DeNA・ラミレス監督【写真:荒川祐史】

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就任1年目でCS初進出、後ろを向かないラミレス監督の思考のワケ

 3月31日に開幕したプロ野球。その中でセ・リーグの台風の目として期待されているのが、DeNAだ。昨季、上位3チームに与えられるクライマックスシリーズ(CS)に球団創設5年目にして初進出。侍ジャパンで4番を務めた25歳の主将・筒香嘉智外野手を中心とした若いチームは今季、19年ぶりのリーグ優勝が期待されている。指揮を執るのは、アレックス・ラミレス監督だ。

 現役時代、明るいキャラクターから「ラミちゃん」の愛称で親しまれ、外国人史上初のNPB2000本安打を達成した名打者は昨季、初めて監督に就任。戦前の予想を覆して3位に入り、1年目からCS進出という快挙を演じた手腕は、大きなインパクトを与えた。

 若いチームに躍進を呼んだ一つの要因は、ラミレス監督の「後ろを向かない『言葉学』」である。

 指揮官が発する言葉は、ことごとく前向きだった。負けても、試合後の最後は「Tomorrow is another day(明日は明日の風が吹く)」と締めくくり、前日負けた試合を振り返っても「Today is a new day(今日は新しい一日だ)」と呪文のようにポジティブな言葉を口にする。努めて後ろを向かず、決して悪い流れを引きずろうとしない。

 なぜ、ポジティブな言葉にこだわるのか。ベネズエラ出身らしいラテンのノリも一つにあるが、それ以上にラミレス監督がこだわっていたのは「選手の若さ」にある。

「ミスをしても咎めることはない」―指揮官が明かした理由とは

 昨季、チームを支えたのは、野手では桑原将志、宮崎敏郎、倉本俊彦、戸柱恭孝、投手では石田健大、今永昇太ら、いずれも20代の経験の浅い選手たち。シーズンも終盤に突入した夏頃、指揮官は「彼らがミスをしても、それを咎めることはない」と話していた。選手を指導する立場としては、大胆な発言にも映る。

 しかし、指揮官は理由をこう明かしてくれた。

「ジャイアンツのようなチームと比べたら、彼らは若く、経験が浅い。スタメンの半分の選手が初めてレギュラーとして戦っていることになる。そんな選手たちに監督がミスを責めても、あるいは逆に頑張れと言葉をかけても、重圧に感じるだけだろう」

 現役時代に在籍していた巨人のような常勝軍団と比較すれば、DeNAではプロでの成功体験が少ない選手が多い。そんな若い選手たちが全力を振り絞っている中、現場で一番の権力者である監督が、余計に言葉をかけても重荷になるだけ。それを知っていたから、当時は練習中に野球中に冗談も交えて選手とコミュニケーションを図ることに努めていた。

 若く経験の少ない選手に自信を与え、能力を引き出していく。ラミレス監督の「後ろを向かない『言葉学』」はDeNAにとって最大限にマッチした指導法と言えるだろう。果たして、就任2年目の今シーズン、どんな言葉で選手を盛り立て、躍進を見せるのか。グラウンドから聞こえてくる指揮官の言葉に耳を傾けたい。