2017年4月1日、アメリカ・テネシー州のフローズンヘッド州立公園で「世界一過酷な耐久レース」として知られるバークレイ・マラソンが開催されました。その過酷さは、30年にわたる大会の歴史の中で完走者がわずか15人という事実がはっきりと示しています。2017年大会の完走者もわずか1人だけで、あと少しで完走できそうだった選手も規定の時間にわずか6秒足らずに失格になってしまったそうです。

2017 Barkley Marathon features one finisher, heartbreak for Gary Robbins - Canadian Running Magazine

http://runningmagazine.ca/2017-barkley-marathons-recap/

バークレイ・マラソンは、1周20マイル(約32km)のコースを60時間以内に5周、つまり160kmを走破するという過酷なレースです。設定されるルートは険しい山道ばかりで、毎回新しいルートが設定されるとのこと。あまりにアップダウンが激しいため、斜面を登った高度を全て足し算した「獲得標高」はなんと1万8000メートルにもおよぶとのこと。これはつまり、富士山を60時間以内におよそ5回弱登ることに相当すると考えると、このレースの無茶っぷりが実感できるはず。

そんなバークレイ・マラソンの2017年大会を規定のタイム内で唯一完走し、優勝を収めたのはアメリカ・ワシントンDC出身のジョン・ケリーさん。ケリーさんのゴールタイムは59時間30分33秒だったとのこと。そして、途中までケリー氏と協力して完走を目指していたカナダ出身のゲイリー・ロビンスさんは、なんとわずか6秒間に合わずにゴールならず。しかも、雪と霧という悪天候の中でロビンスさんはコースを見失ってしまい、誰の補助を受けることもなくコースを走りきったのですが、ルールで定められたルートでゴールできなかったため、5周目のランはカウントされないという結果になってしまいました。



ロビンスさんが「ゴール」した瞬間の様子がムービーに収められています。道の向こうからラストスパートで走ってくるロビンスさんに観衆は拍手を送りますが、ゴールにはたった6秒届かず。そのまま地面に倒れ込んでしまったロビンスさんにルートを誤ったことを伝えなければならないという状況に、ゴール地点の空気は極めて張り詰めたものになっていることが感じ取れます。途中で「He has all the pages」という場面があるのですが、これはチェックポイントを通過したことを示すために、書くポイントに置かれた本のページを破くルールとなっており、そのページを全て持っていると言う意味。途中まではきちんと走れていたロビンスさんでしたが、最後の最後で道に迷い、ゴール方法を間違えるに至るという、まさに悲劇のゴールとなっているわけです。

Gary Robbins misses the Barkley Marathons cutoff by six seconds(Part 1 of 2) Chaos and heartbreak. Gary Robbins' finish at the Barkley Marathons comes down to seconds and confusion. #BM100 #BarkleyMarathons Salomon Running RECAP: http://runningmagazine.ca/2017-barkley-marathons-recap/

(Note: This is an edited version of the original video, as it included footage of the course map.)Canadian Running Magazineさんの投稿 2017年4月3日


その後、大会の創始者であるゲイリー"ラズ"カントレイル氏と確認を行うロビンスさんの様子も。6秒足りなかったこと、そして、「1位の走者とは逆回りで5周目を走らなければならない」というルールに従って走ったものの、道を誤ったためにゴールのゲートに反対側から到着してしまったために所定をルールを満たしていないとみなされ、失格を宣告されたロビンスさんは目頭を押さえてしまいます。しかし、健闘をたたえる周囲の拍手を受け、ロビンスさんは「easy」と書かれた大きなボタンをプッシュ。すると「That was easy (楽勝だったぜ)」という音声が流れて周囲が笑いに包まれます。最後に、優勝者のケリーさんが現れ、ロビンスさんの悲しみを分かち合うような深いハグをするのですが、その様子は見ているこちらが感極まってしまいそうなほど。

Gary Robbins after the 2017 Barkley Marathons(Part 2 of 2) He got all the pages, made it to the yellow gate, but missed by seconds. Still, Gary Robbins held his head high in the end. One of the most extraordinary finishes you'll ever see. #BM100 Salomon Running #BarkleyMarathons RECAP: http://runningmagazine.ca/2017-barkley-marathons-recap/Canadian Running Magazineさんの投稿 2017年4月3日


スタートから4周目まで、ロビンスさんとケリーさんは一緒にコースを走ってペースをキープしていました。最初の2周を通過した際のタイムは20時間18分52秒、4周目を走破した時のタイムは46時間26分07秒だったとのこと。全ての周回に設定された「12時間」という規定タイムに対して、両者はいずれも10時間以内で通過するという良いペースを保っていました。そして最後の5周目、ルールでは「前のランナーと逆の方向で周回しなければならない」と定められています。4周目をトップで通過したケリーさんは時計回りを選択。そしてそれに続くロビンスさんは、反時計回りで最後の20マイルに挑みました。

最後の周回は非常に気象状況が悪く、雪や霧が出た上に気温がグッと冷え込んだそうです。ケリーさんは寝不足の影響で、コース途中で半ば意識を失うように眠りに落ちてしまったとのこと。そしてゴールまであと1時間半という時に、あまりの寒さにケリーさんは目を覚まします。そしてゴールを目指して再び走り始めたのですが、体温を奪われることを避けるために、立ち木に引っかかっていたスーパーのビニール袋を上着として重ね着し、さらに拾ったニット帽をかぶってゴールを目指しました。

一方、ロビンスさんは悪天候の中でコースをミスし、2マイル(約3.2km)をロスするという不幸に見舞われます。参加者は携帯電話やGPS装置を所持することを認められておらず、コース上に置かれたサービスポイントは2カ所の給水所だけ。コンパスと地図を頼りにルートを自分で確認しなければならず、そんな中でロビンスさんは痛恨のミスコースを侵してしまったようです。



こうなるともはや、完走することはおろか、出場するということ自体がすでにとてつもないレースということになりますが、そのエントリー方法がまた一風変わっているというのがこの大会の特長です。大会には誰でも参加できるわけではないのですが、その審査方法がまず変わっています。参加資格らしい条件はないのですが、エントリー希望者は「なぜ私がこの大会への参加を認められなければならないのか」というテーマのエッセイを提出します。そしてこの審査を通過した人にエントリー用紙が送付されるのですが、その人数はわずか40名が上限とのこと。そして、エントリーを行う際には、なぜか微妙な「1ドル60セント(約180円)」という謎のエントリー料を支払って参加を申し込むようになっているそうです。

その他にも、「初参加者は、自身が住んでいる州や国の自動車ナンバープレートを持参して会場に掲示する」「完走したことがあり、再びエントリーする人は、"ラズ"に差し出す『キャメル』銘柄のタバコを持参しなければならない」「スタートの合図は、"ラズ"がたばこに火を付けたとき」など、一風変わった自由な雰囲気の漂うレースになっているようです。

例年どおりなら、2018年のバークレイ・マラソンは2018年4月に開催されるはず。我こそは、と思う人は公式サイトをチェックしておくと良いかもしれません。

The Barkley Marathons