専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第99回

 最近はすっかり鳴りを潜めていますが、飛ばし屋さんとラウンドすると「バックティーで回ろう!」と誘われることが、過去には頻繁にありました。

「キミも月例とか、競技会に出るんでしょ。じゃあ、バックティーのラウンドに慣れておかないと。ちょっとキャディーマスター室に行って、(バックティーから)打てるかどうか聞いてみるからさ」って……、誰も頼んでおらんがな。

 ほんと、余計なお世話ですよね。単に自分が飛ぶから、バックティーで打ちたいだけじゃん。まったく他人のことを考えていませんよね。

 今の流行り言葉で言えば、「パワハラ」ですよ。飛ばないアマチュアをバックティーに誘うのは、スキーで言えば、ボーゲンしかできない人を上級滑降コースに誘うようなものですから。


バックティーからのラウンドを誘うのは「パワハラ」です! ゴルフの場合、さらにタチが悪いのは、叩きながらもバックティーからラウンドができてしまうこと。ほんと、恐ろしいです。

 だから、誘うほうは飛ばない人の気持ちなんてお構いなしです。

「別にケガするわけでもないし、命を取られるわけでもないから、いいじゃん。それに、ハンディキャップをあげるから、それで叩いた分を帳消しにしようよ。さあ、回ろう!」なんて言って、強引な人が多いんですよね。

 飛ばない人がバックティーからラウンドすると、想像以上のストレスを受けます。それを、飛ばし屋はわかっていない。いや、わかっているけど、知らないふりをしているんです。あ〜、ほんと性格悪いなぁ……。

 まず、距離が長いので、飛ばないこちらは常にドライバーをマン振りです。飛ばなくても大丈夫と思っても、視覚的なものもあって、無意識に力んでしまいます。

 しかも、オーナーで打つことは稀でしょ。そうなると、必ず自分の前に飛ばし屋がガ〜ンと打ってくる。別にそのボールを超えようとは思いませんが、なんとなく「恥をかかないように」と思って、結果、力んでしまうんですね。

 ショットは、力めば力むほど乱れます。だから、普段よりもボールが相当曲がる。普通にゆるい球で打っていれば、長いミドルホールでも3オンできるのですが、ティーショットで力んで、いきなり林にボールを入れたりしてしまうから、「大叩詠一」と「暴れはっちゃく」が交互に登場してきます。もう収拾がつきません。

 まんまと飛ばし屋の術中にはまって、コツコツゴルフをする前に自滅。もらったハンデも早々に使い切って、想定外の損失を被ることしばしばです。

 そうして、昼休みに「だから、バックティーでラウンドするの、嫌だったんだ」とぶつくさ言っていると、飛ばし屋はにこやかに「何事も修行だよ」と、高らかに勝利宣言するのです。

 飛ばし屋はラウンド前に、実に狡猾なことを言います。

「ゴルフは設計家の意図を汲んでラウンドしないと。バックティーからラウンドすると、また違う風景が見えてくるよ。ゴルフは、実に奥が深いんだ」

 確かに違う風景は見えますが、設計家の意図というのは、まったく違うんですよ。

 例えば、バックティーから250ヤード地点にでっかいガードバンカーがあるとするでしょ。飛ばし屋なら、狭いフェアウェーを狙って250ヤード打つ。もしくは、バンカーを避けてコントロールし、230ヤードぐらいに刻む。はたまた、目いっぱい打ってバンカー超えを狙うとか、いろいろと考えて楽しいわけですよ。

 同じコースを、飛ばないキミがレギュラーティーから回ってみましょうか。ちょうど220ヤード打つと、ガードバンカーに捕まります。それを避けて、フェアウェーを狙うか、刻むか、飛ばないキミにとっては思案のしどころです。攻略法や考えることは、おおよそ飛ばし屋と一緒です。

 要するに、設計家の意図を汲んだラウンドをするなら、飛ばないアベレージゴルファーはレギュラーティーから回ってこそ、設計家の罠に程よく遭遇できるのです。バックティーからでは、どうあがいてもバンカーには届かない。それじゃあ、設計家が考えたハザードが完全に無視されてしまうわけで、ラウンドしても設計家の意図は汲めないし、ぜんぜん楽しくないんですよ。

 最近は、ゴルフ場の距離も長くなって、全長7000ヤード超えというコースもザラにあります。でも、そうしたコースでドライバーの飛距離220ヤード程度の人がラウンドするのは無謀ですよ。まったく楽しくないし、お金を排水溝に捨てるようなものです。

 それでは、なんでアマチュアがバックティーからラウンドする”信仰”が起きたのか? 

 昔は、プロとアマの飛距離の差がさほどなかったからです。ジャック・ニクラウスが全盛の時代は、プロの飛距離はおよそ260ヤードでした。一方、アマチュアは220ヤードと、今とあまり変わらなかったんです。

 ゆえに、当時は「がんばれば、プロに追いつける」と思うようになって、プロと同じバックティーでプレーしようという”信奉者”がたくさん出てきたわけです。

 また、女子プロになると、アマチュアと飛距離は変わりませんからね。女子とはいえ、「プロより飛ぶ」という優越感に浸りたい気持ちが、飛ばし屋さんの気持ちを一層たかぶらせたのかもしれません。

 実際、私も飛ばない女子プロとラウンドしたことが何回かありますが、こっちがプロより飛ぶって痛快ですよ。でも、スコアはいつも10打差ぐらいの差をつけられて負けていましたが……。

 ともあれ、およそ10年以上前に起きた高反発規制が、アマチュアにとっては大きなダメージとなって、今なお引きずっています。飛ばない分、飛ぶクラブで補っていたのに、それが使えない。プロとアマとの飛距離の差がどんどんついて、飛ばないアマチュアはそのまま置いてきぼりになっているのです。

 もはやアマチュアゴルファーは、「飛ばそうと努力する」よりも、「飛ばないゴルフをどう楽しむか」に、意識を変えていったほうがいい時期にきていると思いますけどね。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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