L.A.マラソンに参加し、完走してきました。42.195キロの道のりは、自分と身体との勝負でした。

これまでの人生で経験した、最も過酷な試練だったと言えるでしょう。いつか走ってみようと思っている人のために、私が今回のマラソンで学んだことを共有します。

1. 会場には早く着くこと


L.A.マラソンでは午前7時にドジャー・スタジアムを出発します。ランニング仲間と私は、ストレッチやウォームアップができるようにと、出発1時間前の6時に到着しました。それでも、もっと早く来ればよかったと後悔することに。

スタートラインにはすでに何千人もの人が押し寄せており、タイムに応じて事前に決められていた出発地点までたどり着くことができなかったのです。そのせいで、本来よりも遅いグループに紛れてのスタートになってしまい、レース最初の数キロは非常にストレスがたまりました。

それだけでなく、レース出発前も時間に追われていました。トイレは長蛇の列で、ストレッチは急ぎで済ませることになりました。

出発地点に着いておきたい時間を決めたなら、少なくともその30分前には到着するように出かけることをお勧めします。


2. 序盤は調子を気にしない


もちろん、最初から全力疾走をする気はないでしょう。最初の数キロは非常に混み合っていて、とてもじゃないけど他のランナーを抜くことはできません。

この時は抜ける隙間を見つけるために左右を見て体力を消耗するのは避けるのが賢明。ここはウォーミングアップと割り切って、その位置を保ちましょう。6から8キロも進めば群れがバラけ始め、抜かそうと思えば抜かせるようになってきます。


3. 周囲に気をつける


走るときはいつでも周囲に気をつけるべきですが、今回のようなビッグレースではいつも以上に注意が必要です。

走っている間は常に集中力を削ぐものが目に飛び込み、無視するのは非常に困難でした。

どこを見ても、面白い応援看板があったり、ロックバンドや中国の竜の踊りが出ていたり、スポーツドリンクの代わりにビールを差し出す人がいたり。和太鼓を叩いている人もいました。沿道に立つ牧師さんには、メガホンで「あなたは地獄に落ちる」と言われました。何がおもしろいって、その後、予言通りに地獄を見ることになったのですが。

走るとき、特にレース中は集中しないと危険です。他のランナーをかわし、投げ捨てられたペットボトルをまたぎ、バナナの皮をよけることぐらいは、そこまで注意しなくてもできるでしょう。問題は、お祭り騒ぎに飲み込まれないように自分を高めること。1回転んだだけで、あなたのレースだけでなく、誰かのレースも台無しにしてしまうかもしれません。


4. 最悪の事態を想定しておく


7マイル(11.3km)地点で、最悪の事態が発生しました。右ひざをひねったのです。高校時代に捻挫をしてから癖になっていたものですが、ここ数カ月のトレーニング中は問題ありませんでした。それなのに、レースの序盤で痛みを感じたときは、驚きとともに失敗を自覚しました。

もしものためにランニングポーチにサポーターを入れていたのが不幸中の幸いでした。サポーターを装着したおかげで、少し痛みをかばう必要はあったものの、何とか走り続けることができました。

しかし、左脚への負担が溜まっていたのでしょう、14マイル(22.5km)地点で、今度は左ひざをひねりました。両ひざを痛めてからは、松葉づえをついているような走り方になってしまいました。助けになるものは何もありません。痛みと違和感がひどくなり、やめてしまおうと本気で考えました。

実際、本当はやめるべきだったのでしょう。痛みを我慢してまで続ける必要はないはずです。それでも私は、走り続けることを選びました。繰り返しますが、これは、おすすめできることではありません。

コース途中の救急テントで、痛み止めをもらって飲みました。でも、もらえるのは2錠までで、十分ではありませんでした。その後、自転車に乗った救護員が膝に局所鎮痛薬をスプレーしてくれて何とか痛みをしのぐことができました。

もし時間を戻せるなら、レース前に膝をテーピングして、サポーターをもう1つ持ち、痛み止めを用意しておきたかったと、今になって思います。


5. とにもかくにもトレーニングが肝心


本気のトレーニングなしでマラソンを走ることは、決してやってはいけません。私は1年かけてトレーニングをしましたが、結果的に不十分でした。レース終盤はもうボロボロで、脚から火が出ているかのようでした。

走り終えた今もその感覚が残っており、少なくともあと数日は、この痛みという代償に付き合わなければならなそうです。

脚の筋トレは必須です。有酸素運動のレベルでは、私の健康状態は良好でした。でも、レース中は想定外のコンディションになってしまいました。

実際、自分の息切れさえ感じることができず、ひたすら我慢比べが続いたような状態でした。両脚が痛みと疲労で壊れてしまいそうになりながら、なんとか機能させておけるよう戦いました。

つまりマラソンとは、ランナーとしての優劣だけでなく、止まりたい欲望にどれだけ抵抗できるのかが試されているのです。脚が強いほど、長い時間抵抗することができます。その強さを得るためにも、トレーニングをおろそかにしてはいけません。


6. 出費はむしろモチベーション


大会への出場料はかなり高額です。人気のあるマラソンの場合、1万円から2万円ぐらいが一般的。それ以外にも、トレーニングのためのグッズなど、いろいろお金がかかります。

自分の走り方に合ったシューズは1万円以上しますし、ポーチ、ウォーターボトル、トレーニング用のサプリなども必要です。ゼロから始める場合、おそらくトータルで6万円近くに上るでしょう。大会会場への交通費も必要です。

人によるかもしれませんが、少なくとも私の場合、お金をかけていることがモチベーションの源泉になりました。3000円程度であれば、膝の痛みが出たときに「もういいや、また次回に」とやめていたでしょう。

でも、「リタイアのために何万も払ったんじゃない」と言い聞かせることで、やめたいという自分を何とかなだめることができたのです。ですから、お金がかかることを恐れる必要はありません。走り始めれば、あなたにも私の言っている意味がわかるはずです。


7. 何らかの痛みは避けられない


どんなにトレーニングを積んで、どれだけ計画を立てても、必ず何らかの痛みは生じます。痛みを避けて通ることはできないのです。痛みの種類は、長時間トレーニングをしたあとのそれとは異なります。

筋肉が痙攣しながら悲鳴をあげ、アスファルトに打ち付けられるたびに繰り返す衝撃に骨が苦しめられ、18マイル(29km)あたりからは溶岩の中を進んでいるような感覚に陥ります。

レース中のこのような痛みは避けられないと、心の準備をしておきましょう。そして、それが何日も続く覚悟を。


8. それでも挑戦する理由


完走から2日たちますが、いまだに身体は悲鳴をあげています。下の階にあるデスクに行くための気力がなく、この記事はベッドで書いています。そんなに苦しいのに、あえてマラソンに挑戦する理由は何でしょうか?

それは、痛みだけでなく、世界の頂点にいるような感覚を味わえるから。

マラソンを走ることは、長い間私のToDoリストの1つでしたが、実際に挑戦することを決めた理由はほかにもあります。気力で乗り越えなければならないほどの難題に、挑戦してみたかったのです。身体的な逞しさだけでなく、メンタルの逞しさを試したかったのです。

ゴールラインを越えてメダルを受け取ったとき、感情を抑えきれず、涙があふれてきました。

その理由は主に痛みですが、自分に対する誇りでもありました。自分で何かをやると決め、懸命に取り組み、それを成し遂げたのです。かつて、これほどまでの達成感を感じたことはありませんでした。

史上最高の困難を達成したとき、それは自信につながります。これからは、人生で何らかの困難に出くわしても、「自分はマラソンをやり抜いたんだ。だから、これもどうにかなるはずだ」と思えるでしょう。


おまけ


レース当日は身分証明書や保険証を持って走りましょう。貴重品を預けるときに、一緒に預けてしまわないように。

怪我などの緊急事態で必要なのはもちろんですが年齢証明書にもなるため、忘れた私はゴール後のビアガーデンに入ることができずに悔しい思いをしました。私の二の舞にならぬよう、皆さんは忘れないでくださいね。


Patrick Allan(原文/訳:堀込泰三)
Photo by Shutterstock.