速度ではなく情報選択能力を上げることに尽きる!

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速読ができれば…」と思う人は多いでしょう。日に日に情報量が増加する現代では、短時間で大量の本を読めたほうが有利なのは間違いありません。1冊の本を10分で読めれば、計り知れない知識が手に入るでしょう。

 しかし、速読トレーニングの世界は、どうにも怪しい主張が多いのが難点です。本のページをカメラのように脳に写したり、眼球を素早く動かすトレーニングしたりと、にわかには信じがたいテクニックが多く存在しています。

 なんともうさん臭い世界ですが、そもそも速読には効果があるのでしょうか?

 そこで参考になるのが、2016年にカリフォルニア大学から出たレビュー論文です(1)。

 これは、過去に行われた速読の研究から約200本の論文を選び、それぞれのデータをチェックしたもの。現時点における速読リサーチの集大成といっていいでしょう。

 その結論とは、おおむね以下のようなものです。

1.眼球をすばやく動かしたり、周辺視野を使ってページを見わたすようなテクニックはすべて無意味。全体の読書時間のなかで目の動きの重要性は10%以下なので、いくら眼球を鍛えても意味がない。

2.フォトリーディングのように、潜在意識に本の内容をインプットすることもできない。人間の脳は、同じ文章を何度か読み直しながら理解を深めていく構造になっており、パラパラとページを進めていけば、それだけ内容の理解度が低くなってしまう。

3.実際に普通の人よりも速く本が読めることを証明した者はいない。2008年には、速読大会でチャンピオンになった人物に「ハリー・ポッター」の最新刊を読んでもらう実験が行われたが、ストーリーをまったく理解できていなかった。

 最初から最後まで、速読の効果をボロクソに否定しています。世に出まわる速読法は、大半がインチキだと言っていいでしょう。

◆重要なのは、速度よりも情報の取捨選択力

 ただし、速読の可能性が完全に消えたかといえば、そうではありません。研究チームは、論文の最後を次のようにまとめています。

『これまでの研究をまとめると、速読のトレーニングにより、深い理解を保ったまま読書のスピードが上がるという科学的な根拠はない。速読でスピーディに読書が終わるのは、飛ばし読みがうまくなった場合だけだ。(中略)飛ばし読みは、大量の情報を処理するための重要なスキルである』

 つまり、真の速読とは、せんじつめれば「飛ばし読み」の技術に過ぎないのです。

 が、たかが飛ばし読みと侮るなかれ。本の内容をざっくりつかむ技術を海外では「スキミング」や「スキャニング」と呼び、ケンブリッジ大学などでも昔から教えられてきた由緒あるテクニックなのです(2)。

 その方法論は多岐にわたりますが、ここでは基本的なポイントに絞ってご紹介しましょう。

ステップ1.プレ読書

 まずは本の下調べからスタート。本の目次、各章や節の見出し、著者の履歴などをチェックし、「そもそも何の本なのか?」を明確にしましょう。各チャプターの最初と最後のパラグラフだけを読んでみるのも有効です。

 プレ読書の段階では、自分に対して以下の質問を投げかけながら行うのが効果的です。

・このタイトルからどんな内容が想像できるだろう?
・この著者はどんな内容を書きそうだろう?
・章や節の見出しからわかることはなんだろうか?

◆読書のゴールを決めることで全ページ読まなくてもよくなる

ステップ2.ゴール設定

 次に大事なのが、読書の目標を決めることです。

 たとえば「最新の情報にキャッチアップしたい」でも、「時間管理の方法を学びたい」でも、「英語の効率的な勉強法を知りたい」でも何でもかまいません。プレ読書でわかった情報をもとに、「自分はこの本から何を得たいのか?」を明確にしていきましょう。