昨季の第1ステージ10節・川崎戦。全員が勇気を持ってパスを引き出し、相手陣でも圧力を掛けてボールを奪った。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第5回。テーマは「チームスタイル」だ。4位で迎えた5節・川崎戦は、0-2で敗れてしまった。そんななかで発した「クオリティの差があった」の真意とは?  現行の戦い方に辿り着いた経緯も含めて語ってもらった。
 
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[J1リーグ5節]仙台 0-2 川崎/4月1日(土)/ユアスタ
 
 現在の仙台のサッカーを“ポゼッション”と括ってはいない。内々でそういった言い方をしたこともなく、優先順位を間違えないように選手たちには「パスを100本つないでも得点にはならない」と伝えている。すべては得点をするため、勝つための手段だ。
 
 ただ、今回の試合では川崎とのクオリティの差を感じての敗戦となってしまった。小さなミスが多く、リズムを作れていなかった。
 
 昨季の第1ステージ10節の川崎戦(1-1)の時には、初めて「川崎よりもボールを握るぞ」と発破をかけた。自分たちの新スタイルへの挑戦を、攻撃力に秀でた相手に思い切りぶつけようと。
 
 その試合では全員が勇気を持ってパスを引き出し、相手陣内でも圧力を掛けてボールを奪った。最後に追い付かれてしまったのは残念だったが、好ゲームと言っていいだろう。あれから1年が経ち、「相手よりもボールを握り、相手よりも手堅く守るぞ」と試合前に話して送り出した。
 
 ただ、蓋を開けてみると、局面でマークを剥がす能力は川崎が1枚上手だったという実感が残ってしまった。「チーム力、クオリティに差があった」というのが、正直な感想だ。もちろん太刀打ちできないのかといえば、そんなことはないと思っている。
 
 ひと口に“ポゼッション”と言っても、仙台と川崎では違うやり方を採用しており、最初に言ったようにボール保持自体が目的ではない。自分たちのスタイルを信じて、臆病にならず、勇気を持ってトライすることで、まだまだ高められるものがあるとポジティブに捉えている。
 
 例えば、ポジショニングが曖昧になってしまったり、パスを引き出す際に弱気になってしまえば、パス回しに歪さが出てしまい、相手の守備網の餌食になる。誰かがパスを入れること、引き出すことを怖れれば、スムーズさに欠けてしまう。コンマ何秒のズレが攻撃の迫力を減少させる。
 試合後に映像を再確認して思ったのは、「リスクを冒したポジショニングを取るべき必要が絶対にある」ということ。もちろん、リスクマネジメントを考えれば、「優位性を保つために危険な位置に立つべきなのか」という発想は生まれる。
 
 リスクを取るうえで重要になってくるのが、全員が「この状況では絶対にボールを奪われない」という確固たる自信と技術を備えること。川崎はボールを止めてからの判断が早く、正確だ。トラップで良い位置に置くから、次の行動も素早い。
 
 相手のプレッシャー下で、いかに正確にボールを扱えるか。イージーミスが許されない状況下で、どうすれば普段通りのプレーをできるか。そして、それらをどのようにしてチームプレーに反映させるか。その部分の整理整頓や戦術面の落とし込みは、私たち監督の仕事だと思っている。
 
 必要なのは継続だ。その重要性をより強く感じているのは、自分が仙台に長く在籍しており(2004年に現役を引退後、下部組織のヘッドコーチを経て、08年からトップチームのコーチに就任)、戦術という意味でも色々なものを見てきたからだと思っている。
 
 2012年は堅守速攻でリーグ2位となってACL出場権を得た。あれはひとつの大きな成果。そのなかで2013年、(手倉森)誠さんは「もっと攻撃的に」という挑戦を試みた。2014年に招聘したアーニー(グラハム・アーノルド)もポゼッションを志向した指揮官だった。