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東京大学は、同大学大学院新領域創成科学研究科の藤本博志准教授らの研究グループが、東洋電機製造、日本精工と共同で、道路からインホイールモータ(IWM)に直接、走行中給電できる「第2世代ワイヤレスインホイールモータ」を開発し、世界で初めて実車での走行に成功したことを発表した。

世界初となる同技術は、クルマのホイール内部に駆動モータを配置するIWMタイプの電気自動車へ、道路に設置したコイルから「磁界共振結合方式」でワイヤレス給電するもの。

電気自動車の「従来のガソリン車などに比べ充電1回あたりの航続距離が短い」という課題をクリアするため、バッテリの搭載量は必要最小限にとどめ、足りない分のエネルギーを道路に設けたコイルから走行中にワイヤレスで送って補う「走行中給電」の実現に向け、世界的に多くの研究が行われている。これまで検討されてきた走行中給電の多くは、道路に設けたコイルから車体の底に装着した受電コイルに電力を送り、車載バッテリへ給電をするものであった。

今回、同研究グループが開発した「第2世代ワイヤレスIWM」は、道路のコイルから車体のコイルへ給電するのではなく、道路のコイルからIWMに直接、走行中ワイヤレス給電するもの。これにより、安全性、環境性、快適性に優れる電気自動車を実現するという。

走行中給電では、道路のコイルとクルマの受電コイルの相対位置が走行状況によって変化する。「第2世代ワイヤレスIWM」では、送受電コイルの位置ずれに強い磁界共振結合による方式を採用し、車体に上下運動が生じても道路と受電コイルとの距離は一定に保たれるようになっている。

また、電気自動車は減速時のエネルギーを回収できるうえ、走行中給電が加わるとIWMではエネルギーの出し入れが頻繁に行われることから、IWMに蓄電デバイスを内蔵することで、安定的な動作と高効率化を可能となっている。蓄電デバイスには、大電力を扱うことができ、充放電回数が多くても劣化しにくいリチウムイオンキャパシタを採用している。

さらに、ワイヤレス給電を構成する変換器全てにSiCを採用したのに加え、モータの回転軸とホイールの回転軸をずらした新しい構造のオフセット軸減速機を内蔵したハブ軸受ユニットによって小型化を実現し、1輪あたりのモータ出力が12kW(4輪すべてに装着すると48kW)と、実験車両のベースである市販の電気自動車と同等の走行性能が得られるということだ(実験車両は前輪2輪のみ装着)。また、車載バッテリに走行中給電する方法と比べて1つの道路側コイルから送る電力は小さくできるので、道路側設備の簡易化にもつながるという。

なお、走行中給電は、高速道路において走行中給電で得たエネルギーのみで走行したり、車載バッテリを充電しながら走行したり、あるいは、市街地の信号のある交差点付近で給電してIWMにエネルギーを蓄え、発進時の加速エネルギーとして使うといった利用法が考えられる。ほかにも、路線バスや空港・工場といった決まったルートに走行中給電設備を設置して、このルートを走行する車両のバッテリ搭載量を大幅に減らすことも可能となる。同研究グループは、今回提案した走行中給電の新技術が、IWMの普及と実用化の大きな後押しとなり、究極の電気自動車としてクルマ社会の安全・安心や地球環境の保全に貢献することを期待しているということだ。

(早川厚志)