自覚がない貧血、「かくれ貧血」をご存じですか?

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執筆:山村 真子(看護師・西東京糖尿病療養指導士)

貧血というと、どういったイメージをもたれるでしょうか?

若い女性がふらふらと倒れこんでしまうもの、などといった、「症状が出るもの」というイメージがあるかもしれません。

しかし今、自覚症状がない「かくれ貧血」の方が増えているのだそう。

かくれ貧血とは、いったいどういったものなのでしょうか?

今回はこのかくれ貧血について詳しく解説していきましょう。

貧血とは「血液がうすい状態」

そもそも、貧血とはどういった症状なのでしょうか?

貧血は血液成分の中でも「赤血球」という成分が正常値よりも低い状態をさしています。

赤血球は全身の細胞に酸素を送り、二酸化炭素を受け取るという役割を果たしています。

そのため、貧血となると全身が酸欠状態となり、頭痛や疲れやすいなど、様々な症状を引き起こしてしまうのです。

女性は「鉄欠乏性貧血」になりやすい

厚生労働省の調査によると、平成26年現在、貧血の患者数は14万2千人となっています。

そして、女性は男性に比べて月経や妊娠・出産があるため、貧血になりやすいとされています。

貧血には大きくわけて「鉄欠乏性貧血」「悪性貧血」「溶結性貧血」「再生不良性貧血」がありますが、貧血と診断される方の多くは「鉄欠乏性貧血」という貧血です。

この鉄欠乏性貧血とは、赤血球の生成に欠かせない鉄分が不足してしまうことが原因となっています。

鉄欠乏性貧血の場合には、鉄分を補うために食事で鉄分の多く含まれた食品を取ることや、鉄剤を内服することで改善が期待できます。

かくれ貧血は、「潜在性鉄欠乏性貧血」と呼ばれる

貧血と診断されるには、血液データにてヘモグロビンという数値が11g/dl以下の場合に診断されます。

しかし、数値上ではヘモグロビンがこの数値を保っていても、貧血時に出る頭痛や動悸、爪の変形などが起こっている場合、「潜在性鉄欠乏性貧血」、すなわちかくれ貧血である可能性があります。

この潜在性鉄欠乏性貧血とは、通常の血液検査では検査されることが少ない、さらに細かい検査によってわかります。

具体的には、「血清鉄」「血清フェリチン値」などがあげられます。

貧血のような症状が続いているにも関わらず、ヘモグロビンの値が正常な場合には、この潜在性鉄欠乏性貧血を疑い、詳しく検査してもらうことをお勧めします。

全く症状がない場合は、体が貧血に慣れてしまっている可能性も

一方、貧血のような症状が全くないにも関わらず、貧血と診断されてしまうこともあります。

これは慢性的に貧血の状態が続いているため、体がその状態になれてしまい、症状として出現していないということが考えられます。

貧血には血液疾患の一つである「再生不良性貧血」もあります。

健康診断で貧血という診断が出たら放置せず、きちんと精密検査を行って貧血の種類を明確にし、それに適した治療を受けられることをお勧めします。

最後に

貧血は比較的よく見られる症状ですが、進行してしまうと不妊の原因となったり、様々な症状を引き起こす原因となりえる怖い病気です。

自分が貧血かどうか、また貧血だった場合どの貧血の種類に当てはまるのかをしっかりと把握することが、とても大切です。

【参考】
厚生労働省『平成26年患者調査(疾病分類編)』(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/)

<執筆者プロフィール>
山村 真子(やまむら・まこ)
看護師・西東京糖尿病療養指導士、一児&犬二匹の母親兼主婦。現在は医療系ライターとして執筆活動中