かつては高級車に採用されていた工芸品のエンブレム

クルマには必ずといっていいほど、エンブレムが付いている。最近は樹脂製のものが主流で、グレードによってはステッカーだったりして、風情はあまりなかったりする。一方、高級車は金属製など風格からして違うが、なかにツルツルしたタイプのものがあるのをご存じだろうか。

それが七宝焼きのエンブレムだ。読んで字の如く、陶器の一種で、金属にうわぐすりを付けて焼くことで、ガラス質やエナメル質に仕上がることから硬くて耐久性があり、エンブレムにも向いている素材である。

自動車が誕生した欧州では、創生期には色々なところに工芸品の技術が使われていた。エンブレムもその代表格で、クリスタルガラスのマスコットなんていうのもあった。

七宝焼きもその流れで採用されたもので、七宝の由来自体が、宝石にも勝るとも劣らない品質に由来するといわれており、高級車のエンブレムとして最適だった。ちなみにトヨタのお膝元である愛知県には七宝町という街があるが、こちらは発祥の地ではなく、生産が盛んだったことから付けられた名前である。

戦後ともなると、高級車以外にも採用されるようになってくる。日本車でも多くの採用例があり、伝説の名車としてはトヨタ2000GTのエンブレムは七宝焼きだし、身近なところではMR2にも採用されていた。最近ではあまり見かけなくなってきたが、いくら硬い陶器質といっても、長年使っていると割れてきたり、剥げてきたりするし、色あせもする。こういったところもコスト以外に採用されなくなってきた理由かもしれない。