ハリルジャパンの完成度(5)
岡崎慎司の判定=不明

 W杯アジア最終予選、ホームで行なわれたタイ戦(4-0)でのゴールは、FW岡崎慎司(レスター/イングランド)にとってホッとするものがあったはずだ。


タイ戦ではゴールを決めて、存在感を示した岡崎慎司 所属のレスターでは、昨年12月のサンダーランド戦以来、ゴールは奪えておらず、日本代表においても、W杯予選では昨年3月の2次予選、アフガニスタン戦(5-0)以来のゴールだったからだ。しかも今回の得点は、国際Aマッチ通算50点目という記念すべきものだった。

「まあ、チーム(レスター)で点が取れてないし、代表でもなかなか先発で出られず、途中から出場してチャンスがあっても決められない状況が続いていた。点が取れないというのは、FWとしてね……。それで、今まで不完全燃焼だった面があるんですけど、今日はフル出場できて、点も取れて、FWとして悪くない役割を果たせたかな、と思います」

 最終予選再開後の初戦、アウェーのUAE戦(2-0で日本が勝利)でFW大迫勇也(ケルン/ドイツ)が負傷して離脱。それゆえ、岡崎にチャンスが回ってきたわけだが、それを生かして結果を出したことは、自らの評価を改めて高めたことになる。

 しかし、1トップで戦うことになれば、おそらく今後も大迫がファーストチョイスになるだろう。ハリルホジッチ監督が理想とするのはポストプレーヤーであり、ポゼッションと速攻を併用する日本のスタイルにも、前でしっかりボールを収めてくれる大迫のようなタイプのほうがハマるからだ。

「今回(の2試合では)、自分はサコ(大迫)がやっているプレーを参考にしたいと思っていた。そういう意味では、今日(タイ戦)は参考にしたプレーができていたんじゃないかなと思いますし、そこ(前線の中央)で逃げずに戦うことで、チームを助けられるというのも、今日よくわかった。まだまだですけど、1トップをもっとやりたいなぁって思ったし、(レスターでも)今ある現状にも耐えて、また代表で試合に出て、ゴールを取りにいきたいな、と思いました」

 岡崎は岡田武史監督時代、南アフリカW杯で”1トップ失格”のらく印を押され、本田圭佑(ミラン/イタリア)にポジションを奪われた苦い経験がある。今も、ポストプレーでは大迫を上回っているとは言えない。

 だが、タイ戦では体を張ってポストプレーをこなしつつ、裏のスペースや際どいところを狙い続けるという自分の得意なプレーでも勝負していた。ゴールとなったヘディングシュートは、まさにそのプレーの延長線上で得たものだ。敵DFと駆け引きしながら、わずかなスペースをニアサイドに見つけ、そこに体ごと突っ込んで決めた、岡崎らしいゴールだった。

 FW久保裕也(ゲント/ベルギー)ら若手の活躍があって、中堅はもちろん、ベテランもうかうかしていられない状況になっているが、岡崎はゴールを決めたことで、代表の中での自分のポジションを取り戻すきっかけをつかんだようだ。

 一方、チームはどうだろうか。

 最終予選後半戦のスタートとなる、今回のUAE戦とタイ戦は絶対に負けられない試合だった。アウェーのUAE戦では理想的な勝利を飾ったが、タイ戦ではミスが目立って相手に押されるシーンも多かった。結果は大勝でも、内容的には今後に向けて不安の残るものとなった。

「予選では勝ち切ること、こういう(タイ戦のような)サッカーになっても、結果を出して(予選を)突破していくことが何より大事。ただ、チームにはもっと成長させていかなければいけないことがある。選手は、もっと判断を速くしないといけないし、もっと組織的に戦わなければいけない。今は個の力だけで戦っているので、そういう部分では物足りない面がある」

 W杯予選では、第一に勝つことが求められる。しかし同時に、チームの完成度を高めていくことも重要な作業となる。

 例えば、ザッケローニ監督時代は、メンバーをほぼ固定して予選を戦った。そうすることで、選手間の連携により磨きをかけ、チームとしての完成度を、1段でも2段でも上げていこうという狙いがあった。その結果、主力選手たちの能力が高かったこともあり、チームの完成度は最終予選時には「史上最高」と言われるほどのレベルまで上がった。そして、難なくW杯の出場権を獲得した。

 現在の日本代表は、主力と目されていた選手が負傷して戦列を離れたり、所属チームで出場機会を失ってコンディションが整っていなかったりして、調子のいい選手をうまく組み合わせてやりくりしている。メンバーを固定しようにもできない状況にあって、目の前の試合に合わせて出場選手やシステムを編成している印象だ。ロシアW杯まで1年と数カ月しかない中で、はたしてそのやり方でチームの完成度を高めていけるのだろうか。

「ハリルホジッチ監督のやり方は、確かに流動的ですね。ただ、メンバーを固定するのも、流動的にやるのも、両方にメリット、デメリットがあると思うんです。今は、試合ごとにシステムも、出場する選手も変わる。そうすると、チームの成熟度は低くなるかもしれないけど、その分、常に競争になるので、選手のモチベーションは上がる。そこは(メリットとして)大きいのかな、と思います」

 そんな中でも、ここに来てレギュラーの顔ぶれはだいぶ固まりつつある。センターバックは、予選がスタートした当初から吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)と森重真人(FC東京)のコンビでずっと変わっていない。競争が激しかった攻撃陣も、1トップが大迫、2列目の左が原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)、右が久保、中央は香川真司(ドルトムント/ドイツ)という面子で固定されていきそうだ。

 ようやくチームの枠が見えつつあるが、ハリルホジッチ監督は”ジキルとハイド”。

 石橋を叩いて渡るような手堅さ感じさせる一方で、大事な最終予選初戦で代表初出場の大島僚太(川崎フロンターレ)をいきなり先発させたり、今回のUAEでも所属チームで出番のないGK川島永嗣(メス/フランス)を突然起用したり、タイ戦ではサイドバックの酒井高徳(ハンブルガー/ドイツ)を代表では一度もやったことのないボランチで使ったり、無謀とも言える選手起用が目立つ。

 今後もメンバーについては、どうなるかわからない。しかも、W杯までおよそ1年という時期にあって、特別な戦術もなく、タイ戦のような、行き当たりばったりのサッカーをしているようでは、W杯本番が思いやられる。

「今は、戦術というよりも、出場する選手によってサッカーが変わっているイメージかな。それでも、現実的に勝っていかなければいけない状況の中で、今のやり方、戦い方は捨てることができないですから。(チーム作りや戦術については)W杯出場が決まったあと、どうするのか、もう1回考えていくことが必要で、それが大事になると思います」

 ザッケローニ監督時代のチームの仕上げは、最終予選を戦ったチームに、本大会1年前に開催された東アジア選手権で結果を出した選手を加え、チームの停滞感やマンネリ感の払拭を図るとともに、最後にチームをワンランク上げるための競争をうながした。その中から、山口蛍(セレッソ大阪)が台頭した。

 今は流動的にチームを作る中で、今野泰幸(ガンバ大阪)という”オプション”が生まれたり、久保という”新風”が頭角を現したりしている。メンバーを固定した中では登場できなかった可能性もあり、その点ではメリットを生かしたチーム作りができているかもしれない。

 だが、勝利が最優先される中にあっても、ある程度の戦術や、チームとしての連係が見えてこないと、岡崎が言う「予選後にW杯をにらんでのチーム作りをする」ということも、ままならないのではないか。代表チームが招集できる期間や回数を考えれば、1年という時間はあっという間だ。

 最終予選は残り3試合。その中で、少なからずチームの方向性は見えてくるのだろうか。

ハリルジャパンの完成度(1)長谷部誠の判定>>
ハリルジャパンの完成度(2)吉田麻也の判定>>
ハリルジャパンの完成度(3)原口元気の判定>>
ハリルジャパンの完成度(4)西川周作の判定>>

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