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自治医科大学と日本医療研究開発機構(AMED)は、同大医学部統合生理学部門の中田正範准教授、矢田俊彦教授、坑加齢医学研究部の椎崎和弘講師、黒尾誠教授らの研究グループが、内分泌ホルモン様のFGFs(繊維芽細胞増殖因子)のひとつである「FGF21」が、視床下部室傍核Nesfatin-1ニューロンを活性化することで、高血糖時に選択的に摂食を抑制することを発見したと発表した。この研究成果は、英国学術雑誌「ScientificReports」に掲載されている。

FGF21には膵β細胞および脂肪細胞を標的とした抗肥満作用があり、臨床応用が試みられ、血液脳関門を通過し脳内へ移行することやFGF21受容体であるβ-klothoは摂食中枢である室傍核にも発現していることは報告されていたが、摂食調節作用に関してはこれまで明らかになっていなかった。

同研究では、マウスを用いてFGF21の摂食調節作用を調査。FGF21をマウスの側脳室内に投与したところ、3時間後から24時間後までの摂餌量が有意に低下したという。投与後に神経活性化マーカーのc-Fosの発現を調べると室傍核で増加しており、この時の室傍核の神経ペプチドのmRNA発現を調べると、Nesfatin-1のmRNA発現が増加していたという。さらに、FGF21の摂食抑制作用は、室傍核特異的Nesfatin-1ノックアウトマウスでは消失していたということだ。これらの結果から、FGF21は室傍核Nesfatin-1ニューロンを活性化し、摂食を抑制する事が明らかとなった。

さらに、FGF21はマウスから単離した室傍核Nesfatin-1ニューロンに直接作用し、高グルコース濃度存在下でのみ、神経活動が増加したという。同様に、FGF21はマウスの高血糖時に摂食抑制作用を発揮したものの、絶食時に血糖が低下している時には作用がなかったという。すなわち、FGF21は「血糖上昇時に食欲を抑え、過血糖を抑制する」と考えられる。

従来の糖尿病薬では治療過程で重度の低血糖を発症する恐れがあったが、今後FGF21を糖尿病治療へと臨床応用することで、こうした懸念がいらない治療法につながるとしている。

なお、同研究は、日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)の研究開発領域「生体恒常性維持・変容・破綻機構のネットワーク的理解に基づく最適医療実現のための技術創出」における研究開発課題「リン恒常性を維持する臓器間ネットワークとその破綻がもたらす病態の解明」の一環で行われた。

(早川厚志)