「Thinkstock」より

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 アディーレ法律事務所が「過払い金返還請求の着手金を今から1カ月間、無料にする」などとする宣伝を約5年間続けていた問題で、東京弁護士会などの綱紀委員会が、アディーレ(法人)と代表の石丸幸人弁護士らを「懲戒審査相当」とする議決をしていたことが明らかになった。4月3日付産経新聞が報じた。

 アディーレといえば積極的な宣伝を行っている大手法律事務所として知られているが、別の法律事務所所属の弁護士は語る。

「『法律事務所が行政処分を受けた』という点において大きな問題であると考えざるを得ません。昨年2月にアディーレは『今だけ無料』というCMを繰り返したことを理由に、景品表示法違反として『措置命令』という行政処分が下されているわけですが、いわば、法律事務所が『消費者被害』を作出してしまった点が問題となるわけです。

 確かに、実際に『今だけ無料』がずっと続くのであれば、アディーレに相談する人にとってはなんの問題もないじゃないか、という考えもあります。しかしながら、たとえアディーレのサービスが『いつでも無料』であったとしても、一般の消費者にとっては実は潜在的な“被害”が発生しているのです。

 まず、アディーレが提供する『債務整理』『過払い金の返還請求訴訟』などのサービスですが、同じようなサービスを提供している法律事務所は多数あります。ここで、本来であれば同じサービスが提供される場合、一般の消費者は弁護士費用のほかにも、例えば担当する弁護士の評判や力量・経験や、場合によっては法律事務所の立地などを考えて法律相談に赴きます。

 ここで、もし『いつでも無料』であるにもかかわらず『今だけ無料』を大々的に宣伝されてしまうと、一般の消費者は弁護士の評判や力量などの他の弁護士を選ぶ要素を考えずに『今だけ無料なら、せっかくだからアディーレに相談しよう』と判断してしまいます。このように、一般の消費者が『アディーレ以外の弁護士に相談する』という他の選択肢があったにもかかわらず、『今だけ無料』に“釣られ”てしまったことが問題であることが理解できるかと思います。

 実際、景品表示法は第1条において『一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定める』と規定し、一般の消費者がさまざまな商品やサービスのなかから自由に選択する機会を奪われないように規制する、としているわけです。
 
 本来、弁護士・法律事務所は消費者被害を防ぐ立場にあるにもかかわらず、一般の消費者に対し誤解を招くようなCMを出し、『消費者被害』を作出してしまったことは、大きな問題と考えざるを得ません」

●東京弁護士会の覚悟

 また、今回東京弁護士会が「懲戒審査相当」と議決した背景について、別の弁護士が語る。

「まず、東京弁護士会綱紀委員会は、相応の“覚悟”をもって今回の決議を行ったものと考えられます。アディーレは、100人以上の弁護士を擁する法律事務所です。仮に『法律事務所』として『業務停止』という処分が下されれば、数百人規模の相談者や顧客に影響が及ぶでしょう。

 業務停止の期間中は、すべての法律委任契約を解除し、相談者や顧客に対するサービスを終了させなければなりません。すなわち、これらの数百人規模の方々が、突然に債務整理や過払い金の返還請求訴訟などのサービスを途中で受けられなくなるわけですから、引き継いでくれる弁護士を探さなければなりません。おそらく、相当の混乱が生じることでしょう。世間の弁護士全体に対するイメージも低下するでしょう。

 このような、“二次的・副次的な被害”が想定されるにもかかわらず、仮に東京弁護士会懲戒委員会が業務停止を下すのであれば、相応の“覚悟”があってのことでしょう。報道によれば、『懲戒委の審査で実際に懲戒処分が下るのは6割前後とされる』とのことですが、もちろん、懲戒処分は『業務停止』のほかにも、『戒告』というやや軽い処分もあります」

 現在、インターネット上では「出る杭は打たれる」「業務停止が相当」といったコメントが溢れているが、まずは憶測を立てずに東京弁護士会懲戒委員会の判断を待つことが大切といえよう。
(文=編集部)