Perfume主演ドラマ『パンセ』が“秀作”となった理由 心優しい作品世界はどう生まれたか?

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 3月31日・4月1日にテレビ東京で放送されたスペシャルドラマ『パンセ』は、年度末・年度始めをまたぐのに相応しい秀作だった。出会いと別れ、今までの生活の終わりと新たな出発。新年度とはいえ、別段変わらない日常だったとしても、やはりどこか違う、何かを始めることができるような気がするのが4月1日なのである。

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 主演はテクノポップユニット「Perfume」のあ〜ちゃん、かしゆか、のっちの3人。彼女たちのアート性の強い最先端技術を駆使したライブやダンスパフォーマンス、楽曲は、日本だけでなく世界的にも注目されている。だが、それとは対極にある、ドラマでも垣間見ることができるあ〜ちゃんの広島弁まじりの柔らかい声、今の時代を生きる等身大の女の子としての親しみやすさが、彼女たちが愛される大きな魅力の1つなのではないかと感じる。

 小学校の頃からの友人であるOLのどんちゃん(あ〜ちゃん)、実家手伝いのおかみど(かしゆか)、フリーターののりぶう(のっち)の3人が格安で手に入れた夢の豪邸には、オプションとして勝村政信演じる“ひきこもりのオッサン”力丸がついていた。どうやら両親が力丸ごと家を売ってどこかに行ってしまったらしい。こんなとんでもない設定が妙に愛くるしく感じるのは、『野ブタ。をプロデュース』『昨夜のカレー、明日のパン』、『富士ファミリー』などの名作を産みだしてきた木皿泉が脚本を手がけているからだろう。また、勝村政信が、あまりに不器用で優しい、子供のように純粋なオッサンをほどよい熱度で好演していたことも大きい。

 最後に吉田拓郎の「どうしてこんなに悲しいんだろう」が流れたときには、歌詞の中にある、「自由だからこそ淋しいたった1人の夜」を共有し、ドラマの登場人物たちの優しさに包まれホロリとする。1971年の曲らしいが、これほどこのドラマに相応しい曲はないだろう。この曲の主人公は世界に馴染めずに1人孤独に生きてきた力丸のようだし、社会人として生活しながらも「ここではないどこか」へ行きたかった3人の女の子たちのようでもある。

 興味深かったのは、力丸の“マネーロンダリング”だ。力丸がお金を丁寧に磨き上げ、硬貨はアルミホイルで包み、お札はセロハンで包むことを、のりぶうは「マネーロンダリング」と言う。そのことを聞いた片桐はいり演じる自称・家政婦が「ウォッシング?」と問いかけるが、すぐさまのりぶうが「ロンダリング」と言いなおす。マネーロンダリングとは不正に得た資金の出所をわからないようにする「資金洗浄」のことだが、それは、父親の裏金問題が原因で家から出なくなってしまった力丸にとって、自分が嫌になった世の中を巡る、汚れたお金を洗浄するという意味で相応しいと言えるだろう。

 3人の力丸との関り方はとても面白い。干渉しすぎるわけではない絶妙な距離感で、「面倒くさいよね、力丸」と言いつつ、彼の行っているささやかなことをすごいことだと言い、彼の幸せを願う。彼が何十年もかけて作り上げてきた宇宙を模した部屋のレイアウトのことを、宇宙であり、スノードームの中だと表現する。「ここではないどこか」、力丸の「行きたかった場所」が、彼が作り上げた宇宙なのだと認めることで、彼のこれまでの人生を偉業として彼女たちはさりげなく讃えるのである。

 力丸は、父親が作ったレモンを、父親の通勤鞄いっぱいに詰め、何十年かぶりに外に出て行く。そしてそれをお金に換え、そのお金を4人で食べるケーキに換える。それは本当に彼がしたかった「マネーロンダリング」だったのかもしれない。

 それを、宇宙からの帰還よろしく横断幕で迎える主人公3人の「おかえり」の笑顔は本当に美しい。そして恐らく彼女たちも、これから今までと違った「自分たちの行きたかった場所」を作っていくのだろう。

 ここはサンクチュアリだ。ちょっと「田舎の匂いがする」その場所はなんだか非現実的で、そこには中年ひきこもりの問題など社会で取り沙汰される様々な問題は存在しない。この優しさで満たされる不思議な世界は、木皿泉の世界であり、Perfumeの世界なのかもしれない。(藤原奈緒)