母娘の関係を良好に保つカギは10歳にあり? ワコール「10歳キラキラ白書 2107年版」ワークショップ参加レポート

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娘をもつ母にとって気になるのが、「生理」と同時に「ブラジャー」をいつごろからすすめるか、ということ。現在12歳(小6)の娘をもつわたしの周囲でも、「どうした?」と話題になる。生理は現象として明らかにわかるので、そのときに処方(?)を教授しやすいが、「ブラ」のほうは、「すすめるタイミングがわからない」という声が多数。自分も通ってきた道のはずなのに、すでに忘却の彼方だし……。そんな悩みの解決のヒントになるようなワークショップに行ってきた。

主催は下着メーカーの老舗、ワコール。2014年に「10歳未来プロジェクト」を発足させた同社では、10歳を「ブラをつけ始める時期」として、とても大事な年頃と位置づけ、さまざまな啓蒙活動を行っている。この3月には、プロジェクトの一環として「10歳キラキラ白書 2107年版」を発行した。

今回のワークショップは、白書の内容紹介と、その結果から見えてくることを、目白大学で発達心理学を教える小野寺敦子教授に解説いただき、さらに「エゴ・レジリエンス」ワークを実施。「エゴ・レジリエンス」とは、簡単に言うと「メゲない心」を育てる力だそうだが、詳しくは本記事を読み進めていただきたい。

というわけで、ワークショップの様子をレポートする。

■10歳女子に起こる3つの変化


「10歳というのは、心の変化、環境の変化、体の変化、と、3つの変化が起こる時期」――と、まず、ワコール広報宣伝部の方から「なぜ10歳か?」についての説明があった。親や友人など他人に対する意識が強くなり、反抗心が芽生える「心の変化」、学童保育が終わり、習い事や塾などに通うようになる「環境の変化」、そして胸が膨らみ始めるなどなど第二次性徴が始まる「体の変化」……思い当たることばかりだ。

さらに
 ・現代の10歳は30年前の10歳に比べ、胸がふくらみ始めるのが早い
 ・ブラの着用率(2014年)は10歳では16%だが11歳になると51%
 ・初経の1年以上前からバストがふくらみ始める
……など、バストにまつわるマメ知識を解説いただいた。

■10歳の約70%が恋愛中!?


続いて「10歳キラキラ白書 2107年版」の内容が紹介された。この調査は、ワコールが運営する小・中学生女子の下着やからだの悩みを解決するサイト「ガールズばでなび」の訪問者に聞いたもの。「カラダ編」「ココロ編」「トモダチ編」「カゾク編」の4ジャンルに分かれて10歳前後の女子の気持ちが赤裸々にまとめられている。

紹介されたデータでびっくりしたのは、約7割が「恋をしている」と回答したこと。まあ、からだに関するサイトを訪問するだけあり、心理的にも進んでいる女子が多いからこその結果なのかもしれないが、どんな「恋」をしているのか興味が湧く。

また、デジタルばやりのいまながら、友だちとのコミュニケーション手段は、10歳では「交換日記」「手紙」がトップ2なのにも驚いた。そのほか「理想の彼氏」「理想の結婚年齢」などなど興味深い内容があるので、娘持ちの親御さんはぜひ一度のぞいてみて欲しい。

『10歳キラキラ白書』2017年版
http://www.wacoal.jp/news/newsrelease/201703/release24904.html

■親子関係が良好だと親友もできやすい?


そして調査結果を受けて、目白大学の小野寺敦子教授が、ご専門の発達心理学の観点から「10歳とはどういう時期か」を考察。この時期はカラダは二次性徴の時期だか個人差が大きいこと、ココロは不安定で、自分の性格を意識し始め、さらに大人を意識して背伸びする時期、と解説してくれた。


「親がウザイと言う時期。そう言わないまでもウザそうな顔をしますよね」という先生のお言葉に大きくうなづく。でも「親がウザイ」と思う一方、「困った時の頼りは親」であることも事実で、そうした「嫌いだけど好き」「好きだけど嫌い」という相反する感情が同時に存在することを、心理学的には「アンビバレントな関係」というのだそう。要はフクザツな心理状況だとうことを理解することが大事なようだ。うーん、たしかに自分もそうだったかも。

小野寺先生は、白書を分析した結果として、「親と娘の接触状況は、10歳をピークに下がっていく。とくに父親との接触は顕著に下がることが学術的にも判明した」と説明。さらに「学年が上がるにつれ、親とのコミュニケーションがとれている子のほうが、自分には親友がいるという意識が強い」という分析結果も披露。

そして、「10歳ごろまでに親子の接触が多かったほうが、友だちもしっかりつくれるようになる」とも。やはり最初の人間関係である親子の関係が、子どものその後の人間関係形成につながっていくのだろう。親子関係の重要性をあらためて思い知り反省……。娘が友だちづくりが苦手なのは、わたしが放置気味だったからかも?と思い当たる節を多いに感じたのであった。

しかし、「この節目の時期に、一緒にカフェでランチをしたりブラを買いに行ったりして、メモリアルな一日を2人で過ごしてみてはいかがでしょうか」との先生の提案に、わずかな希望を見出すわたしであった。

■「エゴレジ力」をチェック!


次に行われたのは、小野寺先生が提唱する「エゴ・レジリエンス」のワークショップ。「エゴ・レジリエンス」とは、ストレスを乗り越えたり、気持ちを切り替えられたりできる、いわば「メゲない力」。心理学的には「ポジティブ心理学」のテーマの1つで、「自己の調整能力」と訳されるそう。

小野寺先生によると、「今はストレスのある時代。その中でどうポジティブに切り替えていけるか。メゲ続けると、『自分が悪い』と思ってしまい、うつになる傾向がある」とのこと。とはいえ、うつとは「ココロの風邪」で、バランスが崩れている状態なので必ず治る、と心強いお言葉も。風邪と一緒で予防が大事で、ココロの風邪を引かないために、気持ちを切り替える力が「エゴレジ力」だそう。

そんな概略が説明されたあと、「エゴ・レジデンス」ワークということで、会場にいる全員にカードが入った袋が配布された。小野寺先生の指示に従いワークがスタート。

まず、1から4までの番号が振られている4枚のカード「1:全くあてはまらない」「2:あまりあてはまらない」「3:ややあてはまる」「4:非常にあてはまる」をテーブルに並べる。次に残りの14枚のカード、たとえば「私はショックをうけることがあっても直ぐに立ち直るほうだ」「私は友人に対して寛大である」などと書かれたカードを、「1」から「4」の中で「そうだな」と思うところに置いていく。小野寺先生は、「思いつきでいいんです」と言うが、カードによっては考え込んでしまう。


そして、「1」から「4」に置かれたカードの枚数を数え、番号に枚数を掛け合わせる。「3」に置かれたカードが5枚なら「15」点、というように計算して合計得点を出す。わたしの場合は「1」がゼロ、「2」が1枚、「3」が6枚、「4」は7枚で、合計48点。「かなり高めエゴレジ」という結果となった。

小野寺先生によると、やっていくうちに得点は高くなる、つまりエゴレジ力がついていくという。力をつけるためにはいろいろな方法があり、ワークを積み重ねる必要があるそう。今回はエゴレジ力のチェックテストのみだったが、「高める方法」を詳しく知りたいと思い、詳細が掲載されているという小野寺先生の著書「『エゴ・レジリエンス』でメゲない自分をつくる本」をさっそく注文してしまった。

■母がキラキラしていれば娘も輝く「“エゴレジ”ママ」への道


ただ、小野寺先生の話を聞いていると、単に「常にポジティブで前向きがいい」という話ではなさそうだ。先生によると、エゴレジ力のイメージは、暑いと思ったら涼しくして、涼しすぎたら温度を上げるサーモスタットのようなものだそう。

「人は困ったときに、我慢してすごく頑張ってしまいます。この状態を自己抑制といいますが、毎日頑張っていたら疲れてしまう。逆に今日はもう疲れたからお酒飲んで寝ちゃおう、などと我慢せずに自己開放することは必ず必要。この自己抑制と自己開放をうまく調整するのがエゴレジ力です」と小野寺先生。なるほど、緩急つけるということか。何事もバランスが大事なのだな。

エゴ・レジリエンスをもう少し具体的に特徴づけると、「ものごとに対する柔軟性」「好奇心」「立ち直り力」の3つになるという。小野寺先生の研究では、こうしたエゴレジ力を親がつけることで、子どもに接する態度にもよい影響があることを実証されているそうである。


さらに、「『私はよく知っているところへ行くにも違う道を通っていくのが好きだ』というカードがあったと思いますが、同じことをするにもいろんなやり方があります。子どもに対しても、1つの方法だけでなく、違うやり方があることを、一緒に考えることが大事」とアドバイスしてくれた。

そして、「『“エゴレジ”ママ』は、子どもの良さを引き出すことが上手。今日帰宅したら、どんなことでもいいからお子さんのいいところを3つくらいホメてあげてください」とも。

最後にまとめとして、「母と娘でストレスに負けずにイキイキ生活するには、お母さんが大事。特に娘は同性であるからこそ、母親をよく見ています。お母さんの愚痴はあまり聞きたくないようです」と、ご自身の体験も踏まえて力説。「お母さん自身がエゴレジ力をつけていくと、娘もエゴレジ力の強いストレスに負けないようになります。ですからまず、お母さんがイキイキ過ごしてくださいね」と、会場の母たちにエールを送ってくれた。

【取材・制作協力】
株式会社ワコール

江頭紀子
調査会社で情報誌作成に携わった後、シンクタンクにて経営・経済に関する情報収集、コーディネートを行いつつ広報誌も作成。現在は経営、人材、ISOなど産業界のトピックを中心に、子育て、食生活、町歩きなどのテーマで執筆活動。世田谷区在住、二女の母。