(左)藤浪投手(Cake6さん撮影)/澤村投手(STB-1さん撮影)/ともにWikimediaCommonsより

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阪神・藤浪晋太郎投手(22)と、巨人・澤村拓一投手(29)の「イップス」疑惑が浮上している。

「イップス」は、投手生命を絶たれることもある深刻な症状だ。

糸井選手は「イップス」で野手転向

2017年4月4日のヤクルト戦に先発した藤浪投手は、5回を投げて9四死球と大乱調。5回表には、ヤクルト・畠山和洋選手(34)の顔面付近に死球を投じ、大乱闘劇となった。

藤浪は14年にも、中日ドラゴンズの主砲・平田良介選手の左肩付近にぶつけて激怒させ、翌日に謝罪。15年には、当時広島カープだった黒田博樹投手へ2球続けて胸付近に投じ、あわや乱闘という騒ぎとなった。

1年目にはわずか2つしかなかった与死球数が、14、15年はリーグ最多の「11」。16年もリーグ2位の「8」だった。

17年4月5日配信の日刊ゲンダイ(ウェブ版)では、藤浪投手の「制球難」はイップスが原因ではないか、と推測。

「素質はピカイチなのに、年々制球が悪くなるのは技術より心の問題なのか。メンタルトレーナーなどの専門家に相談するべき」

とプロ野球OBのコメントを紹介した。

また、右肩のコンディション不良のため3軍で調整を続ける澤村投手にも「イップス」を懸念する声がある。

澤村投手は昨季、ストッパーながら「9つ」の暴投を記録。リーグワーストの数字を残した。

16年8月の中日戦では、フォークが大きくすっぽ抜け、三塁ベンチ上の屋根まで届く大暴投に。この「珍プレー」は、多くの野球ファンを驚かせた。

17年4月5日付の東京スポーツでは、澤村選手の「急性イップス」を指摘する。

澤村投手は、ファンやマスコミからのバッシングで相当なストレスを抱えた上で、今季のオープン戦初登板で、145キロの直球を日本ハム・清水優心選手(20)の後頭部にぶつけた。これがきっかけでイップスを発症したのではないか、と分析している。

過去には、阪神・糸井嘉男(35)もイップスを経験している。150キロを超える剛速球を武器に04年に日本ハムに入団するも、イップスが原因で四球を連発し、06年に外野手に転向した。

「自分の腕がない」感覚

そもそもイップスとはどんな病なのか。

プロスポーツでは、ゴルフでよく話題になる。2013年のマスターズで優勝し、日本でも人気のあるアダム・スコット選手(36)もパッティングのイップスで悩んだひとりだ。思うようにパターが打てなくなる例が多い。

イップス治療を行う「IMTメンタルオフィス」の阿部久美子氏は4月6日、J-CASTニュースの取材に対し、

「イップスとは、意識と無意識の統合が崩れている状態です。スムーズにピッチングがしたいという意識に反して無意識に体が別な動きをしてしまう運動障害です」

と話す。

イップスになった野球選手の中には、「自分の腕が無い」「指先の感覚が無い」「足に力が入らなくなる」と表現するほど、自身の体をコントロールするのが難しくなる場合もあるそうだ。

藤浪投手や澤村投手の場合、死球を気にするあまり余計な力が入りコントロールが定まらなくなってしまった可能性がある、と阿部氏は言う。

それでは、克服方法はあるのか。

阿部氏は、

「メンタル面の改善が一番です」

と話す。

そのためには、専門家のカウンセリングやチームメイトなど周囲のサポートが有効。阿部氏が聞いた話では、あるプロ野球のコーチは、イップスにかかった選手に対し、「技術的なことは指導せず、そっと見守る」といった対処をしたそうだ。