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東北大学は3月30日、3次元トポロジカル絶縁体Bi2-xSbxTe3-ySeyの大型・高品質薄膜の簡便な作製法と転写法を確立したと発表した。

同成果は、東北大学大学院理学研究科 田邉洋一助教、ダウノックハン博士、同大学原子分子材料科学高等研究機構 谷垣勝己教授らの研究グループによるもので、3月24日付けの米国科学誌「Nano Letters」オンライン版に掲載された。

3次元トポロジカル絶縁体は、物質内部は絶縁体で電流を通さず、表面には金属状態が存在し、電流を流すことのできる新しい絶縁体。実用的な素子として使用するためには、高品質な薄膜が簡単に作製可能で、かつシリコンなど現在実用化されているさまざまな基板上に簡単に転写できることが望まれる。

これまでの研究で、分子線エピタキシー法を用いることで、大型で高品質な薄膜の作製が可能であることが報告されていたが、分子線エピタキシー法では 10-8Pa程度の超高真空下で薄膜を作製するため、製膜速度が遅く量産向きではないこと、製膜設備が非常に高価であることが課題となっていた。さらに、薄膜の転写には、保護膜の作製など複雑なプロセスが必要であること、また、転写後に試料の品質が低下することが問題となっている。

今回、同研究グループでは、市販の管状型電気炉に低真空・高排気で工業的に広く使用されているロータリーポンプを組み合わせた簡単な構成を用いることで、バルク絶縁性の高い3次元トポロジカル絶縁体 Bi2-xSbxTe3-ySey薄膜の合成を実施。原料を片側が閉じたガラス管に入れ、ガラス管の出口に薄膜作製用のマイカ基板を設置し、10-1Pa程度の真空下において、電気炉を用いることで原料側を高温に保つような温度の勾配を作り出すことによって、基板上に効率よく薄膜を作製することに成功した。

さらに、薄膜を水に晒すだけで、育成用の基板から容易に剥離でき、さまざまな基板上に転写可能であること、転写後の薄膜の品質が、Bi2-xSbxTe3-ySeyの単結晶並みに高品質であることも明らかになっている。

今回の成果により、トポロジカル絶縁体を用いた電子デバイスにおいて鍵となる高品質薄膜の作製と制御が可能となったことから、同研究グループは今後、実用的な素子の試作を通して、散乱の少ない電流/スピン流を利用したメモリデバイスなどさまざまな省エネ素子への展開が期待されると説明している。

(周藤瞳美)