ルヴァン杯の広島戦からスタメンを勝ち取ったエデル・リマは、公式戦3試合連続の無失点に貢献している。(C)J.LEAGUE PHOTOS

写真拡大 (全2枚)

 甲府は外国籍選手の補強に苦しんできたクラブだ。「ブラジル人ガチャ」などと揶揄される目まぐるしい出入りもしばらく続いていた。過去にはバレー、ダヴィのような『大当たり』も引いている。ただ近年のJ1残留はマルキーニョス・パラナのような「大きな期待はできないけれど計算できる」選手の活躍がひとつの支えになっていた。

 そんなクラブにやってきた、良い意味で計算不能なブラジル人がエデル・リマ。獲得前に現地で彼を視察した吉田達磨監督が「3バックの左もウイングバックもできる。ボランチもそつなくやってくれると思う」と評していた左利きのディフェンシブプレイヤーだ。
 
 ただ、試合に出るまでは「大丈夫だろうか?」という不安が強かった。まずJリーグ未経験の新戦力は、まったくフィットしないで終わることが多い。
 
 加えてエデル・リマのパーソナリティも掴みづらかった。キャプテンの山本英臣は「熱いモノを表に出す選手ではない。『どうなのかな?』という感じも正直あったりする」と彼のキャラクターを説明する。ブラジル人選手には陽気なタイプも多いが、彼は無表情で、いかつい風貌と相まってやや近寄り難い空気を漂わせていた。
 
 さらにエデル・リマは1月末のトレーニングマッチで負傷し、開幕時も別メニューだった。外国籍選手にとってチーム作りの最初の段階に加われないというのは大きな不安要素だ。
 
 しかし、彼は3月15日のルヴァンカップ広島戦(0-0)から復帰すると、3月18日のJ1・4節の大宮戦(1-0)、4月2日の5節・札幌戦(2-0)と左CBでフル出場。チームの連勝に貢献している。この3試合で甲府が喫した失点はゼロ。まだズレは残っているのだが、少なくとも「穴」にはなっていない。

 札幌戦の52分には、CKから甲府初ゴールも挙げた。利き足とは逆の右足ボレーは、肩か頭に近い高さのボールに飛び上がって合わせる“鳥人的”なシュート。格闘ゲームの『ストリートファイター』に登場するキャラクター『ダルシム』を思い出させるような足の伸びだった。

 記者が「空手のハイキックみたいなシュートだった」と話を振ると「カポエイラかな?」と返してきた。カポエイラとはブラジル固有の格闘技。ダンスの要素も取り込んだ独特の足技、アクロバチックな動きが特徴だ。エデル・リマはカポエイラも習ったことがあり、それを活かしたシュートだと振り返る。
 札幌戦でエデル・リマと最終ラインを組んだ新井涼平は「独特なリズムでサッカーをしている」と彼を評する。札幌戦のボレーもそうだが、私たちの感覚だと届くはずのないボールに彼は足が伸びて届く。
 
 また山本が「本気で走れば足は相当速い」と評する俊足と、ドリブルやステップに振り切られずついていく動きの粘りもある。187センチ・73キロという細身で単純な強さはあまり期待できないが、相手からボールを絡めとる独特の間合いがある。
 
 エデル・リマのプレーの中で最も“独特”なのはドリブルだ。「CBが自陣からドリブルする」ことは基本的にNGだが、彼は大宮戦でも自陣からの30メートル近いロングドリブルを成功させた。しかもコースを切られているように見える状況から、割り込むような突破を決めてしまう。
 
 まさに“独特”としか形容のしようがない“にゅるにゅる”した身体の使い方で相手をいなし、それでいて上半身はしっかり立って、ボールが足下から離れない。日本サッカーの常識では「閉じられている」はずのスペースを、彼は悠然と使ってしまう。
 
 甲府は札幌に2-0で勝利したが、試合の吉田監督は「シンプルにプレーするべきところをひとりで頑張るというか、少しいいことをしようとする浮つきは排除していかないといけない」と課題を口にしていた。実際に新井、新里亮といったCBの“持ち過ぎ”からピンチを招くシーンが前半に何度かあった。