ウェスチングハウス破綻、東芝英子会社の事業への影響は

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東芝の米原子力発電子会社、ウェスチングハウスは3月29日、米連邦倒産法第11条の適用をニューヨーク州南部連邦地方裁判所に申請した。その大きな原因となったのは、ジョージア州とサウスカロライナ州で建設中の「AP1000」型原子炉の建設費用の問題だったとされる。

東芝が抱える原子力発電事業の損失額は既に60億ドル(約6630億円)に上っており、今後さらに、100億ドルに膨らむ可能性がある。だが、ウェスチングハウスの経営破綻は先行きの状況に関する不透明感を増すものの、米国の新規原発建設に歯止めをかけることになるとは考えにくい。

原子炉は中国や韓国、英国を中心に世界中で建設されており、今後も新たな計画は出てくるだろう。原発関連の事業が失敗に終わるのは、その他の多くの産業と同様、関連技術そのものではなく、経営陣の不手際や資金繰りの問題、不適切なビジネス手法が原因だ。

太陽光発電パネル・メーカー、ソリンドラ(Solyndra)の破綻は、技術的な問題が原因ではなかった。シアトルのトンネル建設が中断しているのは、シールド掘削機「バーサ(Bertha)」が理由ではない。ウェスチングハウスは建設業者にエンジニアリング大手の米ショー・グループを選出したが、これが原発建設事業の完成時期を遅らせ、予算が大幅に膨らんだ「誤り」の原因だ。

他国では事業を継続

ただし、ウェスチングハウスは全てを失ったわけではない。アジア、欧州、中東、アフリカでの事業は、経営破綻の影響を受けない。

中国の三門原子力発電所と海陽原子力発電所で建設中の「AP1000」型原子炉は、完成に向けた最終段階にある。さらに、東芝傘下の英電力事業会社、ニュージェネレーションがイングランド・カンブリア西部で進める原子力発電所の建設事業「ムーアサイド・プロジェクト」に関連して、ウェスチングハウスは英規制当局から原子炉の設計に関する承認を得たばかりだ。

環境問題に関する研究や政策提言を行うエンバイロメンタル・プログレス(Environmental Progress)のマイケル・シェレンバーガーは英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で、ウェスチングハウスの破綻は業界の統合に向けた機会を提供するものだと述べている。

つまり、「(今回の)危機は原子力発電そのものだけでなく世界のために、原子力発電を救う機会になる」というのだ。原発は標準化を通じて自らを救うことになるという。

歴史を通じて、一つのシンプルな設計方法で何度も繰り返し同じものを作っていくことは、原子力をはじめさまざまな技術を手頃な価格で提供可能なものにしてきた唯一の方法だ。そして、それは間違いを減らす方法でもある。

シェレンバーガーが指摘するとおり、原子力発電の方法に関する標準化の重要性は1970〜80年代にかけて、フランスで実証された。原子力発電所の建設コストは設計を変更すれば上昇するが、同じ建設業者が同じ設計の原子炉を建設すれば、建設コストは低下することが確認できた。1990年代の韓国、ここ10年間のアラブ首長国連邦の例を見ても同じことが言える。

過去に手掛けたものと同じ設計で建設することのもう一つの利点は、使用する部品やサプライチェーンについて既に知識があるということだ。それが、実質的なイノベーションとコスト削減につながる。

こうしたサプライチェーンがあれば、ウェスチングハウスが手掛けるジョージア州ボーグル原発とサウスカロライナ州のVCサマー原発でも、コストの超過は防ぐことができたかもしれない。

原発などの建設プロジェクトに必要なのは、経験豊富な人材と企業だ。そして、技術者たちの意見を聞く態度だ。東芝が選んだショーやその代表者のような人物の話に耳を貸すことではない。