Aurfy Japanの隰欣 代表取締役社長

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 中国人訪日客の“爆買い”に沸いた2015年から2年。観光庁が公表している訪日外国人消費動向調査によると、中国人旅行者1人当たりのショッピングにかける費用は15年1月〜3月期に記録した17万9902円をピークに減少。16年10月〜12月期は12万1041円にまで下降した。店舗では、恩恵を受けるために敷いていたインバウンドシフトを解消する動きも目立つ。

 しかし、中国人向けのビジネスは来日に伴うショッピングに限らない。今、にわかに熱を帯びているのは、越境ECだ。現地を訪問することなく商品を購入することができるので、潜在的顧客は従来のインバウンドよりはるかに上。EC事業者は中国本土から利用できるオンライン決済サービスの導入を急いでいる。

 中国のオンライン決済サービスは、中国銀聯(UnionPay)、支付宝(Alipay)、微信支付(WeChat Pay)が国内シェアの約8割を占める。裏を返せば、越境ECのためにはこれらの決済サービスに対応することが不可欠だ。そんななか、注目を集めているのが、決済代行サービス「nihaopay(ニーハオペイ)」だ。運営するAurfy日本法人の隰欣(シュウ・キン)社長に、日本におけるオンライン決済サービスの現状と今後の取り組みを聞いた。

●中国で広く普及する電子マネー、財布を持たずに外出も普通



 まず、オンライン決済サービスの背景として、中国の電子マネーの状況を知っておきたい。日本でも古くは「おサイフケータイ」、最近なら「Apple Pay」などの電子マネーが登場しているが、一般に広く普及しているとは言い難い。

 一方、中国は財布を持たずスマートフォンだけ携帯して外に出歩くことも珍しくなく、通常の買い物から家賃まで、あらゆる支払いを電子マネーで済ませるという。

 隰社長によると「中国人には新しいモノ好きの気質があります。また、信用という点でも電子マネーが重宝されています。現金だと偽札などのリスクがありますが、電子マネーであれば心配ありません」とのこと。インターネットの発展、とりわけアジア最大のECサイト「淘宝網(タオバオワン)」の成長が普及のトリガーになったそうだ。

 日本でもオフラインであれば、インバウンド需要に合わせて、中国銀聯や支付宝を導入した店舗は多いはずだ。“爆買い”の初期は店舗入口で、これらの決済サービスに対応することを謳っていれば、自然と顧客を取り込むことができた。しかし、オフライン決済と違い、オンライン決済による効果は目に見えにくい。実際、導入は進んでいるのだろうか。

 「中国でオンラインでショッピングをする人口は6億人以上です。16年の越境ECによる売上げは、日中間で1兆円を超えています」(隰社長)。オフラインであれだけ効果があったのだからオンラインならなおさらとの期待は高く、日本のEC事業者もそれほど導入に抵抗感はないそうだ。訪日観光客が都市部だけでなく地方に波及していることもあり、Aurfy Japanでは地方自治体の特産品を販売するECサイトとの連携も進めている。

●3大決済対応は日本で唯一、「nihaopay」が選ばれる理由



 Aurfyの日本法人が立ち上がったのは、14年5月。初期の顧客にはドン・キホーテやマツモトキヨシなど、インバウンド需要にいち早く対応して商機を掴んだ企業が連なる。

 実は「nihaopay」は国内のライセンスを保持している決済代行サービスで唯一、中国3大決済に対応している。したがって、中国の顧客が「利用する決済サービスに対応していない」という理由で機会損失する心配がない。また、顧客が人民元で決済しても「nihaopay」なら、日本側の運営会社には日本円で支払われるため、為替リスクがないのも安心材料だ。

 導入のハードルの低さも「nihaopay」が選ばれる理由の一つ。すでにオンライン決済の基盤があるECサイトであれば、一つのAPIをカスタマイズするだけで中国銀聯・支付宝・微信支付をまとめて導入することができる。

 「最速で契約成立から1週間でサービスが稼働した例もある」と、隰社長は導入スピードにも自信をみせる。競合だと、それぞれの決済方法ごとにAPIを導入することが多いので、それだけ時間もかかるそうだ。また、導入費やランニングコストはかからず、費用はショッピングごとの手数料だけとのこと。売上げがつかない月には基本的にコストは発生しない。

 隰社長のコメントで膝を打ったのが「2〜3年前の“爆買い”は新店オープンと同じ」という例え話だ。「爆買いは今まであったものが突如として盛り上がったのではありません。新店オープンのように、ゼロだった需要が立ち上がったのです。開店してしばらく経てば、当然、多少は売上げが落ちます。しかし、ある程度で安定してくるはずです」。

 爆買いの勢いが落ちている背景に、商品を自分で持ち帰らなくても越境ECを利用すればよいという購入スタイルの変化があることを考慮するなら、「インバウンドは落ち目」と見切るのは早計だ。店舗を訪れる中国人が爆買いせずとも、越境ECでリピーターになれば、長期的かつ継続的なビジネスチャンスにつながってくる。(BCN・大蔵 大輔)