野村克也氏が現役のキャッチャーを斬る

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 プロ野球の長いペナントレースが幕を開けた。名称・野村克也氏の目から見たペナントレースは、「テレビじゃ言えない」話ばかりだった。野村氏は、FAで3人のスター選手を獲得した巨人について「補強というのは、『その選手がチームの役に立つかどうか』という判断基準がなければならない。ただ単に、スターを獲ればいいというわけじゃないんだ」とチクリ。

 だが、巨人に明るい話題がないわけではない。WBC本戦・全7試合でスタメンマスクをかぶった侍ジャパンの正捕手・小林誠司(27)の“急成長”だ。

 WBC開幕前、野村氏は小林についてテレビ番組で“フォークのサインのときだけ片膝を地面につかずに構える”というクセを指摘していた。

「あんなもの、俺が相手ベンチにいたら一発。キャッチャー経験者ならすぐに分かるクセだよ」

 野村氏の指摘が耳に届いたのか、本戦ではクセは改善され、周知の通り“ラッキーボーイ”となった小林。野村氏も、米国戦終了後のテレビでは小林を「久しぶりに見る名捕手」と絶賛した。

 しかし、野村氏は「しょうがないよ、テレビだから。フフフッ」という言い方をする。

「申し訳ないが、俺は大学出身のキャッチャーは信用していない。高校を卒業する18歳から22歳頃までの4〜5年間が、一番大事な時期なんだよ」

 野村氏によれば、その時期は「野球の基礎作りの段階」であり、プロで過ごすことが重要だという。

「大学、社会人では、その場しのぎの配球をさせることがある。俺はシダックスの監督もしていたから分かるけど、1回負けたら終わりのトーナメント戦だと、無難な配球ばかり教わると、それがクセになってしまうんだよ。プロ野球80年の歴史を見ても、名捕手と呼ばれる人には高卒選手が多い。森祇晶(巨人)や岡村浩二(阪急)、谷繁元信(中日)。俺を含めてもいいかは分からないけどね(笑い)。

 キャッチャーには、観察力、分析力、洞察力の3つの力が要求される。まず相手打者をよく見て、攻め方を考え、選んでいくということだ。リードも(1)ピッチャー中心、(2)相手バッター中心、(3)状況(アウトカウントや走者など)中心の3つが基本。だが、WBCのような国際試合では相手打者のデータ、つまり分析の材料が少ない。結局、(2)の打者中心では考えられないから、(1)のピッチャー中心で組み立てるしかないわな。それでは本当の実力はわからないよ」

 WBCでの小林の活躍は、差し引いて考えるべきという指摘だ。

 一方で、今季は期待の“高卒”捕手・森友哉(21、西武)、原口文仁(25、阪神)が、それぞれ打撃を買われて外野手、ファーストにコンバートすると報道された。有望な若手キャッチャーが育たないのではないか、という懸念を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「キャッチャーの成長の場は日本シリーズ。リードはからきしだと思っていた阿部慎之助(38、巨人)も、日本シリーズを経験してからは見違えるように成長した。短期決戦での1球の大切さ、重みを経験したからこそだろう。『優勝の陰に大投手あり』とはよくいわれるが、俺は『優勝の陰に名捕手あり』だと思っている。なんで巨人は阿部にキャッチャーをやらせないのかねェ」

※週刊ポスト2017年4月14日号