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東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野の内田信一教授、高橋大栄助教の研究グループは、血圧制御因子であるWNK4が、脂肪組織において脂肪細胞の分化を制御することを発表した。

この研究成果は、3月8日に国際科学誌「EBioMedicine」オンライン版で公開された。

メタボリックシンドロームは高血圧、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、内臓脂肪型肥満などの心血管病の危険因子が集積した病態。近年その重要性が指摘され、病態解明が求められている。

遺伝性高血圧性疾患偽性低アルドステロン症 II型の原因遺伝子の一つであるwith-no-lysine kinase 4(WNK4)は、塩分感受性高血圧の重要な制御因子として知られるもので、腎臓の遠位尿細管においてOSR1/SPAKキナーゼを介して Na-Cl共輸送体をリン酸化し、塩分の再吸収を制御している。だが、全身に分布するWNKキナーゼが、腎臓以外の臓器でどのような働きをするかはほとんどわかっていなかった。

今回、マウス脂肪組織の中でも特に成熟脂肪細胞で、WNK4が強く発現していることが判明した。脂肪組織から未分化な脂肪由来幹細胞を含む間質血管細胞を単離し、脂肪細胞への分化誘導刺激を加えると、WNK4の発現が早期から増大した。また、同様の事象が脂肪分化のモデル細胞である3T3-L1細胞においてもみられ、細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγやC/EBPαに先行して起こるWNK4のノックダウンがPPARγやC/EBPαの発現を抑制し、脂肪細胞への分化と脂肪滴の蓄積を抑制することを明らかになった。

これらはヒト由来の間葉系胚細胞を用いた実験でも同様の結果を示し、ヒトにおいても同様の制御機構が存在すると考えられた。また、WNK4による脂肪細胞分化を制御するメカニズムとして、WNK4が細胞周期を脂肪細胞分化の早期から制御し、その結果としてPPARγの転写を阻害している可能性を示した。さらに、WNK4ノックアウトマウスを解析した結果、WNK4ノックアウトマウスは高脂肪食で誘発される肥満になりにくく、脂肪細胞サイズは野生型マウスに比して小さく、インスリン感受性も良いことが分かった。

これらの結果から、従来は主に腎臓における塩分感受性高血圧の制御因子として知られていたWNK4が、脂肪組織では脂肪細胞の分化を制御し、高脂肪食による肥満の病態にも寄与することが明らかになった。

これは高血圧と肥満の病態をつなぐ新しい知見で、メタボリックシンドロームの病態解明に役立つと考えられる。また、同研究の結果から、同グループはメタボリックシンドロームなど高血圧と肥満を合併した病態の新規治療戦略として、WNK4の抑制が有用であると期待されるとしている。