自動車産業界で存在感を増すイスラエル「モービルアイ」のデモブース(資料写真)


 3月中旬、驚きの事業連携が相次いで発表された。

 まず3月14日に、インテルがイスラエルの画像認識技術開発ベンチャー「モービルアイ」を買収すると発表した。買収額は153億ドル(約1兆7000億円)に及ぶ。

 そして17日には、ベルリンで開催されていたIT関連イベントの会場で、米エヌビディア(NVIDIA)が大手自動車部品メーカー、独ボッシュとの提携を発表した。

 2つの発表の数日後にインテルとエヌビディアの関係者に話を聞くと、互いにライバル意識をはっきりと表していた。

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インテルは画像認識ビックデータを手中に

 それにしても、なぜこのタイミングでこうした大型買収と大型提携が行われたのか?

 まず、インテルとモービルアイには話の前段がある。2016年6月、この2社に独BMWを加えた3社で事業連携を発表している。その延長上で今回の買収に至ったと考えるのが自然だ。

 モービルアイは、元々はイスラエルの画像認識の研究者が資金集めをして立ち上げた会社である。最初の開発資金は日本企業が出している。

 その資金で作成されたテスト機の実物を、筆者はイスラエル・エルサレムで見た。それ、大人ひとりでは持ち上げるのが難しいような大型のユニットだった。同社CEOは、「インテルの量産プロセッサーを購入して組み合わせたため、このサイズになった」と説明していた。

 モービルアイが量産に入ったのは2000年代後半に入ってからだ。供給先は、米ゼネラルモーターズ(GM)やスウェーデンのボルボから始まり、BMWやアウディなどへ広がっていった。日系OEMとしては現在、日産とマツダが使用している。

 モービルアイは事実上「ティア2」(2次請け)である。そのため日産は米TWR、マツダはカナダのマグナインターナショナルといった「ティア1」(1次請け)を通じてモービルアイ製品を購入している。

 モービルアイの強みは、ティア1またはOEM先の自動車メーカーから供給される画像のビックデータを収集・解析できる立場にあることだ。つまりインテルは、大手自動車に搭載された単眼カメラの画像認識ビックデータを一手に収めることになる。

エヌビディアとボッシュ、主導権はどっち?

 一方、エヌビディアとボッシュの場合は「事業提携」という形であり、どちらが今後の事業の主導権を握るのかが分かりにくい。

 ボッシュは言わずと知れた世界有数の自動車部品メーカーであり、業界では独コンチネンタルとトップ2の座を占める。だが同社はこの2年ほどの間、単なる部品メーカーから、クラウドを活用したサービス事業者への転換をアピールしてきた。

 例えばボッシュが推進しているサービスに「コネクテッド・ホライズン」がある。地図情報の大手、オランダのトムトム社が供給する地図データをベースに、クラウド経由のさまざまな情報をリアルタイムでドライバーに提供するナビゲーションシステムだ。

ボッシュが進めるコネクテッドカーシステム「コネクテッド・ホライズン」


 ボッシュとしては、ここに、エヌビディアが推進している、自動運転に関する機械学習機能などを連携させる狙いがある。

 一方、半導体メーカーのエヌビディア側は、グラフィックスに特化したGPU技術を量産車に実装する手段として、ボッシュと連携する。

エヌビディアの画像認識対応の車載コンピューター「DRIVE PX2」


 もちろんボッシュ社内にも半導体の基礎研究チームや、画像認識による自動運転研究スタッフが存在する。そうしたエンジニアリング領域で、両社の技術者による踏み込んだ議論が進められることになる。

日本のルネサスはどうする?

 こうして、半導体産業が画像認識の領域で新たなるステージへとステップアップした。

 これまで車載半導体は「ADAS(先進運転支援システム)半導体」と呼ばれ、「運転を高度に支援するシステム向けの半導体」という括りだった。だが、これからは「車両のビックデータの解析」という領域も含めた、より広範な技術競争となる。

 そうしたなか、日本の半導体メーカー、ルネサス エレクトロニクスはどのように勝負していけばいいのだろうか。

 何よりも求められるのは「攻めの姿勢」である。旧来型のティア2的な発想を大きく飛び越える次世代の事業戦略がなければ、画像認識のみならず車載半導体ビジネスで生き残ることは難しいだろう。

 インテルのモービルアイ買収、そしてエヌビディアとボッシュの事業連携は、車載半導体における戦国時代の幕開けを意味する。

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筆者:桃田 健史