連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第1週「お父ちゃんが帰ってくる!」第1回 4月3日(月)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:黒崎博 


1話はこんな話


1964年、東京オリンピックを間近に控えた頃。茨城県の奥茨城村で生まれ育った高校生・谷田部みね子(有村架純)は、東京に出稼ぎに行った父・実(沢村一樹)が稲刈りに帰ってくることを待ちわびていた。

増田明美でオリンピック感


まず、「おはようございます、増田明美です」とナレーションが挨拶。

スポーツジャーナリストやマラソンや駅伝の解説者として活躍する増田を起用したのは、1984年にロサンゼルスオリンピックに出場経験があるからだろうか。
気分は、2020年の東京オリンピック。朝ドラの本放送前のニュースでは、オリンピックに向けて両国周辺の工事をはじめると報じられていた。55年前の東京と今の東京がリンクしている感じがする。
さらに、2019年の宮藤官九郎脚本でオリンピックを描くと伝えられていた大河ドラマのタイトルと主演俳優(中村勘九郎と阿部サダヲ!)も発表されて、NHKはオリンピックキャンペーン状態である。

テレビドラマガイド「ひよっこ」のインタビューによると、「ふだんマラソン解説で選手ひとりひとりのエピソードをお話しているような“小ネタ披露風”のナレーション」を期待されているそうだ。
増田明美は、この日、NHK のお昼の新番組「ごごナマ」に出演、最初の挨拶は、「脚本家の岡田惠和さんのやさしさ、配慮だろう」というようなことを語っていた。

そう、脚本家・岡田惠和は、たくさんの登場人物を丁寧に描ける作家。その点は安心している。きっと増田は、岡田の描く登場人物やエピソードについて小ネタ披露風なナレーションをしてくれるのだろう。

「農家は朝ごはん、しっかり、たくさん食べます」
「朝ごはん“を”しっかり」ではなく「朝ごはん、しっかり」という口語感も心地よかった。

手堅いはじまり


岡田惠和は、2001年「ちゅらさん(沖縄が舞台、主演は国仲涼子)、2011年「おひさま」(長野が舞台、主演は井上真央)と朝ドラをすでに2度書いている。
だからなのか、1話のなかに漏れなく良さげな要素が盛り込まれていた。

田舎の気持ち良い風景、お祖父ちゃん(古谷一行)、お母さん(木村佳乃)、妹、弟・・・仲良さそうな家族、電気釜、卵焼き、麦飯、きゅうりの塩もみ、茄子の鴫焼、みょうがの味噌漬け、自転車、お父さんへの手紙、女優を夢見る親友、高校三年生〜の歌、新幹線の話、針と糸、ちょっとした失敗・・・等々

東京のお父ちゃん


「東京の空はこっちほど広くねえと聞きました」
高村光太郎みたいな手紙を、東京のお父ちゃんにしたためるみね子。
手紙形式は倉本聰リスペクトか。ただ、「前略おふくろ様」がはじまったのは70年代。
みね子はお父ちゃんが大好きなようで、
東京で買ってきてくれた靴を大事にしているし、「高校にいかせて頂いて」と感謝している。いい子や。

お父ちゃんは霞が関の建築現場で働いている。ちゃんと工事現場の向こうに国会議事堂があった。

岡田惠和のインタビューで、昭和の光と影を書きたいと言っていた。影を描いた作品の例えとして「オリンピックの身代金」を挙げている。もちろんそこまで朝ドラでは書かないだろうけれど、小説を原作にドラマ化されたそれは、オリンピックを契機に東京が開発されて地方から働きに来た人々が、今でいうブラック企業以上の重労働をさせられたことから生まれた悲しい事件を描いている。まさか、お父ちゃんが・・・と想像したが、いやいや、こんなに牧歌的な第1話だし、主人公は東京の食堂で働くようになるらしいし、有村架純のぷくぷくした笑顔に半年癒やされたい!

1話で最も注目したところ


タイトルバック
東京の街が出来上がっていくとこをミニチュアで再現。そのミニチュアが凄い。建物を食パンや瓶や炊飯器や時計や基板、タイプライターなどで表現するなんて、目からうろこ。田んぼは畳、草原はニットの服だった。まさに世界がこれまでの価値観を超えて様相を変えていくようだ。歌は桑田佳祐の「若い広場」。
(木俣冬)