどがフィヨルド間をつなぐフェリーを利用しています。フィヨルドによっては幅2〜3km、深さ700メートルという狭く断崖絶壁の地形もあり、橋を渡すのは現実的ではありません。そのため、フィヨルド周辺には約130本のフェリー航路がありますが、ディーゼル船が排出するCO2などの有毒排気ガスが問題になっており、ノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相は、低排出ガスフェリーによるインフラの構築に資金援助を行うことを発表しています。

そんな低排出ガスフェリーの実現に名乗りをあげたのがノルウェーのフェリー会社であるFjord1で、2018年1月に3台の完全電気駆動の大型フェリー「Ampere」によるフェリー航路開通を予定しています。Ampereは重さ11トン、容量800kWhのバッテリーを搭載しており、船の両端に設置されている2台の電動モーターで駆動します。バッテリーの充電は一晩で満タンになりますが、50分の運航に180kWhを消費するため、片道20分間の運航を1日34回を行うためには、停泊中にも9分間の充電が必要になるとのことです。



Ampereの電気駆動技術を開発した企業シーメンスは、電動フェリーを新規建造するだけでなく、技術的には現在運航中の84隻のフェリーを電動化できると考えています。より長い航路を通る43隻のフェリーは、完全電気駆動船に転換することはできないそうですが、ディーゼルエンジンとのハイブリッド型に転換することは可能だそうです。もしこれらの計画が実現すれば、ディーゼル船から排出される有毒ガスのうち、窒素酸化物を年間8000トン、CO2を年間30万トン削減できる見込みです。この削減量は年間15万台分の自動車の有毒ガス排出量に匹敵すると試算されています。

長距離船の完全電気駆動化はまだ先になる見込みですが、ノルウェーを運航するフェリーの70%は短距離船であり、数年以内にすべての短距離フェリーを電動化できるとも報告されています。電動フェリー1台で年間100万リットルのディーゼル燃料を節約可能で、エネルギーコストは60%も安くなるとのこと。もしAmpereが360人の乗客と120台の自動車を乗せて、6kmのフィヨルド間を航行した場合、必要な電力コストはわずか50クローナ(約615円)となります。



実際に電動フェリー「Ampere」が運航している様子は、以下から見ることができます。

World's first zero emission electrical car ferry - YouTube

なお、フェリーによる有毒ガスの排出量は香港やニュージーランドなど各所で問題になっていますが、スコットランドではハイブリッド型のフェリーの運航がスタートしているなど、低排出ガス船の実用化が進んでいます。