CRAZYBOY『NEOTOKYO EP』(配信限定)

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 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEのELLYが、CRAZYBOY名義による『NEOTOKYO EP』(配信限定アルバム)を2月24日にリリースした。ELLYはヒップホップアーティスト・CRAZYBOYとして、2010年に楽曲制作をスタート。CRAZYBOYは、これまでに三代目 J Soul Brothers「Feel So Alive」、EXILE TRIBE「HIGHER GROUND feat. Dimitri Vegas & Like」などの楽曲でラップを披露。さらに、大沢伸一、ANARCHY、Mighty Crownらの作品へゲスト参加するなど、着実に経験とスキルを身につけ、本作のリリースを迎えた。今回リアルサウンドでは、ラッパー/HIPHOP MCなどで活躍するDARTHREIDER a.k.a. ReiWordupに本作を聴いてもらい、現役ラッパーの視点からCRAZYBOYの魅力や作品の聴きどころについて語ってもらった。(編集部)

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■LDH流ヒップホップへの期待

 CRAZYBOYの配信限定アルバム『NEOTOKYO EP』には、かなり注目していました。というのも、僕は1月25日にAbemaTVで放送された『EXILE TRIBEの新鋭“THE RAMPAGE”デビュー記念特別番組!』にて、よゐこの濱口優さんとともにTHE RAMPAGEの初シングル『Lightning』のライブレポーターを務めさせていただいて、LDHのヒップホップ作品のクオリティの高さに驚いていたからです。THE RAMPAGEのメンバーは、ヒップホップの魅力をいかに伝えるかを真剣に考えていて、そのストレートさ、ピュアさには打たれました。そんなTHE RAMPAGEのリーダーであるLIKIYAの兄が、CRAZYBOYこと三代目 J Soul BrothersのELLYだということで、自然と期待が高まっていたんです。

 実際に『NEOTOKYO EP』を聴いてみたら、期待を裏切らない充実した内容で、新たなラッパーによる“強力なヒップホップ作品”が現れたと感じました。三代目 J Soul Brothersでしっかりと音楽的、パフォーマンス的な基礎体力を身に付けたELLYが、ちゃんと“今のラッパーの感覚”で作っている。ルーズさだったり、アンダーグラウンド感覚がヒップホップの魅力だという人がいるけれど、それはあくまで一側面の魅力であって、ヒップホップの全てではありません。むしろ、彼のようにしっかりとトレーニングを積んでパフォーマンスするラッパーは、これまで日本のヒップホップシーンにはあまりいなかったタイプなので、そこにこそ可能性を感じています。

 実際、USの現行ヒップホップと並行しているビート感はもとより、発声やリズムの当て方、ピックアップする言葉のセンス、どこを切ってもしっかりと作り込まれていて、とても完成度が高いと思いました。一方で、パーティーチューンを基調としていることもあり、ヒップホップに明るくなくても楽しめる間口の広さ、聴きやすさもあります。この作り込みと聴きやすさの両立は、国民的人気グループのメンバーとして、数多くのお客さんにパフォーマンスを届けてきた彼だからこそできるスタイルです。

 加えて、ダンスをしながらラップするスタイルは、とてもフレッシュです。ダンスのスキルがラップのフロウにも活かされていて、“踊れるラップ”になっているのが面白い。ラップそのものが機能性を持っていて、パフォーマンスとも密接に関わっているのは、CRAZYBOYというラッパーの大きな武器といえるでしょう。

■『NEOTOKYO EP』各楽曲のポイントを解説

 1曲ごとの魅力も紐解いていきます。まずは「NEO TOKYO」。激動の時期にある今の東京を、CRAZYBOYならではの視点で切り取った一曲で、とてもヒップホップらしいテーマです。大友克洋先生による漫画『AKIRA』のディストピアな世界観は2019年の“ネオ東京”が舞台でしたが、実際に今の東京は2020年の五輪を控えながら、数々の問題を抱えていて、希望と不安が織り交ざったカオスの様相を示しています。そうした状況をどう切り取るかは、多くのクリエイターにとって大きな課題です。切り取り方によっては非常に暗くもなるし、逆に能天気にもなりうる。それをCRAZYBOYは、ピリッとした緊張感がありながらも、カオスだからこそ充満するエネルギーを湛えつつ、ポジティブに表現しています。今、自分が住んでいる街、パフォーマンスをしている場所は、こういう景色で、こんな音が鳴っているんだって、しっかりと自分の立ち位置をレペゼンしていて、王道的なヒップホップ表現になっています。

 2曲目「Tropical Paradise」は、個人的に一番好きな曲でした。一口に“Tropical”といっても色々なイメージがあると思いますが、CRAZYBOYはファーストクラスに乗っちゃうし、女の子へのアプローチも「Ride on you」なんて言っちゃって、とてもストレートです(笑)。「CRAZYBOY」という名前の切れ味に負けないくらい、攻めた遊びをしていることが伝わってきて、リスナーが憧れる要素がたくさん散りばめられています。これを若手ラッパーがやると背伸びしている感じが出てしまいがちですが、彼はスターなのでリリックに説得力があります。こういうことを言えるラッパーは一握りだし、もし言えるのなら日本的な謙虚さで遠慮するのではなく、派手にパフォーマンスした方がヒップホップ・マナーとしても正解だと思います。シーンへのカンフル剤としても、こういう曲はあった方が良いですよね。

 3曲目「CLAPTIME feat. ANARCHY, VERBAL, SWAY, DABO」は、日本語ラップシーンへの目配せが効いたポッセカット(仲間がみんなで参加している曲)で、ヒップホップの醍醐味が感じられる一曲。ひとつのビートの上で繰り広げられるマイクリレーは、個々のラッパーの勝負でもあり、聞き応えがあります。しかも、「CLAPTIME」にかけて、DABOのクラシック「拍手喝采」で締めるという粋な計らいまで。一線で活躍するラッパーをズラリと並べて、こういう曲をやってくれるのは頼もしい限りです。三代目JSBのファンの方も、この曲をきっかけに色々な日本語ラップを掘ってくれたら、すごく嬉しいですね。

 最後の「OZ Monster feat. OMI」は、三代目 J Soul Brothersの盟友・登坂広臣さんことOMIとのフィーチャリング曲で、彼のスタンスを知る重要な一曲でもあります。ヒップホップでOZ(OG)というと、オリジナル・ギャングスター的な意味があって、転じてシーンにおける先輩や仲間をリスペクトする意味合いがあります。なにかのグループに所属しながらラッパーとして活躍するアーティストは、時に「本当はこれがやりたかったんだ」みたいなスタンスを取ったりしますが、彼の場合は三代目JSBとCRAZYBOYの活動を、地続きで捉えているのではないでしょうか。言い換えると、三代目JSBの仲間を心底信頼しながら、ラッパーとしても活動している。登坂さんをフィーチャリング・ゲストに迎えたのは、きっとそういう意思を表明しているのだと思います。

■LDHとヒップホップビジネス

 総合エンタテインメント・プロジェクト『HiGH&LOW』に代表されるように、LDHのエンタテインメントは楽曲にせよ、映画やドラマにせよ、ライブにせよ、圧倒的な“エネルギー”を感じさせます。このエネルギーは誰もが認めざるを得ないところで、CRAZYBOYの作品にもそれは感じます。

 日本のエンタテインメントというと、丁寧さや繊細さを評価されがちですが、彼らはまた違うアプローチでインパクトを与えようとしていて、そこがすごく面白いです。HIROさんはもともと、90年代初頭のヒップホップシーンの中で活躍していたダンサーで、当時のヒップホップが持っていたエネルギーをよくご存知なのだと思います。そのエネルギーを現代的に表現しているのがLDHのエンタテインメントの一側面なのだとすると、とても興味深いですし、長らく続いてきた芸能の方向性とはまた違うやり方で、自分たちがカッコイイと思う表現を次々と実現していく姿勢に、勇気を与えられる人はすごく多いはずです。

 アメリカでは、ヒップホップはマイノリティが一発逆転するためのツールとしても認識されていて、それこそ世界中で「ヒップホップでメイクマネー」は行われています。ただ、日本でヒップホップを表現するには工夫が必要で、そのままアメリカのやり方を真似しても上手くいくわけではありません。それに対するひとつの回答として、LDHは今のやり方を提示しています。

 たとえば、THE RAMPAGEのメンバーはみんな、とても礼儀正しくて真面目です。日本人としての美徳を重んじている姿勢で、そこを踏まえた上でのエンタテインメントだからこそ、LDHはこれだけ多くの人に支持されたのだと感じました。もちろん、すべてのヒップホップ・アーティストがそうあるべきとは言いませんが、少なくとも彼らのやり方はある意味で正攻法です。それに、若者をきちんと教育する機能を備えているからこそ、たどり着ける表現もあります。小さい頃からダンスを練習して、ヒップホップのビート感を当たり前に身につけた子たちが、これからはたくさん出てくるでしょうし、そのパフォーマンスのレベルは非常に高いものになるはず。彼らに背中を見せるという意味でも、CRAZYBOYの活躍には期待せずにはいられません。(DARTHREIDER a.k.a. ReiWordup)