「日本は戦術的に習熟しつつある。2つのゴールの奪い方がまったく違う種類であることは、ひとつの証左だろう」

 ミケル・エチャリ(現バスク代表監督)はそう言って、UAE戦の日本代表の戦いに及第点を与えている。

 エチャリは、ホセバ・エチェベリア、ハビエル・デ・ペドロ、シャビ・アロンソら数多くのスペイン代表選手を発掘、鍛え上げた。その手腕で「バスクフットボールの父」とも言われる目利きだ。あのジョゼップ・グアルディオラが三顧の礼をもって迎えようとした男は、細部に注意を払う。

「原口(元気)は最近の代表戦と比べると、ボールコントロールの感触がいまひとつ乗り切れていなかった。しかし、そのポジショニングは常に周りと連係できており、守備において自分のゾーンを破られていない。とても好感が持てる、質の高いプレーだった」

 エチャリによる「ハリルジャパン分析リポート」も6回目になる。”スペインの慧眼(けいがん)”が解き明かすUAE戦の実像とは──。


UAE戦で攻撃意識の高さが目立った今野泰幸「アウェーのUAE戦は、昨年10月のオーストラリア戦と同じような戦い方で挑むのではないかと私は予想していた。あの試合は戦術的には完璧に近かったからだ。

 だが、長谷部(誠)の戦線離脱で、戦術変更を余儀なくされたのだろう。(ヴァイッド)ハリルホジッチ監督は4-2-3-1を捨て、4-1-4-1という布陣を選択。山口(蛍)をアンカーに置き、その前に今野(泰幸)、香川(真司)を並べている。今野は前のスペースに入っていく回数が多く、攻撃意識が高いのは明らかだった。

 試合は日本優勢で始まる。UAEは中盤でじっくりパスをつなぎながら攻める形で、日本はしばしばそれを奪い、速く、効率的に攻めた。前半5分に大迫(勇也)が決定機を得るが、しっかり当たらず。大迫はこの後もミドルシュートを狙うが、力なく外れる。

 日本の戦いは盤石に見えたかもしれないが、実際はそうでもない。中盤でスペースを明け渡し、アリ・マブフートにドリブルを許すなど、世界レベルの大会では高いツケを払いそうなミスも犯している」

 一方、前半14分に久保裕也が挙げた得点に関しては、「文句のつけようがない」と、エチャリも手放しで褒めている。

「山口、香川のパス交換でリズムを作ってから、右サイドに展開。高い位置をとっていた酒井(宏樹)が持ち上がり、深さと幅を作りながら、ディフェンスの背中にパスを通した。そこに久保が斜めに走り、ボールをコントロールし、ニアサイドを撃ち抜いている。短いパスと人の動きによるコンビネーションで奪ったゴール。後半の2点目と種類が違い、それはチームが力をつけている証明と言える」

 ただ、ここからチーム全体が受け身に回って守備面が破綻しかけたことに、エチャリは苦言を呈した。

「20分には、マブフートにGK川島(永嗣)と1対1になる場面を作られてしまった。長友(佑都)が左サイドの高めに位置し、香川、今野が両方かわされた後、森重(真人)、山口が同時に飛び込み、ディフェンスラインを数的、ポジション的不利に陥らせた。失点していても、おかしくはないミスだった。

 日本は両サイドに幅を使って攻撃されると、対応に苦しんでいる。

 UAEは左利きのオマル・アブドゥルラフマンが右サイドで「逆足」のプレー(時間帯によって、左サイドにもポジションを変えた)をして、アブドゥルアジズ・ハイカルが右サイドを駆け、攻撃を創り出した。右サイドを攻め立てながら、左で仕留める、というような狙いだったのか。イスマイル・アルハマンディは今野のマークを払いのけ、オマルとのコンビネーションで脅威になっている。

 この流れは後半になっても変わらない。UAEは後半3分、4分と立て続けに決定機を得た。

 しかし、日本は後半7分に2得点目を挙げる。吉田(麻也)のロングパスに大迫が高いジャンプで競り勝ち、右サイドの久保につなげる。久保は左足でファーポストに走った今野へ。今野はマーカーの裏をとっており、速(すみ)やかにGKを破った。ロングボールの直線的攻撃からの得点。1点目と違い、評価すべき点だ」

 ただし、エチャリは「完勝」という評価には疑問を投げかけている。

「日本はUAEにサイドで起点を作られ、バックラインの前に侵入されており、終始、その問題を解決できないままだった。後半にモハメド・アルラキを投入された後はしばし混乱。アンカーの山口はあまりに孤立していた。失点には至らなかったが、数的に不利な状況が多発。久保、原口がしっかり両サイドを閉じたことと、相手の消耗が明らかになってきたことで、最後は危なげなくクローズしたが……。

 終盤に安定したのは、倉田(秋)、本田(圭佑)、岡崎(慎司)の投入も大きかっただろう。疲れを見せる相手に対し、倉田が献身的に動き、本田はポゼッションをもたらし、岡崎がゴールの脅威を与えた(1本目のシュートは見事。2本目は決めなければならなかった)」

 最後に、エチャリはUAE戦をこう総括している。

「ハリルホジッチ監督は、今野、香川に攻撃的役割も与えたかったのだろう。その点、システムとしてはひとつの成功を得た。しかし、アンカー山口は孤立する機会が多く、守備面は不安定。攻守のトランジッション(切り換え)にも問題があった。昨年10月のオーストラリア戦と比べたら、3ラインのコンパクトさは雲泥の差だろう。もっとも、ひとつの多様性を与えたという意味では出色だった、と記しておく」
(次回、タイ戦レポートにつづく)

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